(飛ばし読みの)本の中に見えた植物(情景等の・・・・以下は本文中の記載文)
 モンテーニュは随想録の中で「いろいろな野菜がまじっていても、全体はサラダという名の中に含まれる」と言っている。石川淳は著書、文学大概(中公文庫昭和51年12月1日発行)の中で、原稿用紙二三百枚以内のものを便宜上「短い小説」と呼ぶことにして、短編小説の構成についての難しい考察を展開しているが、作者は短編長編こだわらず先ずは積ん読していた本を引っ張り出して、拾い読み走り読みはまだるっこいと超特急で飛ばし読むうちに作者の目に留まった植物の名をメモしてみた。著者の偏りを避けるべく時に借用した図書館の本も混じるが、取り上げた本は数回の売り払い処分に耐えて生き残り、埃にまみれて我が家の書棚にしがみついている古本が殆どで、活字も小さいという理由にこじつけて読み違いも多いことをお断りしておきます。
植物 本の題名 関係人物 作者 出てくる植物の情景等 本情報
アイリス セクメト 警視庁刑事
和賀千陰
太田忠司 殺人事件の容疑者が連続して殺される捜査の中で、女子高生が呟いた「私はセクメト」とは、エジプト神話のセクメトとは人間抹殺の神といわれるが・・・・。彼は少女が座っていた席を眺めていた。机の上に花でも置いてやろうかと思った。百合がいいだろうか、それとも薔薇か、いやアイリスとかでもいいか、彼女によく似た愛らしい花がいい 中央公論社(2013
年初版)
アオキ  論語知らずの論語読み 志賀直哉 阿川弘之 著者ははしがきでないがしろに考えているわけではないと言いつつ楽しく論語の本質が理解できる随想。・・・・志賀先生は鳥獣草木の名をよくご存じであった。花瓶に、赤い実のついた枝が活けてあって、「これ、何か分かるかい」と聞かれた。「万両ですか」「青木だよ。万両でも知っているだけましだが君、よくそれで小説が書けるね」~陽貨篇1 講談社(昭和52年第1刷)
アオキ  ルパン全集16
緑の目の令嬢
オーレリー モーリス・ルブラン(大友徳明訳) ルパンシリーズの中でも、カリオストロの鏡の4行の秘文にも匹敵する謎解きと作者には思われる話で、ルブランにもっと力をい入れてもらいたかった気がする話。フランスにはもうアオキが広まっていた?・・・・台地のいちばん上は、野外ホールのようになっていて、何本かのアオキや、こわれた格子垣や、石のベンチなどでかこまれ、中央にはテラコッタの美しい壺が飾られている 偕成社(1993年第1刷)
アカガシ 居眠り磐音江戸双紙38東雲の空 坂崎磐音 佐伯泰英 三年余ぶりに江戸に戻った磐根は、両替商今津屋の好意でできた新道場での早朝初稽古を槍折れ稽古から始めた。「槍折れ素振り100回」と命じると、赤樫の棒を両手にしっかりと保持する素振りから始めた。(10周年記念刊行の吉田版江戸地図は、他の時代小説を読むにも好都合) 双葉文庫(平成12年第1刷)
アカザ 天狗の剣 服部孝太郎 藤本ひとみ 15歳で一刀流溝口派の手形目録を許された孝太郎は新道精武流の師範である父の教えを受ける真之介に対抗心を燃やして練習に励みながら父の冷たさに反抗する・・・。昨朝、幸太郎は道場の稽古が終わった後、藜を摘みに天寧寺まで出かけた。「藜の若葉を食べると、痛風にならないらしいぞ」日新館の昼食時 中央公論新社 (2011年初版)
アカシア 二十歳のエチュード 原口統三 原口統三 二十歳のエチュードの中に出てくる唯一の花の名 角川文庫 (昭和49年17版)
アカダモ 小樽雪舞い 芸者糸八(中村トシ) 川嶋康男 北日本一の名妓とうたわれた明治中期の小樽の糸八の波乱に満ちた生涯は芸妓と娼妓の二枚看板で人情と心意気を貫いて稼ぎを追い越す借金の生涯でもあった。14歳で札幌県令の調所に身を任せて・・・。船着き場の目標となるのが小高い水天宮の山や、山ノ上町の三本木坂中腹にあった三本の赤ダモ、。船乗りたちの目安となるため入港を知らせる汽笛を鳴らす 中西出版株(平成4年)
アキノキリンソウ シリウスの道 辰村祐介 藤原伊織 広告業界に身を置く辰村は仕事との関連もあり、封印していた13歳の頃の遊び仲間明子と会うことになり、かっちゃんを探して上野駅周辺を・・・。あの夏の終わり、アキノキリンソウを写生した勝哉の絵を観て父信義が漏らした感想だ。長いあいだ目をはなすことができず、辰村は画用紙に見入っていた 株)文芸春秋(2005年第2刷)
アケビ 忍者列伝ノ続 果心居士 稲葉博一 伝説の忍者果心居士。松永弾正に近しさを感じて気の向いたときに会いにゆき他国の情報提供等をしている果心は、奈良興福寺の僧から依頼された伊賀の忍者集団から狙われることになるが・・・。近くの林のなかでは、落葉した通草の木が、淡い紫いろの実をぶらさげていた。厚い皮はふたつに割けて、白々とした果肉をのぞかせている 双門学芸出版平成22年初版
アサ 時の渚 茜沢圭 笹本稜平 元刑事だった私立探偵の圭は余命半年のホスピス入院患者からの依頼で35年前に見ず知らずの女性に預けた子供を捜索をすることになったが、刑事を辞める契機となった三年前の妻子がひき逃げされた未解決事件との関連が・・・。麻は四百年も前から続いた鬼無里の特産品なのだという。ところが昭和二十三年に大麻取締法が施行されて、麻の栽培に関する規制がやかましくなった。 株)文芸春秋(平成13年第1刷)
アサガオ 刺客が来る道 佐山壮之助 風野真知雄 愚昧な藩主に藩を追われた壮之助は、相次ぐ刺客に狙われながら朝顔の鉢物で家族の糊口を凌いでいたが・・・。朝飯を終えて、畑仕事にかかろうとしていると、軒先あたりで千賀が、「お前様、朝顔は咲きましたよ」叫ぶように言った。「どれどれ・・・ほう、これは・・・」それは息を飲むほど美しい花だった 廣済堂出版 (平成11年初版 )
アサガオ 弥勒の月 遠野屋清弥 あさのあつこ 小間物遠野屋の女房が身投げした事件を追って同心信次郎に曰くありげだとして過去を詮索される遠野屋主人清弥、信次郎の岡っ引き伊佐治、3人3様の思いが交錯する中で・・・。包みを開けると黒い種と紙切れが出てきた。紙には、女文字で「うすもも、あい、あいのふ」とあった。「これは花の種ですね。朝顔か・・・遠野屋さんこれをどこで?」 光文社 (2006年2刷 )
アサガオ 今に生きる和泉式部 和泉式部 大辻二郎 和泉式部の伝説がある町宮崎県内国富町の和泉式部研究者大辻二郎氏の著作。表紙タイトルコメントに、恋と歌に生きた伝説の歌人 現代語に生きかえった和泉式部 とあり、名歌1549首の完全口語訳が遂に完成した。・・・・「今の間の 朝顔をみよ かかれども ただこの花は 世の中ぞかし」 訳は 「朝顔はきれいなうちに御覧なさいすぐに移ろう浮世と同じ」 鉱脈社 (2015年初版初刷 )
アザミ 青の炎 櫛森秀一 貴志祐介 ロードレーサ-で通学している由比ヶ浜高校2年の秀一は知識・能力を駆使して、家に居座って傍若無人に振舞う離婚した義父の完全殺人を実行するが・・・。その一歩を敢然と踏み出すためには、我々は悪魔を呼ばなければならないだろう。はだしであざみを踏んづける!その絶望への情熱がなくてはなくてはならないのである」『檸檬』を読んだときには、・・・・ 角川文庫 (平成15年4刷)
アシ エホバの顔を避けて ヨナ 丸谷才一 アルバの町の靴職人ヨナは、よこしまなる町ニネベは40日にして滅ぶというエホバの声を聞いてニネベに赴き予言者となるが予言は外れ、支援してくれた女性ラメテと逃げる途中で石を投げられてラメテが死亡しエホバを憎む自分に気づいた時、アシの茂みからアシドドが這い出してきた。「そう、これが審判なのだ、ヨナ」 中公文庫A105 (昭和53年)
アジサイ 佐保神の別れ 高村貴実子 井上明久 出版業界の木暮は、ある日ニーチェを超えたと思いこんでいるらしい作者からの原稿預かりを拒否した後、佐保神の別れと題する原稿を預かったことから複雑な事件に迷い込むことに・・・。「紫陽花を一遍にこんなにたくさん見たのって、私初めてです。正直言って、今までこの花にそれほど深い関心を持たなかったんです 中河出書房新社 (1998年初版)
