FILE NO 506 宮崎と周辺の植物
タニワタリノキ Adina pilulifera (Lam.) Franch.
谷渡りの木 アカネ科
撮影日 2005.8.6
撮影場所 宮崎市

  宮崎県を北限とし(天草にもあるらしいが)、中国からインドシナにかけて自生する常緑の低木で多くの枝を伸ばして横に広がる特徴がある。
 国内では分布地域が限られているため、記載されている資料も少ないが、材が何かの役に立つとか、花や果実が生活の中で使われているとかの話もないようで、地元でもそれほど知られている木ではないが、花と果実の形が面白く、国内では宮崎が数少ない自生地でもあるので、紹介しておきたい。
画像1 足場の悪い渓谷沿いの傾斜地に生え、谷川に傾いて枝を伸ばしていることが多く、この木が渓谷の両岸をつなぐような感じになることから「谷渡りの木」だと解説した本があるが、自生地の状況からその説に賛成したい。樹形は自生地の環境でかなり変化し、高さ5m近くにもなる。 画像1〜8の花の画像は、
  撮影:(2005.8.6 宮崎市)
画像2 葉腋から3〜4cmになる花序の軸を伸ばして、淡黄色のポンポン状の球状花序をつける。
画像3 球状になった花序の直径は1.2cmほどだが、その外側に刺のように見える花柱が6ミリほど突き出ているので、独特の形になる。
花序軸の途中にある1対の苞も特徴。
画像4 花は両性で多数の筒状の花が集まって球状になる。筒状の花の中心から長く突き出たメシベの花柱は、先が丸く膨らんでマッチ棒のように見える。
画像5 黒っぽく見える5個のオシベ(葯)は筒状の花の内部にあって見えない。 画像6 一部筒状の花を取り除いてみれば、上部が5裂した漏斗状花冠が見える。  
画像7 花序を構成する一つ一つの漏斗状花。
花冠の長さ5ミリ、花柱の先まで1.2cmほど。 
画像8 花冠の一部を取り除いた花冠、5個のオシベは花筒の先の方に付着して花糸は短い。
画像9 葉は対生して枝の上部に集まる。
撮影:(2004.11.7 宮崎市)
画像10 葉は倒披針形〜狭長楕円形で全縁、縁は多少波打つ。撮影:(2004.11.7 宮崎市)
画像11 葉の下面、大まかな脈が突出する。
撮影:(2004.11.7 宮崎市)
画像12 葉下面脈腋には微細な穴があるのは大きな特徴。撮影:(2005.8.6 宮崎市)
画像13 晩秋の谷川、緑の葉に混じって淡赤黄色の丸い偽果が熟し、
        派手さはないが川音に揺れて面白い。撮影:(2001.11.4 北郷町)
画像14 丸い果実は多花果(複合果)で、複数の花が複合してできたもので、一つの果実のように見えるが、偽果といわれる。表面はガク片の突起が残る。撮影:(2003.10.26 宮崎市) 画像15 複合果を構成する刮ハをばらばらにした。個々の果実は狭楔形、2ミリほどの長さで先端には変形した広線形のガク片が残る。
撮影:(2005.9.15 宮崎市).
画像16  谷川の岸で株立ち状になって、弓なりに枝を伸ばした樹形。
撮影:(2004.11.7 宮崎市)
画像17 若い枝の節に出る2枚の托葉は深く2裂し、4枚のように見える。
撮影:(2005.8.6 宮崎市)
画像18 枝先の枝葉と果序の出方。
撮影:(2004.11.7 宮崎市)
画像19 幹は時に基部で大きく枝分かれすることもある。撮影:(2004.11.7 宮崎市)
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