FILE NO 530 宮崎と周辺の植物
シコクママコナ Melampyrum laxum Miquel var. laxum
四国飯子菜 ゴマノハグサ科
撮影日 2005.8.7
撮影場所 諸塚村

 花の名前を聞いて誰もが疑問に感じると思う、ママコナの意味が判らない。
 ママコは、花冠にある2個の白い膨らみを「米つぶ」と見立てたとか、種子を米つぶに見立てたというがママコナのナが何なのか不明である。
 宮崎にはママコナとシコクママコナが自生するが、ママコナが花の下につく苞葉のへり全面に刺状の鋸歯が出るのに対し、シコクママコナの刺状の鋸歯は苞葉の基部近くに疎らに出ることが大きな識別点とされる。 
画像1 登山道脇の明るい傾斜地、やや乾燥気味の地面に群生した高さ30cmほどの茎に咲いた花は、軸の片側に偏ってつく。
 半寄生植物で、自力による光合成と宿主からの養分吸収を行う。
ママコナのイメージでは、花冠の膨らみは飯粒に、種子の形は米粒に見えてくる。
画像2 疎らな広葉樹下の落ち葉の間からポツポツと伸びて花を咲かせた株の全景。
撮影:(2002.9.5 田野町)
画像3 この種の特徴である、苞葉の基部近くに出ている疎らな刺状の鋸歯が見える。
撮影:(2002.9.15 五ヶ瀬町)
画像4 花冠基部のガクは先が4裂して、緑色をした小さな三角上の卵形となり、軽く立ち上がって先は鈍く尖る。撮影:(2005.8.7 諸塚村) 画像5 花冠の下唇中央に2個並んだ、白い米つぶ状のふくらみ。撮影:(2005.8.7 諸塚村)
画像6 上下に分かれた花冠の下唇上面に並んだ2つの白いふくらみの奥は黄色い。
撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
画像7 花冠上唇を丁寧に取り除いて見た、細い1本のメシベと4本のオシベの先端についた葯。
撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
画像8 花が終わった直後のまだ小さな果実ではガク片の形がよく判る。
撮影:(2005.8.7 諸塚村)
画像9 まだ未熟だが大きくなった果実、長さはせいぜい1cmほどで中には1〜2個の種子があった。撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
画像10 まだ未熟な果実の果皮を一部取り除くと、長さ5ミリほどの真っ白な米粒状の種子が見える。
撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
画像11 葉上に置いた未熟な種子は、まるで米粒のような形と色だが、両端が尖っている。
  種子はアリが運んで増えるともいう。
撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
画像12 対生する葉には1cm前後の葉柄があり、鋸歯はなくて長卵形で先は細く伸びて尖る。
撮影:(2002.9.5 田野町)
画像13 日当たりの良い場所の株は葉が赤褐色を帯びる。撮影:(2005.8.27 五ヶ瀬町)
(寄生)
半寄生植物の1年草だが、独立でも生活できるそうで、寄生の状態を見るために数株の根をできるだけ丁寧に掘ってみたが、いかにも細い根なので、通常のような形で根が他の植物の根に寄生している様子は確認できなかった。
 これだけのしっかりとした葉をつけているので、宿主が見つからない場合は自立して光合成で生活し花もつけるようで、事実周囲に宿主たるイネ科植物が見当たらない場所での生育もある。
 ママコナ属では、イネ科の草本の根と自分の根を組織的に癒合させて養分を吸収する。(図説植物用語事典:清水建美著 八坂書房 2001年)  埋蔵文化財を発掘する要領で丁寧に少しずつ根を掘れば、寄生の状態を確認できるのかも知れない。
(名前)
ママコは、花冠下唇のふくらみを米なり、ご飯粒なりに、あるいは未熟の種子をそのように考えることはよく判るが、ナは菜であり通常は葉や茎が食用になる場合に菜がつくのではなかろうか。
 僅かに持っている手持ちの本の中ではそれに触れている本は見当たらないが、それとも、食用になる菜に似ているという意味なのだろうか。
画像14 細い根が千切れないように丁寧に掘り取った地下の根。撮影(2005.8..16 諸塚村)
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