アスナロ 武蔵野少年物語 小宮山恵二 本所次郎 空襲で寺を焼かれた寺の息子次郎は修学旅行にも行けない中で少しづつ成長し、初恋、読書、文学、やがて新聞配達をしながら大学へ進む。待てそして希望せよ・・・。四月初めのある朝、細い路地を隔てた左隣の筒井家のお兄さんが二人、小宮山家の庭すれすれに植えられた直径20cm余りのあすなろの木を根元から切っていた 株)ポプラ社 (2007年第1刷)
アスパラガス 越境捜査 鷺沼友哉 笹本稜平 警視庁で未解決事件担当の特別捜査一係に左遷された鷺沼は、かって手がけた森脇康則殺害事件の再捜査を開始早々に刑事らしい3人から 袋叩きに逢う。闇に消えた12億円は?、犯人は?・・・。韮沢の視線の先には丹精を込めた家庭菜園があった。キクサヤが実をつけ、その傍らでアスパラガスやセロリも元気に育っている。畑そのものは以前千佳子が重症の貧血を患ったとき、野菜でも栽培して栄養をつけさせようと韮沢がつくったと聞いていた 株)双葉社 (2007年第1刷)
アセビ 大和路・信濃路  堀辰雄 堀辰雄 前から一種の憧れをもっていたあせびを大和路のいたるところで見ることができたが、一番印象深かったのは、浄瑠璃時の小さな門の脇に丁度いまをさかりと咲いていた一本の馬酔木をふと見出したときだった。(浄瑠璃寺の春) 新潮文庫 (昭和45年22刷)
アヤメ 建築探偵桜井京介の事件簿
未明の家
桜井京介 篠田真由美 近代日本建築史が専門のW大学院生桜井京介が昭和9年建築のスペイン風別荘黎明館で起きた殺人事件を建築に秘められた謎とともに解明する・・・。青紫のアヤメを投げ入れて、さりげなく置かれた備前焼きの大壺。壁には黒漆の色紙掛けに薄墨で書き流された色紙が一枚。無論一字も読めはしないが、左下に押された落款の朱色があざたかだ 講談社文庫(2003年第13刷)
アララギ 一七歳 守屋脩 小林紀晴 赤彦の歌「ミズウミコオリハトケテナオサムシ、ミカヅキノカゲナミニウツロウ」を教えてくれた宮坂木綿子からの手紙を異国の地で読み返しながら、信州松本の高校生だった頃から15年、脩は、木綿子のいない未来に僕だけが来てしまったことを・・・。その中に赤彦が活動の中心としていた「アララギ」についての簡単な解説があった。昨晩その部分を読んだ。アララギは樹木の名前であり、漢字では阿羅々木と書くことも知った NHK出版 (2008年1刷 )
八点鐘 オルタンス・ダニエル モーリス・ルブラン アルセーヌ・ルパンこと、レニーヌ公爵が若く美しい夫人オルタンス・ダニエルの心を得るために一緒に事件を解決する冒険の八つ目は、オルタンスが昔無くした古いコルサージを探すことだった。オルタンスへのルパンからの指示は、細い2本のイ(灯心草)を切って編んだ鞭、切り小面がついた黒玉の首飾り、青い外套の下に青いウールのロープ等の衣装で犯人と対峙することだった(マーキュリー骨董店) 新潮文庫 堀口大学訳ルパン傑作集(Ⅷ) (昭和62年33刷)
イシモチソウ 赤い毒の花 伊波豊次 水上勉 大学の植物研究室の伊波は義父でもある教授から千葉の湿地で見つかったという珍種モウセンゴケの調査を命じられて出張するが、宿の娘小夜子に惹かれて軽い気持ちで・・・・。先ず五月から六月にかけてイシモチソウという細長い白い花が咲いた。六月の末にはモウセンゴケの白い花、七月にはコモウセンゴケの淡紅色花弁の細い花、八月にはミミカキグサの黄色い花といった具合に 角川書店日本代表ミステリー選集9犯罪特製メニュー(昭和59年)
イタドリ 月のころはさらなり 井口ひろみ 蝉時雨の中、母に連れられて山奥にある御千木の庵のおんば様の家に泊まることになった高校2年の悟は、預かり子の茅や六年生の真と祠で鈴鳴らしや言霊を体験するなど閉じられた世界に馴染んでゆくが・・・、「春ならいたどりとか野苺とか、もうちょっとしたら椎の実とかなつめとかあけびとかあるんだけど、今ってこのあたり、食うものないんだよな」 新潮社 (2008年)
イチイ 鑢ー
名探偵ゲスリン登場
アントニーゲスリン フイリップ・マクドナルド 週刊新聞「梟」の編集長に依頼されて大蔵大臣が殺害された田舎本邸に出向くことになったゲスリン大佐は、事件の謎に挑む、「だれが殺した駒鳥を」「私が殺した」雀が言いました  マザーグースの調べに乗って真相にせまる・・・ちょっと考えて彼は歩き出し、水松(いちい)の生垣の隙間を通り抜け、草の生えた斜面を右へと下り、バラ園を横切った 創元推理文庫 (1983年1刷)
イチイ 帰らざる荒野 友近克也 佐々木譲 明治の北海道開拓期、父が作りあげた友近牧場の二男の克也は兄の婚約者に惹かれながらも猟銃を片手に19歳で家を出て道内を放浪するうち、家庭を持ち牧場を持つが・・・。道の合流点には、一本の一位の巨木が生えていた。克也たちはその一位の木の下で、篠崎が来るのを待った 株)集英社 (2003年1刷)
イチゴ 雲の墓標 吉野次郎 阿川弘之 1945/7/10木更津海軍航空隊から特攻機で飛び立った予備学生吉野次郎が5月30日自分の25歳の誕生日に配給されて食べたのが苺 新潮文庫 (昭和39年9刷)
イチジク マルクス・アウレーリゥス自省録 マルクス・アウレーリゥス・アントーニーヌス マルクス・アウレーリゥス 第16代ローマ皇帝の自省録。次のことを記憶せよ。無花果の樹が無花果の実をつけるのを驚いたら恥ずかしいことであるように、宇宙がその本来結ぶべき実を結ぶのを驚くのも恥ずかしいことである。同様に医者や舵取りが熱のあるのや逆風の吹くのを驚くのも恥ずかしいことである 岩波文庫 神谷美恵子訳 (昭和39年10刷)
イチジク ひと雫のたび 田宮茂子 加茂辰興 新潟県の山奥に育った茂子は小学校卒業後、東京に出て女中奉公をしていたが生来の利発誠実さを失わず結婚を機に新事業に能力を発揮して、自分の運を切り開いてゆく一方で、夫との距離が開いてゆく中で多くの試練を乗り越えてゆく・・・。イチジクの木を見た茂子は、郷里を思い出すと共に、何か胸を締めつけられるような気持ちになった 西田書店 (1993年初版第2刷)
イチョウ 流れ星が消えないうちに 本山奈緒子 橋本紡 加地君が急死した後、思い出の品がない玄関でしか眠れない奈緒子と、3人で過ごした思い出から抜け出せない親友だった巧の微妙な関係は、1年半を過ぎて忘れない気持ちのままに心の整理が徐々に・・・。適当に開いた途端、葉っぱがパラリと落ちてきた。加地君はよく、栞がわりにこういうものを使っていた。銀杏の葉とか、モミジの葉とか、そんなにきれいじゃない雑木の葉とかも 新潮文庫 (平成22年12刷)
イチョウ 福音の少年 北畠藍子 あさのあつこ 高校生の氷見明帆は同級生の北畠藍子と付き合いながらも心の中の闇に囚われ友人ともいえない柏木陽との家に泊まった夜、藍子のアパートが全焼し住人9人が焼死する事件が起こる・・・。神社の銀杏には注連縄がぐるりと回してあった。「これ、御新保郁神木なんだよ」藍子の手がごつごつとした幹を撫でる。「御神木?」明帆も幹に手をかける。 門川書店 (平成17年3刷)
イチョウ 女の街 佐藤五郎 松本賢吾 流れ土工の五郎は風の盆の町越中八尾から30年ぶりに新宿にに帰ってきた。30年前キャバレーの女風子のためにヤクザを殺して逃げた街だったが、やはり風子に逢いたかった・・・・。イチョウやツツジが植えられた石畳の遊歩道は、区役所通りと並行して走り、新宿文化センター方面に 毎日新聞社 (2003年)
イチジク 夏の椿 立原周之介 北重次 刀の仲介や道場の師範代で世を凌いでいる若い周之介は疎遠だった弟が殺され、犯人を捜す内に幕閣に繋がった商人の悪巧みの渦に巻き込まれる。亡弟と契った女沙羅を保護する内に・・・・。周之助は座敷から縁越しに庭を見た。塀際に柿が枝を広げ、僅かに色づいた実を付けている。棗に、柚、無花果の木もある。木々は大きくなったが、枝振りは変わらない。 株)文藝春秋社 (2004年第1刷)
イヌタデ
アカマンマ
