FILE NO 296 宮崎と周辺の植物
ウバユリ Cardiocrinum cordatum (Thunb.) Makino
姥(乳母)百合 ユリ科
撮影日 2009.7.26
撮影場所 日南市

 ユリ科の中でもユリ属とは、鱗茎の鱗片が少なく、葉が卵状楕円形で柄が長くて花後に葉が枯れるなどの違いから、独立してウバユリ属が作られている。
 宮城、石川県以西〜九州に自生する多年草で、宮崎でも樹林内で幅広く見られる。
 地下の小さな鱗茎が数年を経て少しずつ大きくなり花のつく茎が伸び出す頃になると、鱗茎周囲に新しい小鱗茎が増え、花後には地上葉も地下の鱗片(根出葉の葉柄基部が膨れてできた)も消滅、果実が熟すと個体も消えて子鱗茎が新株となる。 
画像1 薄暗い林内でユリの仲間とすぐに判る花を咲かせるが、大振りで荒っぽい感じの花はあっという間に落ちてしまい、印象から消える。
画像2 伐採された杉が横たわる日当たりの悪い傾斜地に、高さ1.5mほどにも伸びた株。
   花は苞に包まれた蕾の時は上を向いているが、徐々に傾いて横向きに開花する。
撮影:(2009.7.26 宮崎市)
画像3 舗装された林道わきの狭い林縁傾斜地に点在している高さ80cmほどの株、
   3個の花は開花初期と思われるが、茎葉の上部側の葉は完全に枯れている。
撮影:(2009.7.20 日南市)
画像4 まだ花序が伸びてない時期の蕾で大きな苞葉に包まれる。 茎にも目立つ苞葉があるが、開花期には落ちる。 撮影:(2008.7.19 小林市) 画像5 花は長さ15cm、花被片6は上下3個ずつに分かれて中間に隙間ができ、内部のオシベ等が見える。  撮影:(2006.7.17 宮崎市)
画像6 若い花の内部。オシベとメシベが見えるが、ほぼ同じ長さで花被片内部に納まっている。
撮影:(2007.7.26 日南市)
画像7 熟した花被片内部。オシベ6は基部から順に長さが1本、2本、2本、1本ずつの組になり、メシベはさらに長い。 撮影:(2006.7.17  日南市)
画像8 花冠正面。先が僅かに開く花冠は大きさが指し渡し約8cm。  撮影:(2009.7.26 日南市) 画像9 緑白色の花被片内側には下半部は赤褐色の模様になる。  撮影:(2009.7.26 日南市)
画像10 葉は茎の下半部に集まって互生、長さ30cm近くなる卵状楕円形の葉身が、
  最長25cmほどにも長くなる葉柄の先について水平状に広がって開く。
撮影:(2009.7.26 日南市)
画像11 未だ茎が伸びてない若い株で、古方言にゴボウユリという名前があるように、
    ユリ科の葉とは思えない網状脈の広く大きな葉が、陽光を受けるように開く。
撮影:(2009.4.23 日向市)
画像12 葉の上面。若い葉では艶があって光っている。   撮影:(2006.7.17 宮崎市) 画像13下面。左右均整のとれた広い脈は、ユリ科とは思えない。  撮影:(2006.7.17 宮崎市)
画像14  広がったばかりの新葉。鮮緑色に緑白色の脈が目立つ。宮崎の山菜(滝一郎氏著)によれば、食べるためには頑固な強い苦みをいかに取るかが問題らしい。  撮影:(2001.3.18  宮崎市) 画像15  若葉には赤褐色の脈の葉もあって色はやがて消えるが、普通の色の葉も同じ場所に生えることもあり、土壌の性質に関係するとも思えない。  撮影:(2007.3.21  西米良村)
画像16 茎は緑色で丸くて無毛。茎上部の花の位置より下方にも苞葉が出るがやがて落ちてしまう。  撮影:(2006.7.17 日南市) 画像17 花の時期に葉が枯れた株。枯れない個体も多く、必ずしも花の時期に枯れるわけではなさそう。  撮影:(2006.7.17 宮崎市)
画像18 果実は12月頃、長さ5cmほどに熟して縦に3裂して開くが、隙間が網目で閉ざされて横には零れない。  撮影:(2009.1.4 木城町) 画像19 3裂した果実は徐々に開くが、網は相当にしっかりしており、種子は少しの風では飛ばずに遅くまで残る。 撮影:(2009.1.4 木城町)
画像20 種子は長辺が1.5cmほどの扁平でいびつな2等辺3角形の膜状翼の中央部で、黒褐色半円状になる。  撮影:(2009.1.4 木城町) 画像21 未だ茎も伸びない若い株の鱗茎。高さ約4cmで3枚ほどの鱗片(根生葉の葉の基部が膨れた)からできている。 撮影:(2009.2.28 日南市)
 (和名ウバユリの由来):姥ユリと表記されて、殆どの図鑑等で花が咲くころには葉がない(歯がない)から姥ユリという・・・しゃれから付いた名前であるとの説明に、石川の植物の作者もサイトの中で納得できないといって考え方を述べているが、ド素人ながら私も単純に姥のユリと書くことには抵抗がある。
 牧野図鑑の説明でも、女児の世話をする女が娘が成人して花の18になった頃にはもう歯の抜けた姥になるのに例えた・・・とあるように、乳母の歯が抜けることを意味していることに注目すべきではなかろうか。
 女児が生まれた時に乳母になるのは、大凡20〜25歳ぐらいで母乳の出るしっかりした女性だろうから、育てた女児が花も恥じらう娘盛りになる頃の乳母は40歳を過ぎた頃と思われ、単純に歯が抜けて姥と呼ぶほどに年を取った女性と考えることには無理があると思われる。
 姥とはかなり年を取った女性を表現していると思われるので、素直に「お乳をあげて育てた女児が年頃の美しいお嬢様になった頃には、育てた方は若さもなくなり、歯も抜ける年に近づいた」乳母と表記した方が相応しいのではないだろうか
 ド素人の思いつきながら、本草綱目啓蒙(小野蘭山)には、当時のウバユリの各地の方言が挙げられている中に、テングユリ、バカユリ、ネズミユリ、ゴボウユリその他多くの方言に混じって、ウバユリ(阿州、勢州)とあるだけで漢字表記はされてないらしい。(サイト:跡見群芳譜(嶋田英誠編) の記載内容を参考にした。)
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