FILE NO 230 宮崎と周辺の植物
ヤマナシ Pyrus pyrifolia (Burm.fil.) Nakai
山梨 バラ科
撮影日 2009.3.28
撮影場所 西都市

 多くの品種がある日本ナシはヤマナシの栽培改良品らしいが、ヤマナシは中国から来たという説が専らのようだ。
 齧っても渋味が強くて不味いが、宮崎県椎葉村の椎葉クニ子さんは雪霜が降ったら甘味があって食べていたというから、冬の頃には多少甘味が出るのかもしれない:おばあさんの植物図鑑から(斎藤政美文、椎葉クニ子語り、1995年葦書房)。
 個体間で果実の大きさにかなりの変化があるように思えるが、山深くでは見かけない。
画像1 国道に注ぐ谷沿いの樹 、樹全体が花で真っ白に染まるので遠くからでもすぐに判る。樹の高さ10mほどはありそう。  果実は手の届かない高い枝に生って味見は難しい。
画像2 満開となった花の間に1つまだ残っている果実。石細胞が多くて秋の頃には
  不味いがこの時期のナシは食べられるほど甘みが増すのか知りたいが、
     傾斜地に生えた樹で枝が高くて手が届かない。撮影:(2009.3.28 西都市)
画像3 白一色に見えた枝は近寄って見ると、柔らかい淡緑色の葉はすでに
     開いているが、まとまって広がった花の方が派手で葉は目立たない。
 撮影:(2008.4.12 西都市)

画像4 花は短枝の先に5〜6個以上、白色の花弁5が平開し、長さ約5.5cmの小花柄の先に直径3.5cmほど。 撮影:(2008.4.12 西都市) 画像5 オシベは20個ほどとやや多くついて、葯は淡褐色を帯びる。メシベの花柱は基部から5個が離生している。  撮影:(2008.4.12 西都市)
画像6 ガク裂片は5〜6で先は細長く伸びて縁に腺状鋸歯がある。 撮影:(2008.4.12 西都市) 画像7 互生した若い葉柄と総状の花序軸には綿毛と托葉がある。 撮影:(2008.4.12 西都市)
画像8 短枝の先の葉は成葉になると全体無毛となる。 撮影:(2008.8.9 西都市) 画像9 若い枝は紫褐色を帯び小さな皮目がある。  撮影:(2008.4.12 西都市)
画像10 葉は先が細く尖った卵形で基部は変化の多い切形。葉は
       長さ10cmほどで、基部を除いた縁に細かい鋸歯があり無毛。
  葉柄は長さ約5cm。 撮影:(2008.8.9 西都市)
画像11 葉上面、縁に鋭い芒状鋸歯があり網目の脈が明確。 撮影:(2008.8.9 西都市) 画像12 葉下面の基部付近の鋸歯と脈の様子。   撮影:(2008.10.3 西都市)
画像13 果実は直径3.5cmほどの球形で、表面に多くの皮目がある。 撮影:(2008.9.27 西都市) 画像14 果実の横断面、石細胞が多く噛むとザラザラして不味い。  撮影:(2008.10.11 西都市)
画像15 冬の樹形。樹は傾斜地に約高さ10mほどで小枝が多い。  撮影:(2005.2.6 西都市) 画像16 幹は樹皮が縦に裂けてカキノキ状になる。  撮影:(2003.4.6 西都市)
(雑記) ナシは枕草子や源氏物語にも出てくるほど古くから知られ栽培されてきたといわれ、その原種はヤマナシとされるが、これは古い時代に中国から渡来したという説が強い。確かに宮崎でも道脇とか、集落に近い里山で見かけることが多く、山頂や山深い谷等で出会ったことがないので、本当の野生種というには疑問がある。梨を有りの実と言い換えるなどの言葉遣いは平安の昔からのことでありその頃からナシが知られていたことは間違いないと思われるが、現在の長十郎等の美味しい梨は明治以降に改良されたもので、それまでのナシがどの程度甘くて大きかったかはよく判らない。日本書紀にも取り上げられているほど古くから果物として知られていたということは少なくとも現在のヤマナシ(石ナシ)よりはかなり改良が進んで甘くなっていたはずで、和漢三歳図絵にも各地の甘い梨の話が出てくるので、栽培されたナシはかなりの甘さはあったものと思われる。これらのナシがヤマナシを改良したものかどうかは疑問が残るが、よくよく考えてみると子供の頃喜んで齧ったイシナシの思い出のこともあり、甘いお菓子に縁がなかった時代には多少甘みがあって遊び心も満たしてくれる貴重な果物ということだったのかもしれない。
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