あかまんま(慶次郎縁側日記) 材木問屋丞右衛門 北原亜以子 未だ丈吉だった頃にオミチと約束したあかまんまの簪を特注できた時にはオミチはもう死んでいた。13年経って好きな女ができ、簪をすててしまおうと思い悩む日々の中・・・・。丈吉の記憶にある幼い頃のおみちは風邪ひとつひかず、おてんばで、赤まんまが思いきりのびた空地を走りまわっていたのだが 新潮文庫(平成20年)
イヌノフグリ 関東郡代御用留 大河内与七郎 祖父江一郎 関東郡代の補佐で仏の与七様と呼ばれる手付元締めの嫡男与七郎は、重税に苦しむ百姓にも幕府にも有益な方策を進める為、大老酒井雅楽頭の政策との闘いを・・・。与七郎は木々の新芽や野の花に心を奪われる家綱を、意外な面持ちでそれとなく見遣りながら直答した。「あの青紫の花を無数につけた草は何というのじゃ」「犬のふぐりと呼んでおります」「ふぐり?ふぐりとはなんじゃ」与七郎は忠常を見て苦笑した 株)集英社(2001年1刷)
イヌホオズキ 羊たちの沈黙 クラリス・スターリング トマス・ハリス 若い女性の連続誘拐殺人事件の犯人像を心理的側面から手がかりを求めるFBIのクロフォードから、獄中のレクター博士の意見を聞くよう依頼されたFBIアカデミーの若き女性研修生クラリスの活躍・・・・。若い成虫が檻の床の湿った土の中の殻からたった今出てきたところだ。彼女はイヌホオズキの茎を慎重に上りながら、未だ濡れて背中にくっついたままの新しい羽を広げるヅペイスを捜している 株)新潮社 新潮文庫(平成3年14刷)
イノコズチ 海賊丸漂着異聞 市左衛門 満坂太郎 伊豆御蔵島で書役を務める市左衛門は漂着したアメリカ商船の取扱いについて島の有力者に交じって対応するが、通訳の支援に訪れた中浜万次郎の助言で問題を解決してゆく。長子相続制を守る島では、長男以外の結婚は許されない。「子荒らし草」と呼ばれるイノコズチの細枝を使って胎児を始末したり、産み落とした嬰児の口鼻に濡紙をのせる方法がとられた。 東京創元社 (1996年初版)
イワツツジ まぼろしの獣 荻生広道 西村寿光 必ず生きていると信じる板東大佐と悍馬松嵐、愛犬鉄を探す荻生広道は新京から離れて長白山に住みつくが、朝鮮虎に怯えながら過ごす内に、いつの間にか春が来て、崖にはイワツツジが煙っていた 徳間書店 西村寿行選集79
ウノハナ 御用盗銀次郎 魁銀次郎 東郷隆 幕臣だが御用盗を率いる青木弥太郎を助ける剣の使い手銀次郎は、押し込み強盗に等しい役割と知りながら青木の危機の場面で剣を振るうが・・・。お近が手を入れている鉢物の中に、卯の花と花葵を見つけて目を細めた。こんな人斬りにも花を愛でる心があろうとは、隣に座っている青木も気づかない 株)徳間書店 (2004年第1刷)
ウツギ 緑雨の回廊 岡沢稔 樋口京輔 黒部立山の真山ダムで消息を絶った稔は、戦国時代に武将佐々成政の埋蔵金発見に山中に入ったらしいが同行者宇治が死体で発見され警察に事情を聴かれた妻千賀子だったが・・・。体が岩盤から離れてしまうと、稔は途端に後悔した。宙ぶらりんとなった足の先には、引き出し口の明かりがウツギの葉の向こうに見え隠れしている 中央公論新社(2000年初版)
ウメ 夜明けの橋 魁銀次郎 澤井世右衛門 江戸開府間もない家康の時代、元北条氏に仕えていた与右衛門は、変貌著しい日本橋あたりで薪炭を商う商人となっていたが、ともに戦った九兵衛が乱れた髪のまま訪ねてきた・・・。しばらく庭を見ていた九兵衛が、ごつい風貌に似合わぬことを言った。「かすかに、梅の香りがするわ。この庭も風情がでてきたものよなあ」 新潮社 (2009年第1刷)
ウメ 横溝正史の獄門島 金田一耕助 横溝正史 獄門島での殺人事件で、金田一耕助は花子が梅の古木に逆さづりにして殺されて見立てらた其角の俳句、鶯の身をさかさまに初音哉 の謎を見破った 角川文庫緑304(昭和47年3版)
ウメ 君の名は 後宮春樹 菊田一夫 後宮春樹に遺書を残して自殺しようとしている氏家真知子を追って、春樹達が佐渡千畳敷から尖閣湾へ向かうバス道路をさぐりながら走る路の崖裾に見えるウメの古木が、小さな花の蕾ををいくつも堅く唇を結んでいた(第2部古木の蕾) 宝文館(昭和28年第22刷)
ウメモドキ 真実一路 守川義夫 山本有三 5年生の義夫は姉さんが見合いをした青年が家に訪ねてくる日、外で遊ぶことを禁じられてすることもなく応接間のドアをあけると、テーブルには新しいテーブル掛けがかけてあり、カビンにはウメモドキがひんよくさしてあった。それからゆかにはきのう三越からとどいた緑色のジュウタンがふんわりと敷いてあった 新潮文庫昭和35年第34刷)
ウラジロ 真恋忘れ草 おいち(歌川芳花) 北原亜以子 女絵師芳花は地本問屋の加賀屋から依頼があった江戸名所百景の版彫りを、今でも心にかけているほつれ髪才次を当てにし、当然のように思い込んでいた返事は・・・。おいちは、つめたい風の吹き付ける両国橋を渡った。注連縄やうらじろの葉などがのぞく風呂敷包みを持った人と、幾度もすれ違う。気がついてみれば、浅草観音池の歳の市だった 文春文庫1999年第8刷)
ウルシ カロンの舟歌 瀬尾龍平 浅黄斑 10年以上も前に書いて賞をもらった小説以降フリーのルポ記事等で食いつないでいる男の前に、忘れたい昔を思い出させる娘が現れて戦う気持ちが・・・。青く澄み渡る空を背景に、連なる山々の稜線は鋭く切り立ち、早くもナナカマドやウルシが紅葉をはじめていた 徳間書店1996年第1刷)
エーデルワイス 遠き雪嶺 浜野正男 谷甲州 立教大山岳部では国内で厳冬の雪山訓練を経て日本人初のヒマラヤ挑戦として処女峰ナンダコート初登頂に挑むことになった。想定外アクシデントの連続で苦労しながらも2度目の頂上攻撃で堀田隊長以下5人が山頂に立ったのは、昭和11年10月5日・・・。浜野は黙ったまま、エーデルワイスの花をつんだ。そしてそれを、帽子にはさみこんだ。竹節は笑みをみせて、それをみている。それから二人は、草原の踏み跡を歩きはじめた 株)門川書店(2002年初版)
エニシダ 南蛮更紗)
花の名三つ四つ
新村出 新村出 新村出博士は太平洋北航路でビクトリアを訪れた時、海岸に咲き乱れたエニシダを見て、語源追及となり、言海~俚諺集覧~和漢三才図絵~蘭説弁感~和蘭薬選~蛮語箋~和蘭字彙~本草辞典~文禄4年刊の拉丁語辞典~更にはエラスケスの発音附「西英辞典」にまで及び、ポルトガルを起源とするエニスタに到る 東洋文庫81995年初版第1刷)
エニシダ 大空のドロテ 綱渡りのドロテ 瀬名秀明 ルパンものは数年に一回は出てくるが、それだけファンが多くて、ルパンに絡めば内容によらずある程度売れるのかも知れない。ルパンのミックスジュース?・・・・。3部作の1つだが残りが楽しみだいや硬貨ではなくてメダルだった。五フラン硬貨の倍くらいの大きさがある。表には知らない男の横顔が浮き彫りになっている。裏を返すと、金雀枝の文様が中央にあしらわれていた 株)双葉社(2012年第1刷)
エノキ 天涯の蒼 古城辰郎 永瀬隼介 暴力団と癒着した警察からはじき飛ばされた元刑事古城は、興信所を開きながら信頼される警察の正義がとおる街を取り戻すための戦いに命をかける決意を・・・一面に芝生が張られた庭の中央で、ひと抱えはありそうなエノキの樹は青々とした葉を茂らせ、黒の伊玉砂利を敷いたアプローチが洋館の玄関まで続いている 実業の日本社(2004年初版第1刷)
エゾノウワミズザクラ 凍原 十河喜久子 桜木紫乃 終戦で南樺太から1人で逃げ帰って64年、染物工房でゆったりと生活しているキクの周辺で起こった事件で、樺太から戦後時代の悲惨な生活が掘り起こされてゆく・・・・。片桐はその樹を指し、エゾノウワミズザクラですねと言った。佐々木が続く。「食用の実が成ります、染料にするんですけど。赤紫の、いい色が出ます」 小学館(2009年第1刷)
エゾマツ 呪眼連鎖 河内泰造 桂修司 北海道北見刑務所内の受刑者不審死事件の調査を始めた伊崎晋介は、やがて明治中期の北海道開拓に絡んで釧路集治監網走分監時代の道路建設に集められた政治犯を含む囚人の呪いに関係していることに気付くが・・・。泰造と樋川は、午後からはエゾ松の巨木に取りかかることになった。。氷河期から立っているのではないかと思うほどの巨木が、進路を遮っている 宝島社(2008年第1刷)
