FILE NO 416 宮崎と周辺の植物
センダン Melia azedarach L. var subtripinnata Miq.
栴檀 センダン科
撮影日 2009.10.28
撮影場所 高原町


 その昔、通った小学校に大きなセンダンがあったが、今でも残っているとすれば、樹齢は100年を超えるだろう。
 以来ずっと小学校の校庭にはセンダンがあると思い込んで、 四国、九州以南を除けば、そうありふれた樹ではないとは最近になって知った。
 万葉の時代はアフチ(樗)として詩歌にも詠まれたりしたが、その後何故か晒し首をかける木となり、江戸時代頃にはセンダンと名を変え、やがて学校の校庭木となる。
画像1 牧場の赤い牛舎の前のセンダン。はるか昔に通った木造の小学校、運動場にあった大きなセンダンの風景とどこか似ている。 日陰を作る樹としての利用価値は高い。
画像2 見上げると、大きな日陰を作ってくれた葉は殆ど落ちて、丸い団子を
    串につけたようなセンダンの実がよく見え、秋の深まりをあらためて
実感する。 撮影:(2006.10.28 綾町)
画像3 5月初め、放射状に広がった枝の基部腋から四方に花序を勢いよく伸ばして、
   薄紫色の花を葉上に紫雲がたなびくように見せるので、雲見草の名もある。
撮影:(2006.5.13 綾町)
   アフチはいつごろ、なぜセンダンになったのか、等々不思議の多い樹:センダン

1、万葉集などではアフチ(センダン)を花をめでる樹として評価し、枕草子でも触れられている。  
2、平家物語では、平宗盛の首が三条河原のアフチの樹にかけられている。
3、平安時代の官職で刑部省に囚獄司があり、獄屋の門前のアフチの樹に、罪人の首をかけた。
4、徒然草では、アフチの樹に登って競べ馬を見物する法師の話がある。
5、芭蕉の句でも、アフチ(センダン)の花を詠んだものがある。                   
6、新井白石の書いた「東雅(1717年)」にはアフチ俗にセンダンというとの記載があるらしい。
7、香木として有名なセンダン(センダンは双葉より芳しの樹)と間違えやすい名前になったのか。
8、鈴ヶ森など江戸時代の処刑場でも周囲にはセンダンが植えられていたらしい。
9、明治以降、九州あたりの小学校では学校の校庭に盛んにセンダンが植えられている。
10、宮崎の各地では、センダンを家の東に植えると病人が絶えないといわれてきたらしい。(日陰で)
画像4 花序は集散花序、長さ1cm弱の淡紫色の花弁を5個広げた花がまとまって咲く。 
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像5 花は長さ2ミリほどのガクが5、オシベは10個の花糸が合着して紫の筒になり、その内側に葯がつく。撮影:(2006.5.13 綾町)
画像6 花の時期の枝先、隙間の多い葉が横に広がって大きな傘を広げたような葉陰を作る。撮影:(2006.5.13 綾町) 画像7 葉柄基部。基部が膨らんだ葉柄の腋から花序が伸びるが、初めは星状毛が密生する。撮影:(2006.5.13 綾町)
画像8 葉は2回羽状複葉で長さ55cmほどにもなり、羽片は基部近くでは短く、
  段々長くなって中頃で最大20cmほどになり、それから先に向かって
短くなる。 撮影:(2006.5.13 綾町)
画像9 対生する卵状楕円形の小葉には鋸歯があって先が細く尖るセンダンの葉の形は、センダングサにつながる。撮影:(2006.5.13 綾町) 画像10 新葉が開いた時の葉先、2回羽状複葉が基本だが、3回羽状複葉になることもある。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像11 葉の上面、小葉の基部は少し小羽片状に切れ込んでいる。撮影:(2006.5.13 綾町) 画像12 葉の下面、葉は長さ約4cm、葉柄は長さ3ミリほど。撮影:(2006.5.13 綾町)
画像13 葉柄を取り外すと、品字状の葉痕とその脇の星状毛に包まれた冬芽が見える。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像14 古い樹皮は荒く割れて黒褐色になり、規則正しく交差したような皺状となる。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像15 若い樹皮は段々浅い裂け目が見えるようにだんだん成長して独特の模様になる。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像16 若い枝は明るい暗緑色で、樹皮には白っぽい皮目が多く目立つ。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像17 果実は、高さ17cmほどの楕円形の核果で、小さなダンゴを飾ったように果柄の先にぶら下がる。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像18 ナシのような色の熟した果実。表面には小さな斑点がつき、縮んででこぼこになる。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像19 熟した果実の果肉を取り除いた核、縦に大きな溝ができ、溝と溝の間は稜のようになって5個の出っ張りができる。漢方でヒビ、アカギレに効能があるという。
撮影:(2006.5.13 綾町)
画像20 果実の縦断面。右から未熟な果実、熟した果実、核の中の7ミリほどの種子。ヒヨドリが好むというが、熟した果実には果肉が殆ど無い。
撮影:(2006.5.13 綾町)
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