FILE NO 390 宮崎と周辺の植物
キブシ Stachyurus praecox Sieb. et Zucc.
木五倍子 キブシ科
撮影日 2006.3.11
撮影場所 西都市

  宮崎でもまだ寒さの残る野山、3月になるといち早く開花して春を知らせてくれる花で、種小名「praecox」も(早期の)を意味するそうだ。
  北海道西南部から九州まで分布しているので、桜前線に先立ってほぼ日本中に春の到来を告げていると思われるが、キブシ前線はない。
  県内でも開花時期のばらつきが大きいが、全国的にも葉や果実の変異も多いようで、何々キブシなど多くの名前があるが、それらの違いもまだ検討の余地があるという。
画像1 主幹が消失して横枝が目立つが、崖地等でもこのような樹形を良く見かける。平地の藪から岩場や谷沿いなど生育環境は幅広い。 普通3〜4mの高さになる雌雄異株の落葉性低木。
画像2  横に長く伸びた前年枝がまだ葉を開く前、まるで店屋の暖簾の
ように見える淡黄色の花穂が、時に15cm近い総状花序でぶら下がる。
撮影:(2002.3.21 宮崎市 )
画像3  これは雄花だが、長さ1cmほどの花は花弁6個(内側4と外側2)が最後まで開かない。
撮影(.2002.3.21 宮崎市)
画像4 垂れ下がる花穂は普通淡黄色だが、野生の変異株の中には赤紫色の花穂もある
撮影:(.2006.3.21 日向市)
画像5  雄花の花弁を一部取ったら、オシベ8とメシベがが見える。 撮影:(.2005.4.3 西米良村) 画像6 雌花の花弁は雄花より緑色が目立つ。 撮影:(.2005.4.9  小林市)
画像7 雌花。メシベは花弁よりやや短く、子房と同長の花柱の先に
緑色の丸い柱頭が見える。子房の周囲には退化したオシベがある。
撮影:(.2005.4.9 小林市)
画像8 果序は総状にぶら下がって長さ1.3cmほどの両端の尖った卵形果実が実る。
撮影:(2005.5.28 五ヶ瀬町)
画像9  幹は縦に筋状に小さな裂け目が出て、皮目が散在する淡褐色で灰色が混じる。
撮影:(.2007.2.25  国富町)
画像10  枝は横に長く伸びて互生する葉を疎らに出す。葉は草質で表面は無毛で光沢がある。
撮影:(2005.5.29 宮崎市)
画像11 葉の上面、斜めに平行脈が走る長さ12〜13cmほどの先の尖った卵形で、鋸歯は目立つが小さい。 撮影:(2006.4.2 宮崎市)
画像12  葉の下面、淡緑色で側脈は5〜7対あって葉縁に沿って先端に向かい隆起する。
撮影12:(2006.4.2 宮崎市)
画像 13  果実は長さ1cm強で未熟時は濃い緑色、周囲の緑に隠れて見えない。
撮影13:(2005.5.29 宮崎市)
画像14  熟した果実は黄褐色で硬く、4月から半年以上晩秋に熟す。
撮影:(.2005.10.23 日向市)
画像15  果実をこじ開けた時の種子、大きさ1ミリ強の黄色みのある淡褐色で50〜60個ある 。
撮影:(.2005.10.23 日向市)
(木五倍子をキブシというのは以下の説による)
キブシは木五倍子と書き五倍子のブシは、ウルシ科のヌルデには、葉に寄生した
   ヌルデシロアブラムシの仲間の産卵によってタンニンを多く含む虫えい(虫こぶ)
  ができるが、これを秋に取って中の虫を殺し乾燥したものを五倍子(フシ)といい、
 薬用、染料等に利用するとともに、昔主に女性が歯を黒く染めるのに使っていた。
  キブシの果実にはタンニンが多く含まれるので、簡単に入手できないフシよりも
   手軽に利用できる代用品として、このキブシが多く用いられてきたことから木のフシ、
  木五倍子といわれる。(薬草カラー大事典 伊澤一男 主婦の友社 1998年、他資料)
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