エビヅル 古事記黄泉の国 イザナミのミコト 古事記 イザナミノミコトがイザナミノミコトに追われて黄泉の国から逃げる時、髪に付けていた黒い木の輪を投げるとエビヅルが生えてなりそれをイザナミノミコトが食べている間に逃げた 角川文庫昭和42年26版武田佑吉訳注
エンジュ 曠野の狼 戒能兵馬 西村寿行 明治21年元警視庁警部戒能兵馬は同僚から殺人の罪に落とされて北海道釧路集治監にに送られ、やがて網走での中央道路建設の囚人隊に配置されるが、脱獄に成功し復讐を誓う、・・・・。旭峠が難関ならここは魔境であった。千古斧鉞の入らざる大原生林が聳えたっていた。巨木の森であった。斧は刃が欠け鋸さえ刃が欠けた。エンジュやナナカマドの巨木がさながら鉄の柱のように挑みかかる囚人の群れを弾き返した 光文社(1989年第1刷)
オオイタドリ 消さずの火
門屋養安天保異聞
門屋養安 橘善男 佐竹藩直営の院内銀山でお抱医師を務める養安は銀山人足達の過酷な作業から来るヨロケ患者の増大を防止しようと上司に進言するが、産出量の確保を優先する銀山奉行の方針で・・・。銀山町は春の芽吹きで燃えていた。路傍に群生するオオイタドリは竹のような節から若葉が枝分かれし、酸っぱいスカンコとして旬の時期を迎えた 三一書房1997年第 1版1刷
オオバコ 風少年 矢野啓太 小檜山博 1937年生まれの作者14歳当時の田舎の農家の子供の生活を描いた、古き懐かしき時代の心暖まる話、遊び、初恋、家の手伝い、先生と学校、勉強など、思い出すなあ・・・。僕らに見せびらかすようにオオバコ、ハコベ、ナズナ、ウドの芽、ドクダミと食べてゆく。タランボ、タケノコ、ミツバ、ヤチブキ、アズキナ、コゴミ、ヨメナも口へ入れている。先生、下痢するさ 株)講談社2009年1刷
オオバコ 山田浅右衛門吉亮 綱淵謙錠 徳川幕府の元禄時代から明治14年まで死罪における斬首を担当した250年にわたる 山田家最後の浅右衛門吉亮の仕事、生活、人胆、刀剣鑑定、雲井竜雄斬首、高橋お伝の斬首、近代国家へ改革の流れの廃刀令・・・・。それを無心に眺めている真吉は、ときどき飼育箱の櫺子の間から車前草の葉を差入れてやった 株)文藝春秋社(1975年1刷)
オミナエシ 償いの椅子 能見亮司 沢木冬吾 銃弾で脊椎を損傷した能見は5年後車椅子で仲間たちの前に現れ、刑事、公安の特殊チーム、裏切りもの達に狙われながら復讐の計画を具体化してゆく。「お前の趣味か」ちゃぶ台の上の空き缶には、オミナエシが黄色い花を咲かせている。男は白い歯を見せた。「この部屋、あんまり陰気すぎるもんで」 角川文庫平成20年13版
オミナエシ 三つ葉葵の剣士 松平上総の介忠敏 新宮正春 名門一八松平の一つの嫡流上総介は柳剛流も心形刀流も極めや講武所剣術指南の使い手だが、師の仇である神道無念流の仏生寺弥助に破れた。江戸や京を舞台に勤王佐幕の浪士達がうごめく中で・・・。上総介は、師匠の首に向かって両手を合わせてから二本の指でそっとはさみとった。羽状をした女郎花の葉だったが、茎を鋭利な刃物でななめに削ぎ落とした跡が残っていた 株)実業の日本社(2000年初版第1刷 )
オモト お玉 森鴎外 (無縁坂のお玉の住まい)竪に竹を打ち附けて、横に二段ばかり細く削った木を渡して、それを蔓で巻いた肘掛け窓がある。その窓の障子が一尺ばかり明いていて、卵の殻を伏せた万年青の鉢が見えている 現代日本文学館1(小林秀雄編集) 森鴎外
オモト 家老脱藩 榎戸与一郎 羽太雄平 若い末席家老の与一郎は酒毒に侵され日夜酒を求める暮らしぶりだが、藩命で向かった江戸でお家騒動に絡んだ事件に巻き込まれて断酒に努めるが・・・・。「鵜殿采女・・・。庭いじりを趣味としており、近所の者が万年青屋敷と」呼んでいた」「ええ、それほど愛培しておれば、むろん万年青の毒についても熟知している 角川書店(平成18年初版)
オラハ 韃靼疾風録 平戸武士
柏庄助
司馬遼太郎 平戸に漂着した韃靼国公女を送り届ける命を受けて庄助は船に乗り出発したが、時は明が時代が終わって清が起こる頃でヌルハチの軍隊に従って中国各地を見聞、漢と夷、中国の歴史を共に探る本・・・・。「あの草はオラハ」と、アビアは教えた。庄助は腹を立てた。「それは単に草という意味じゃないか」「じゃあ枯草」「ヤハ。-」庄助は笑い出した。単に草というだけで、草の名にはならない。女真人は蒙古人のように放牧しないため、草に関心がうすく、いちいち名をつけないのである 中央公論社中公文庫(1996年6版)
カイドウ 斬恨の剣 楯岡研次郎 神室磐司 夏井藩郡奉行の妾腹の子研次郎は世をすねて江戸に出ていたが、病気に倒れた兄に代わって亡父の仇討ちを命じられたが、仇は慕っていた恩師だった。侍の生き方に疑問が生じながらも・・・墓場の片隅に土饅頭があり、その脇に真新しい卒塔婆が建っていた。粗末な墓だった。卒塔婆の脇に海棠が植えられていた。「ここでございます。」住職は足を止めると手を合わせた 株)学研パブリッシング(2010年第1刷)
カエデ 正倉院の秘宝 加納理江子 梓澤要 美術月刊誌「古美術薫風」の編集部員加納理江子は山中の埋もれた古寺に隠れていた、黒作懸沛等佩刀を持った秘仏が正倉院から徐物されたもので、聖武天皇と光明皇后に関わる複雑な政争が絡んでいた事実を解明しようと、カメラマン里見と動き回る中で殺人事件も発生。大団円を迎えて、2人で古寺を訪ねると、遠く吉野の山並が蒼く連なっている。境内はきれいに掃き清められ、打ち水がされていた。本堂の脇の楓の古木は、まだ芽吹いたばかりだった 廣済堂出版(平成11年初版)
カエデ 時の渚 茜沢圭 笹本稜平 元刑事の私立探偵茜沢は余命半年の松浦老人から35年前見知らぬ女に託した赤ん坊捜しを頼まれたが、捜索を続けるうちに3年前の妻子が轢き殺された事件との関連が見えてくる、、またさらに・・・。9月の中旬に入った今は、新緑のベルベットのような山襞のところどころも、色づきかけたサクラやカエデの淡い緋色の葉群が浮き出ている 文芸春秋社(平成13年第1刷)
カエデ 骨ん中 川戸英太郎 荒木源 誠実に懸命に生きようとした英太郎が背負った川戸家の栄光と挫折、二転三転しながら明らかになる真実に翻弄される人間の尊厳とは・・・・。築山のカエデが紅葉の盛りを迎え、サザンカもぼつぼつ花をつけていた。息子一家のいる離れの周辺は建築に合わせて庭も洋風のこしらえだったが・・ 小学館(2003年第1刷)
カエデ 慶次郎縁側日記
蜩(綴じ蓋)
森口慶次郎 北原亜以子 元南町奉行所定町回り同心の森口慶次郎は、仏の慶次郎と呼ばれるほど罪人をつくらない人情同心で、息子に役目を譲って隠居した後もあれこれと事件に関わりあうことに・・・・。慶次郎は庭へ目をやった。笠を目深にかぶった男がちりちりを持ち、隣家との境に植えられている楓の木へ小走りに近づいて行くところだった 新潮文庫(平成17年第4刷)
カーネーション リヴァイアサン号殺人事件 ファンドーリン ボリス・アククーニン 豪華客船リヴァイアサン号にスエズ運河の北の町ポートサイドから乗船した頭脳明晰お洒落なロシアの外交官で名探偵の「ファンドーリン」は、ノリのきいたシャツのボタン穴に真っ赤なカーネーションを挿していた 岩波書店 沼野恭子訳2007年第1刷
カーネーション ゴールデン・フリース 第10世代コンピュータ・イアソン ロバート・J・ソウヤー 47光年の彼方エータ・ケフェイ星系第4惑星コルキスを目指す宇宙船アルゴ号の船内で起こった殺人事件は、全てを把握管理しているはずのコンピュータ「イアソン」が何故予防できなかったのか、時間にずれがある?イアソンに悪意があるのでは?・・・歩いているうちに、アーロンは満開のカーネーションを見つけた。それはダイアナが持ってきた数少ない骨董品の一つである。ブルーマウンテンの花瓶にさしてあった 株)早川書房(1992年)
