FILE NO 501 宮崎と周辺の植物
アセビ Pieris japonica (Thunb.) D.Don
馬酔木 ツツジ科
撮影日 2005.1.29
撮影場所 田野町鰐塚山

 山形・宮城県以南に自生する常緑樹で生育環境による違いが大きいが、普通は3〜4mほどの高さになる。
 標準和名はアセビだが、花の様子、開花時期、茎葉等が持つ毒性等の特徴から名付けられた地方名はさまざまある。 安永4年(1775年)長崎に来た ツュンベルクがヨーロッパに紹介した時には、日本名を長崎県西彼杵地方で呼ばれていた「シシクワズ」としていたと本にある。
画像1 この時期周囲の木々はまだ眠っている山頂付近の乾燥した場所、まだ小さな蕾を護っている萼は赤褐色を帯びて、遠くから見ると花が咲いたように見える。蕾は前年の夏頃からできて越冬後開花する。 (日本人が昔から好んだ花で、万葉集には10首も読まれているという。)
 学名の「Pieris」は初めヒメシャクナゲ属(Andoromeda)に入っていたアセビを、1834年になってBavid Donがアセビ属(Pieris)のアセビとして整理した時に、ギリシャ神話に出てくるピエリスの名をとってつけたと説明している本があるが、その結びつけた理由は分らない。
 ただ、早春の山中で遠くから見える花の白さはかなりのもので、蝶のモンシロチョウの属名も「Pieris」というらしいので、もしかすると白い色が関係しているのかも知れない。 アセビに含まれる毒もアンドロメドトキシンといい、ギリシャ神話に関係がありそうで学名の由来は興味深い。
画像2 花は遠くから見ると、葉の上に雪が降り積もったように見える。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原) 
動物の食害によるげ山の防止効果にjシカの忌避種と有益
画像3 画像1の状態が進んで蕾が膨らみ、花冠は萼より大きく伸びだしている。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像4 一部開いた花冠とまだ蕾のままの花があるが、同じ枝でも開花時期の差はかなり大きい。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像5 花柄は長さ約4ミリ、花冠は長さ8ミリほどで約幅6ミリ、花冠の先は直径3ミリほどまで細くなって浅く5裂する。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像6 花は枝先の葉腋から10cmほどの円錐花序を伸ばして下向きにつくが、一つの花軸に10〜20個連なって特徴のある形になる。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)上から撮影
画像7 萼は深く5裂し、普通は淡緑色だが、赤みを帯びるものあり時期等によっても変化する。
  葉や樹の皮そして花にまで、呼吸中枢を冒す強い毒性があるので動物の食害はないという。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像8 花冠の一部を破ってオシベ、メシベを見た時。花冠と同じ長さのメシベを囲んで、10個のオシベがあり、短い軟毛がある花糸の先の葯には刺状突起が2個ずつつく。(右はメシベも取り外した).
撮影:(2005.2.6 西米良村小川)
画像9 葉は枝先に集まって互生、倒披針形で革質、上下面の中央脈は少し盛り上がる。縁は基部近くをのぞいて浅い鋸歯がある。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像10 葉の長さは4.5〜8cm、幅約2cmほどで基部は長さ4〜8ミリの葉柄に流れる。側脈はせいぜい片側10個ほど。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像11 樹皮は灰褐色で浅く縦に裂けてややねじれる。生育環境の悪い場所では幹は曲がったり複雑に枝分かれしたりするが、適当な場所の木は真っ直ぐに上に伸びて良い形になる。
撮影:(2005.2.5 都農町征矢原)
画像12 花後、下向いた花のとおり俯いていた果柄は暫くすると上向きに曲がり、直径6ミリほどの果実となって秋、褐色に熟す。これはまだ未熟。
撮影:(2002.6.2 熊本県阿蘇)
 画像13(コバノイシカグマと重複) シカの忌避種として機能している風景。
(コメントは地面を覆っているコバノイシカグマのページで解説しているので参照。) 
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