カキ 女坂 白川倫 円地文子 白川倫は九つになる娘の悦子と女中よしのを伴って久須美の家を訪れて、福島の名産だという干柿や会津塗り等の外にきんにもよしにもそれぞれ似つかわしい反物を土産に持たせた(初花) 中央公論社日本の文学50選円地文子幸田文(昭和41年)
カキ 醒睡笑(上卷) 卷之五上戸二 足利義政 安楽庵策伝 尊氏将軍五世の孫義政公の御時、洛中洛外酒を禁じ給うことあり。万阿弥とて同朋のさぶらいしが、いかがして飲みたるらん。面もどこも赤漆にて塗りたる風情なるを、己は酒をくらうた面ぞやと仰せあれば、焚き火に当たりてござる。傍に呼び嗅いでみると、「隠れがない、熟柿臭いは」と御諚の時、「柿の木を焚き火にあたり参らせた程に」と 角川文庫鈴木棠三校注(昭和41年3刷)
カキ 鵲の橋 宇藤隆次 龍一京 戦後の混乱期の別府、母に捨てられた隆次は進駐軍相手に生活する靖子に養われることになり、やはり娼婦と黒人との間にできて捨てられたシーナをも加えて何とか一緒に暮らしているが、靖子もまた重い結核で死んでしまう・・・・。隆次は柿の実を盗ることに集中していて、柿の木が折れやすいことをすっかり忘れていた。熟れた甘そうな実を取ってやろうと思い、体を支えられるくらいの太い枝に足を踏張った 廣済堂出版(平成10年)
カシ アーサー王宮廷のヤンキー ハイ・ユーマッカマック マーク・トゥウェイン アメリカコネティカット州のハートランド生まれの生粋のヤンキー、ハイ・ユー・マッカマックは、ヘラクレスと綽名される怪力男と口論中に殴られた弾みで気を失ってしまい、紀元528年のイギリスキャメロットのとある樫の木の草の上で目を覚ますところから長い物語が始まる ハヤカワ文庫 小倉多加志訳(昭和51年)
カシ 蒼火 立原周乃介 北重人 元旗本の妾腹で部屋住みの周乃介は無頼の生活で家を離れたが今は立ち直って長屋暮らしをしながら剣の腕を生かして暮らしているが、時に北町同心に頼まれた事件の探索もしている・・・。「周乃介どの、皆に従いなされ」樫の木の下に祖母が立っていた。ひっそりとした声であった。周乃介は脇差しを腰から外し、縁廊下に置いた 株)文藝春秋(2005年第1刷)
カシワ 赤い館の秘密 アントニー・ギリンガム A.A.ミルン ギリンガムをホームズに模した素人探偵コンビが、おしゃべりの中で真相に迫るやり方は読者を引き込んで面白い。「では、荷物をまとめに行きたまえ。それで十時半に、あの枯れた檞の大木の木陰か広間かどこかでで落ち合おう。しゃべってしゃべってしゃべりぬきたいことがあるし、ワトソン君の手を借りなければならんのだ。 創元推理文庫大西伊明訳(1974年34版)
カタクリ 森からの使者 青山伊一 斎藤純 沢内マタギの伊一はマタギの伝統を正しく受け継ぐ若者だが、政治家原敬の家に代々仕えてきたこともあって、陰の護衛役としての役目も果していたが、内務大臣となった原の指示で中国山東半島の地理情勢を調査することに・・・。「カタカゴ」がいっぱいー」そう言って振り返ると、後ろから伊一がやってきた。「お千さんもすっかりこの土地のひとになったな。カタクりをカタカゴとよぶなんて」 徳間書店(2001年初版)
カタクリ 尾根を渡る風
駐在刑事
江波淳史 笹本稜平 元警視庁捜査一課刑事だった淳史は左遷されて奥多摩を管轄する靑梅警察所水根駐在勤務となり、地域の住民と接しながら周辺の山の登山者にまつわる人情事件解決に取り組んでいる・・・。「あれ、カタクリでしょう」純香が声を上げる。立ち止まって指さす先に、まだ蕾に近いかたくりの花がうなだれるように咲いている。開花期を迎えれば、花心を下に紫の花弁ピ篝火のようにそり返る 株)講談社(2013年第一刷)
カタクリ にっかり:名刀奇談かたくり 備州長船長光 東郷隆 越後の上杉弾正少弼景勝の居城春日山城に到着した急使が羽柴筑前守秀吉が国境で待っていると伝えた・・・・。直江山城守が見かねて口を挟み、「それはかたくりでござる」 当地では粉に挽いて水に晒し、食用にいたします、と答えた。「ほほう、これが堅香子(かたくり)か。」 秀吉は、傍らの石田三成にも花を渡した。佐吉三成はこれを見て首をひねった PHP研修所(1996年第一版第一刷)
カツラ 武蔵野少年物語 小宮山恵二 本所次郎 3丁目の夕日と同時代の貧しくもひたむきに生きる少年の話、紙芝居の水あめ塩コンブ、モンテクリスト伯の「待て、そして希望せよ」。新聞配達、行けなかった修学旅行・・・続編を期待したい本・・・。恵二は、水族館出口の小さな広場に聳える桂の大木が好きだった。その梢の上の空の青が日毎に深みを増していく。 (株)ポプラ社(2007年第1刷)
カラスビシャク 早春賦 八王子千人同心の小人風一 山田正紀 武蔵八王子に流れ着いた元武田家臣の兵士団は徳川へ帰属して千人同心なっていたが、城主大久保長安の死を契機に内部争いとなり、父を殺された風一は幼馴染みの林牙、山坊と組んで火蔵、火拾兄弟と戦うことに・・・・。「これはまたいやんべーにハコベが生えてるでねーか。てー、たまげた、カラスビシャクも生えてるぞ」 株)門川書店(平成18年初版)
カラタチ プリズン・トリック 石塚満(村上康祐) 遠藤武文 交通刑務所内で起きた殺人事件は予想外の展開で関係者が広がって二転三転、登城人物も多彩で本の帯には必ず2度読むと書いているが・・・その意味は?脱走しても優希の行方は決まっている。幼稚園の庭の隅に駆けていき、垣根にしているカラタチの木を覗き込む。アゲハチョウの幼虫が気になるらしい (株)講談社(2009年第4刷)
カラマツ 魂の切影 宮田美乃里 森村誠一 歌人宮田美乃里の癌に侵され乳房を切断しながらも存在の証明に裸身をカメラにさらして命を燃やす姿に、なんとしても彼女の内蔵の奥までも裸にした小説にして残したいと作家森村氏が・・・。通りから折れて路地を抜けると、唐松林の中に入った。月光はますます盛んに唐松の梢に弾む (株)光文社(2005年初版1刷)
カワト        コウホネに説明   
カンゾウ 誘拐児 谷口良雄 翔田寛 終戦の混乱期の誘拐事件に遡る昭和36年の殺人事件の捜査員達、死の病床で告げられた母親の告白に振り回される青年と恋人、脅迫事件も絡んで・・・。田んぼや道端からカンゾ、ノビル、スネリヒョウ、ハコベ、ニラといったものを取ってくるんだ。それをお浸しにしたり、雑炊に入れたりするんだっぺ (株)講談社(2008年第1刷)
キキョウ 瑠璃菊の女 藤村新三郎 小笠原京 幕府御使番の旗本三男坊新三郎は屋敷を出て菱川師宣の版下絵師として、気ままな長屋生活をしながら町で起きた事件の謎解きに熱を入れているが・・・。日暮れ近くに、咲き初めた桔梗が夕影に揺れる姿を縁先で描き写していると、六兵衛が息を切って格子をがらりと開けるなり、「旦那ー」と座敷へ上がり込む (株)福武書店(1994年第1刷)
キキョウ 炎を薙ぐ 由比三四郎 池永陽 道場破りの貧乏浪人三四郎は頼まれて通い婚の妻おさとの幼馴染おゆきの用心棒を頼まれるが、裏には、達磨美女に絡む江戸の町を焼き尽くす大きな陰謀があり、秘剣氷柱折りの出番が・・・・三四郎が手にしているのは遅咲きの桔梗の花である。花弁の色は白、寺を出るとき、花の咲いていたのを思い出し、三本手折って持ってきたのだ (株)講談社(2014年第1刷)
キツリフネソウ 白疾風 疾風の三郎 北重人 伊賀で疾風と呼ばれた忍びの三郎は秀吉の軍勢に故郷を滅ぼされた後、武蔵野のはずれの村で田畑を耕しているが、隠し金山騒動に巻き込まれ、風魔忍者や幕府忍者から村を守る戦いに・・・。三郎の頭に、泉に咲いていた花が浮かんだ。「黄色の花が咲いていた。前に名を聞いたのだったがなんと言ったか、花びらが巻いてふわりとした花だ」「黄釣船草」しばらく考えて篠が言った 株)文藝春秋(2007年第一刷)
キャベツ 野性の証明 越智美佐子 森村誠一 越智美佐子がハイキングの途中で踏んだのは軟腐病で捨てられたキャベツだったが、ここに全村住民殺害事件が発生し、そして陸上自衛隊特殊部隊のZ隊員味沢岳史が保険会社員として調査をする事件に展開するが、いつしか軟腐病原菌エルウイニア菌は味沢の脳腫瘍に取り付いていた 角川文庫 昭和53年5版
キャベツ 検挙票 辻本美紀 飯田裕久 交通課から希望して刑事課に異動した大江戸警察署の美紀は先輩たちの指導で・・・、元警視庁捜査1課刑事が書いた警察小説で、捜査に不要なことは一切出てこない。・・・「ハンバーグには付け合わせが?」「たしかキャベツと、それと・・・あとなんかが皿に」「なにが?」「いや急にいわれても」「プチトマトかなにか?」「すいません、そこまでは」 朝日新聞出版(2009年第1刷)
キャラボク よろずのことに気をつけよ 仲澤大輔 川瀬七緒 文化人類学者の仲澤は祖父を殺された18歳の佐倉真由の依頼で、縁の下にあった呪術符の謎を求めて奈良時代に遡る呪禁道の系譜を探ることになるが・・・。「あれはキャラボク様だよ」「変わった名前だな」「んだあ。この村の神木みてえなもんだ。じいちゃんの話では、樹齢千年は経っているらしい」 朝日新聞出版(2009年第1刷)
ギョウギシバ 雪と珊瑚と 山野珊瑚 梨木香歩 旧知のパン屋に雇われるため娘「雪」の保育園を探していた21歳の珊瑚は、張り紙を見てくららに保育を頼むことにして働き始め、やがて総菜屋「オリーブの木陰」を開店・・・・・。それは台所の裏手にある、ちょっとした空き屋だと珊瑚が思っていた場所で、イノコヅチやギョウギシバなどが生い茂っている、つまり雑草地になっているところだった 株)角川書店(2012年第5版)
キランソウ 鳴門秘帖 甲賀世阿弥 吉川英治 虚無僧姿の隠密法月弦之丞が探索する、阿波剣山の山牢にとらわれた幕府隠密甲賀世阿弥が探った阿波藩の秘密を記した血筆隠密書はギランソウ(岐良牟草)の色素で書かれている(和漢三才図絵ではキランソウのことかと書かれている) 講談社(2011年第1刷)
キリ あらくれ お島 徳田秋聲 しっかりもののお島は各地を転々としながら働く中で4人目の夫となる小野田と知り合って洋服屋を始めていたが、小野田の留守中に以前に住んだことのあるS町の男に会いに行こうと汽車に乗った。何のために血眼になって働いてきたか解らないような、孤独の寂しさが、心に沁拡がって来た。桐の花などの咲いている、夏の繁みの濃い平野を横切って、汽車はいつしか山へさしかかっていた。 新潮文庫(S28年第14刷)
キンポウゲ ジンギス汗 テムジン ルネ・グルッセ橘西路訳 ジンギス汗の生~60才の死まで、即位年(不明)から20年余りの間に中国から中央アジアまで征服した草原の子戦いの歴史を正確に辿った・・・。この果てしない平原は、想像するほど殺風景なところではない。草は深く花をちりばめている。鮮やかな黄色のきんぽうげや十字花科の花、葵色のたちじゃこう草、まつむし草、いちはつなどに、ところどころ、純白のはこべ、薄いビロード色のみやまうすゆき草などがまじっている。その色とりどりのさまは、実に目を楽しませてくれる 門川文庫(S47年第五版)
キンミズヒキ 権七太鼓の夜(幽鬼伝) 太鼓軒権七一樹信士 宇江敏勝 熊野詣で宿所として栄えた田辺の近野村道湯川集落は独特の太鼓踊りの里で知られていたが、時代が変わり町への移住が進んで最後の盆踊りを迎え歌い手のお梅と房代は太鼓たたきの権七の墓に向かった・・・。「まあ、房姉、きれいな女郎花やのら、どこでとったんなよ」と青梅はびっぅりしていった。もりあがるようにゆたかな黄色の花である。青梅は手の赤い金水引をもっていた 新宿書房(2012年第1刷)
クサギ 残された心(幽鬼伝) みや子 宇江敏勝 熊野詣で宿所として栄えた田辺の本宮町道の川集落に電気が来たのは昭和38年、集落再編事業で集落が移転したのは昭和48年だった。みや子が遊んだ亥子祭りも虫送り行事も全部消えた・・・。ゼンマイは干しておいて、夏にとれるジャガイモと煮ると美味い。臭木の葉も揉んで、ゆでて干しておき、ことらは秋に大豆と一緒に煮るのである 新宿書房(2012年第1刷)
クス 千年樹 星雅也 萩原浩 関東のある町の高台にある、平安の昔芽吹いたらしい推定千年のクスノキに関わる八つの話があり、第八話で切り倒す役目を担うことになったのが市のあれこれ相談課の係長星雅也 集英社文庫  2010年第1刷
クス 盟約の砦 祖父江しのぶ 藤村耕造 司法修習生のしのぶは弁護士の姉や先輩の指導下、連続猟奇殺人事件の公判進展に関わって事件の真相を追及しようとするが、眞犯人と・・・・。ユリノキの梢近くまで上り詰めると庭の中央にある楠がチェーンソーで切り倒されようとしていつ風景に出くわした。それは無残な光景だった 株角川書店(平成7年初版)
クチナシ 東京城残影 向井信一郎 平山壽三郎 元旗本の信一郎は御一新の戦で函館まで流れた後、東京に戻って置き去りにした妻と母を探し当てるが・・・、江戸から東京に渡る橋を越え兼ねて車屋をしていたが、やがて北海道開拓に決心を・・・。風が運んできたいい薫りにさそわれて庭におりると、八重のくちなしの、ぽってりと厚い白い花びらが二つばかりほころびはじめていた 株講談社(1998年第1 刷)
クヌギ 渡海鳴鳥 三川健吾 管木志雄 鳥類専門の出版社編集員三川は、鳥の渡りの研究者金丸多助と関係者の殺人事件で残されたメモ「ムシクイ」の謎を解くべく花村捜査係長の手助けをして行動するが・・・・。花村はクヌギやナラの葉の間隙をぬって降ってくる黄色い光の玉を、踏みつけるようにして歩いている。「そろそろ、秋ですね」三川は、秋の訪れに沈んでゆく風景に浸るには、まだ若かった 講談社( 2000年第1刷)
クヌギ 片目の猿 三川健吾 道尾秀介 独自の特技を生かした能力で探偵社業界で知られていた三梨幸一郎はある事件の依頼調査で黒いサングラスをかけた冬美と出会ったことで・・・。遺体が発見されたのは、福島県の山中、林道から木々の隙間を5分ほど分け入った場所だった。秋絵はそこで、大きなクヌギの木に結んだロープの先にぶら下がっていたらしい 新潮社( 2008年第7刷)
クマザサ 大阪落ち(昭和四年文藝春秋八月号) 石田三成 直木三十五 天王山の戦いに敗れた石田三成は敗走するが、攻城、野戦に身体を鍛錬してなかった文官上がりで、雨に打たれ、慣れぬ食物と、谷水を摂ったため激しい下痢に罹り、頻繁に松尾山中でクマザサの中へしゃがみに行った 株文芸春秋オール読物昭和63年臨時増刊号 昭和の時代小説50篇
クイ 北冥の白光 最上徳内 乾浩 出羽国楯岡の零細自作農家に生まれた房吉(徳内)は蝦夷地の調査に情熱を注いでアイヌ語を覚えアイヌと胸襟を開いてロシア人から聞いたカムスカ奥地の白光(オーロラ)を見たいと9回の探検を行った。ウルップ島(得撫島)へ上陸、・・・・二十余里ほど行くと高い山が目の前に見えてきた。ポロノツ岬にそびえる阿登佐登岳という山で、山麓から海岸にかけて、栂ににているクイという大木が密集している 新人物往来社( 2003年第1刷)
グミ 白い島 南原啓一 島一春 不知火湾の石灰岩の島の採石場で働く17才の啓一は、親への仕送りをしながら先輩や若い仲間達と貧しいながらも青春の日々を過ごすが、島美人の千穂子と一緒にトロッコを押す作業に張りを感じる・・・・柄をハンマー(鉄槌)のような樫や黒木などにすると、振り上げて石に打撃を加えた途端、強烈な衝撃の反動のために柄が折れてしまう。だから玄能の柄には力性のある茱萸の生木を使用していた 河出書房新社( 1997年第1刷)
クリ 大菩薩峠 机龍之介 中里介山 机龍之介が大菩薩峠で巡礼の老人を切って始まる長い無明の旅の始まりの殺傷場面を猿が栗の木の上から見ていた(第1巻) 角川文庫昭和40年26版第1巻
クルミ 鮎師 菊村敬介 夢枕獏 カメラ店経営の敬介は鮎釣りに心を奪われて釣りで知り合った黒淵と見た50cmを超える大物鮎を釣ることにのめり込んでゆく、~釣師達のの常識外れの行動・・・。山根の淵の水面には、まだ陽光は差してはいない。崖の上から淵にかぶさった、欅や胡桃の細い枝先が、小さく揺れている 講談社( 1998年第1刷)
クロッカス あの日の桜吹雪よりも 川名真由美 高野裕美子 4年前に捨てられた男の優しさを忘れかねている真由美は、高校時代からのライバルと若手実業家の愛を争っていたが、それが破れた時に初めて本当に求めていたものに・・・・。「クロッカスが咲いているわ。もうじき春ね、おばあちゃん。」涼子おばが話しかける。祖母は「おや、止まっちゃったよ」とオルゴールのねじを巻きなおす 毎日新聞社(2007年)
ケシ オブリビオン~忘却 水沢梓 大石直紀 6歳以前の記憶がない梓はルポライターに聞かれたことで、普通でない家族の中の自分に気づいて自分探しを始めるが、本当の父親が殺人犯として逃亡しているらしいことを知り真実を求めるうちに・・・。ポピーに似た白く気品のある花が畑一面に咲き乱れるさまは、それが麻薬の原料だとは思えないほど美しい、草の背丈は高く、百三十センチから百五十センチほどにもなる 角川書店(平成18年初版)
ゲッケイジュ 新編南蛮更紗
雪のサンタマリア
新村出 新村出 大正3年12月3日に発行された創元文庫の新編として発行された広辞苑の編者新村博士の随筆風研究読み物ともいえる本で、語原をさぐる、ろうかんきにもつながる興味深い本・・・・私がこの寺を過ぎた1908年5月5日には、朝は聖マリア、ソプラ、ミネルバ寺にミケルアンヂェロのキリスト像を見た後で、パンテオンの殿堂に入り、その天井の窮隆を仰いで、上から射込む光線の微妙な印象にうたれ、堂内にある巨匠ラファエルの墓碑にぬかずき、堂前の月桂樹にいいしれぬゆかしさを覚えた。 講談社文芸文庫(1996年第一刷)
ケヤキ 烏鷺寺異聞 典薬寮の彦士  篠田達明 武術の好きな典薬寮の彦士は、清少納言と紫式部の囲碁対局五番勝負の年人(立会人)を勤めたことから背後で画策する者達の争いに巻き込まれるが、決着後惚れあったひさごと共に尾張へ旅立つ決心をした。ケヤキの大木がかすかにゆれた。古い葉が数枚、枝をはなれ、渦をまくように落ちてきた。その渦で、三月まえ、賀陽の許にゆき、これからの身の振り方について相談したことが思い出された。 徳間書店(1998年第一刷)
ケヤキ 御神酒徳利 駕籠舁の新太郎 山本一力 両替商杉浦屋の惣領息子だった新太郎は、元相撲取りの尚平と組んで息の合った駕籠舁きをしながら、尚平と想いあっているおゆきとの仲が進まにことにやきもきしているが、材木屋のゆすり事件に奔走するうち・・・。それでもわき腹の痛みは収まらない。新太郎は、欅に寄りかかって目を閉じた。尚平と駕籠をかついさえでいりゃあ 祥伝社(昭和17年第三刷)
コイワザクラ 剣は知っていた 眉殿喬之介  柴田錬三郎 足利管領の末裔に当たる眉殿喬之介は幼くして玉縄城内で育ったが、追われて箱根山中で無名の剣客から教えを受ける。やがて母の死因を作った城主北条氏勝を狙って動くうちに徳川の鮎姫と恋におち・・・・。鮎姫のまわりは、野の花が、いま盛りであった。なかでも、こいわ桜の群落は、ひときわ目立つはなやかな彩であた 新潮文庫(平成6年49刷)
ウホネ
(カワト)
花舫 脇坂平蔵 熊谷敬太郎 明治十年の武州川越、新川岸川の回漕店旭屋の船頭平蔵は溺れかけた女を救い上げたが、その頃江戸から入りこんできた男二人が語る川蒸気船の導入計画に川業者たちは大乗り気で騒ぎ始めていた・・・・。又七も幅広の鑿を手にして川に飛び降りた。水深は胸から首のあたりまである。三人は外輪に絡んだカワトと水草の茎を一本一本切り離した NHK出版(2014年第1刷)
コカノキ 朝倉恭介
Cの福音・完結篇
朝倉恭介 楡周平 大藪春彦と北方謙三が一晩飲み明かして2日酔いの中で一緒になって書いたような冒険小説との印象が強い。まさにエンターテインメント、迫力があり一気に読ませる面白い本・・・・。密生した緑の葉を茂らせた無数の低木が、地面にへばりついているのが見える。上空から見ると日本の茶畑を思わせるような光景fだ。「ここに繁っている殆どの木がコカだ」言われる間もなく、雅彦はファインダーを覗きシャッターを切り始めた 株)宝島社(2001年第1刷)
コガネギク 柔らかな頬 カスミ 桐野夏生 北海道の片田舎から高校卒業式の夜、自由な生活を目指して家出したカスミは東京へ出て小さな印刷会社の社長の妻となったが、石山と知り合い子供を夫も捨てていいほど溺れる中で長女有香が居なくなる。主人公は?、心に恐ろしい襞を抱えた人間達の・・・・。海風でコガネギクが揺れる様。低く垂れ込めた濃い雲の色。二階建ての古い校舎の裏を登ってゆくと、頂上にはペット霊園があった 講談社(19997年第7刷)
コケモモ 老人と狩りをしない猟犬物語 老猟師仙造 西村寿行 南アルプスの猟師の仙造は、息子の嫁と大事な猟犬も殺し、孫をも傷付けた凶暴で狡猾な巨熊を倒すために衰えた体に鞭打って山中に住み、偶然出会った子犬の紀州犬「隼」の成長を待ち望むが・・・・。森と畑の堺の竜脳菊が一ヶ所だけ荒々しく揺れ動くのがみ、老人は目を擦った。兎かと思ったが、動きが激しすぎた。出てきたのは隼であった 角川文庫(昭和61年7刷)
コシアブラ 皆白(山背郷) マタギの惣吉 熊谷達也 馴染みの富山の薬売り喜一の依頼で、獲って葉ならないとされるミナジロ(皆白)の熊を獲ることを決意した惣吉は喜一を連れて山に入る・・・。さっそく惣吉は、手頃な枝振りのコシアブラを見つけて鉈をふるいはじめた。「何に使うんですか」と尋ねる喜一に、手は動かしながら説明する 集英社(2002年第1刷)
コショウボク 高い窓 フィリップ・マーロウ レイモンド・チャンドラー(清水俊二訳) パサデナの金持ち未亡人の依頼で盗まれた金貨を取り戻す活動を始めたが、関係者の殺人現場に遭遇する事件が続く中で、マーロウは事件の蔭に潜む大きな秘密を探りてるが・・・・。クーペはずっとついてきた。私は車を巨大なこしょうぼくの並木がつづいている道に乗り入れ、いきなりUターンして、歩道にくっつけて停めた ハヤカワ文庫(1993年第10刷)
コスモス 氷上のパッサカリア 大道寺勉 海野碧 裏稼業を持つ自動車1級整備士の勉、取り柄はないが相性が合って田舎の高原で一緒に暮らしていた菜津の死、裏稼業仲間の出現と抗争、また東京へ・・・」菜津と一緒に暮らした三年間の、思い出に満ちた居間兼寝室を少しの間眺めた後、私は廊下へ降りて庭に出て、降霜に萎びて地面に倒れかけているコスモスの群落まで近寄り、かろうじて残っていた濃いピンクの花を数輪摘んだ 光文社(2007年初版1刷)
コデマリ 無用庵隠居修行 日向半兵衛 海老沢泰久 直参旗本300俵大番士の半兵衛は2年前に妻を亡くしたが屋敷で用人の勝屋と暮らしていたが、思う所あって養子を迎えて家督を譲り気ままな隠居修行を始めたが、様々な事件に遭遇することになって・・・。庭先で、小手毬の白い花が春の風に吹かれて、ひとひらふたひらと舞い上がっていった 株)文芸春秋(2008年第一刷)
コバイケイソウ 吼える駐在 日向半兵衛 飯塚訓 生涯駐在勤務を誓ってい群馬県警の里見雄大巡査はダム建設の須田貝駐在所を皮切りに県境の辺鄙な駐在所を志願して回る中で、様々な地域の純朴な村人達と交流を図る・・・。雪解けの中からやっと芽顔をもたげたコバイケイ草を見ると、こりゃあ、花も咲かねえうちに雪が来て終わりかな、と眺めるだむさ 株)文芸春秋(2005年第一刷)
コブシ 一枚摺屋 文太郎 城野隆 一枚摺りの瓦版屋文太郎は仲間の協力や幼馴染で相愛の芸者糸吉の助けで長州征伐の幕府軍の負け戦振り等を世に知らしめながら、親父が殺された真相を調べていたが・・・。2月に入ったのもあるが、大坂はやはり京より暖かい。隠居所の庭に咲いたこぶしの花を見つめながら、文太郎は風のない西日のたまる縁側でひじ枕をきめこんでいた 株)文芸春秋(2005年第一刷)
コマクサ 雪形 縣信彦 三島英子 乳腺専門の外科医信彦は妻えりの乳がんを乳房切除手術で治療するが、半年後妻と子が自動車事故で死亡しその原因について心に深い傷を負う。転移確立と乳房に対する女性の拘りへの葛藤。麻里子は結婚して五年目に生まれた。コマクサのコマとリエのり。待ち望んだ娘につけた名前である。「常念坊にあえるね・・・」それも、もう実現することはないというのだ 小学館(1995年初版1刷)
コマツナギ QED
百人一首の呪い
桑原崇 高田崇史 百人一首のマニアの辣腕事業家が殺された事件で知識を発揮することになった博覧強記の薬剤師の崇は、藤原定家が選んだ百人一首と百人秀歌の配列の秘密から事件の真相に気づく・・・。『駒繋』と言います。「こまつざき・・・?」「いいえ」マスターは笑った。「駒繋─です。駒─つまり馬を繋ぐことができるほどに根茎が丈夫なところから、この名が付けられました・・・ 講談社文庫(2004年第八刷)
ゴムノキ 渚にて メアリー ネビル・シュート 第3次世界戦争の核爆発でただ死ぬ時を待っているメアリーと夫のホームズは柊みたいな樹を切って5年後に花が咲くゴムの木を植える 草原推理文庫井上勇訳1987年42版
コメツガ 脳男 鷲谷真梨子 首藤瓜於 爆弾犯の共犯容疑で捕まった男の精神鑑定を引き受けた真梨子は、容疑者の名前と過去を洗い出すために家庭教育を担当していたらしい男柄を訪ねて北アルプスの山小屋を訪ねた・・・。真梨子は空き地に車を入れ、エンジンを切り、車をおりた。ブナやコメツガなどの木立を抜けると雪原が広がっていた。足跡ひとつついていない雪原の向こうには、 講談社文庫(2009年第18刷)
コンロンソウ 抜け参り薬草旅 瀬戸屋の小僧洋吉 出久根達郎 未だに直らない寝小便の御利益を期待してお陰参りに出た16歳の洋吉は道中で知り合った薬草取りの薬屋庄兵衛について東海道を西へ向かう中、様々な事件に遭遇・・・。二人は両手に、二尺(約60センチ)ほどの丈のぎざぎざした葉っぱの草を持っている。「いやさ、これは薬草でなく、食べる草。おとしさんが教えてくれと言うからね。」「崑崙草っていうんですって。これ?」としが洋吉の目の前に突き出した 河出書房新社(2008年初版1刷)
サギソウ クローズド・ノート 堀井香恵 雫井脩介 大学生の香恵はマンドリンクラブの部活と文具屋のアルバイトを氏ながら友人達と気楽な学生生活を過ごしているが、入居したマンションに残っていたノートを読み始めた時から大人への階段を歩き始めることに・・・。私の部屋の窓の柵には、鷺草の小鉢が三つほどぶら下がっている。お母さんが引っ越しの時手伝いに来たときに、どさくさに紛れておいていったものだ。実家で育てていたやつが増え過ぎたので持ってきたらしい 門川文庫 (平成20年4刷)
サクラ 神聖喜劇 陸軍2等兵東堂太郎 大西巨人 1942年補充兵役入隊兵となった九大中退の主人公東堂太郎達の第三内務班第三班四名は営庭での三個班混合訓練を受けていたが、午前中の一度の中休に東堂は戦時被服庫前の一本の桜の根方に腰を下ろして「ほまれ」に火をつけた(第一部混沌の章) 光文堂カッパノベルス神聖喜劇第一部(昭和43年初版)
サクラ 病院坂の首縊りの家(金田一耕助最後の事件) 金田一耕助 横溝正史 幾多の難事件を解決した名探偵金田一耕助が発生から20年後に解決した病院坂の凄惨な生首風鈴殺人事件は忌わしい因縁を遡って終焉を迎えたが、40年前アメリカから帰り、ひょっこり岡山県に現れて本陣殺人事件を解決して以来36年、この事件を最後として、忽然として第二の故郷ともいうべきアメリカへ旅立った。よれよれの袴にもじゃもじゃ頭、金田一耕助は鼠色の古ぼけた二重廻しを着て、桜の木でできたステッキをついている 角川書店(昭和53年七版)
サクラ 蚊トンボ白髭の冒険 倉沢達夫 藤原伊織 中距離競技の選手を、諦めて水道工事の配管工をしている達夫は、突然脳内に神経細胞を操る蚊トンボを住まわせることになり、行きがかり上、八木沼真紀を助ける行動を迫られる。親方は「二十八か・・・。いい時代だ。このご時世なら、ま、桜にたとえて七部咲きって歳ごろですかね」「ふうん。じゃ、満開になるのはいつごろなの」 講談社(2002年第1刷)
サクラ 女たちの江戸開城 土御門藤子 植松三十里 鳥羽伏見の負け戦て江戸に逃げ帰った15代将軍慶喜の願う徳川家の存続を嘆願するため、和宮の名代として上臈藤子は官軍が進行して混乱する東海道を京に向かうが・・・。「このような美しい日本で、日本人同士がいくさを起こそうなどと、愚かなことや」実梁は藤子を振り返った。「桜を愛でる余裕もなかったとは、そなた、ほんまに、えらい思いをしたのじゃな」もう一度富士山を見上げた 双葉社(2006年第1刷)
サクラ 桜下の決闘(吉岡清三郎貸腕帳 吉岡清三郎 犬飼六岐 京の吉岡憲法の末裔清三郎は習い覚えた剣を生かした貸腕屋で暮らしている江戸で、道場破りをした円明流木頭道場の後継者から試合を申し込まれたが、・・・・。武蔵円明流宗家、木頭貴之助は書状で告げてきたとおり、桜の下で待っていた。一門の総勢は、やはり三十人前後というところか 講談社(2009年第1刷)
サクラ その後のワトソン博士 ワトソン博士 東健而 日本版のシャーロック・ホームズのパロデイ贋作集、タイトルは「シャーロック・ホームズの災難」、まさにシャーロキアンにとっては喜びであり災難といえる柴錬等豪華執筆陣による20編中の一つ・・・・。「おい、ワトソン君。君は僕の所持品を持ってきているはずだ。僕の部屋着は、僕のバイオリンは、僕の桜の木のパイプは、僕のピストルはどこへやったね? 評論社(2007年第1刷)
サクラソウ 深川澪通り木戸番小屋
新地橋
お捨て 北原亜以子 深川澪通りの木戸番小屋の笑兵衛とお捨て夫婦はささやかな木戸番として町の人々の中で暮らしながら喜びや悲しみを共有し・・・・。昼のご飯だよと呼ばれて家へ帰って行った子供達の声は、まだ中島町の澪通りへ戻ってこない。先刻まで、しきりに聞こえていた桜草売りの声も遠くなった 講談社(1995年第1刷)
サクラソウ 囲碁小町嫁入り七番勝負 薬種商娘
おりつ
犬飼六岐 囲碁小町の異名を取る薬種商桔梗屋の娘りつは、行きがかり上負けたら御殿医筧瑞伯の跡取りの嫁になる約束で瑞伯が選んだ相手と七番勝負をすることになった・・・。幼馴染みのおいちに誘われて、おりつは桜草狩りにきた。巣鴨から一里ほど北にある野新田野原である。父は気軽に許したが、友達と遠出をするのははじめてになる 講談社(2011年第1刷)
サクラソウ なでしこ御用帖 町医者洞雄の娘 宇江佐真理 奉行所の与力を叔父に持つお紺は父の手伝いをしながら切られ権佐の異名をとったほどの下っ引きだった祖父の血を引いて捕物に走り回る娘・・・樹の根方のは桜草が植わっていた。花屋を生業にしていた小八だったから、養生所に入所する時にひそかに種を持参して植えたらしい。結局、小八は桜草の花を見ることはなかったのだ 株)集英社(2009年第1刷)
ザクロ 恩寵 大島風里 ほしおさなえ 題名も、内容も飛び過ぎていて消化不良のまま文字通り飛ばし読んだのが正直なとこ、出入り口の無い建築?・・・。家に帰って、ノムさんからもらったザクロの袋を開いた。ザクロは割れて、赤い実が出ていた。指で一粒つまんで。口にいれた。酸っぱくて。しょっぱい味と、わずかな水分が舌に吸い込まれる。ふう、と息をついた 角川書店(平成20年初版)
サザンカ 探偵の冬あるいはシャーロック・ホームズの絶望 栗田仁吉(シャーロック・ホームズ) 岩崎正吾 名探偵ホームズの熱烈なファンはホームズに関する本を書く宿命を背負うがこの本は本歌取りの事件名を解く楽しみがおまけについている。「花瓶の破片、水、生けてあった花が、仰向けに倒れたボデイガードの上にどっとふりそそいだ。スキンヘッドが水をかぶり、そこにサザンカの赤い花びらが張り付いた」 東京創元社(2000年初版)
サツマイモ 思い出探偵 島崎トモヨ 鏑木蓮 思い出探偵社の依頼人トモヨの希望は余命僅かになった今、六十余年前の終戦後、闇市で食料を調達していた14才のトモヨを助けてくれた名も知らぬ青年に会ってお礼を言うことだった・・・。梅田ヘ向かう荷は、大きめのドンゴロス(麻袋)六袋のサツマイモと葉ネギなどで、帰りは少々の米と調味料だった。 PHP研究所社(2009年第1版第1刷)
サラシナショウマ 幸福の遺伝子 南田源蔵 早野梓 青木ヶ原の樹海近くで民宿を営む源蔵は樹海の持つ力と神秘を共に感じている、世間と隔絶して三十年も経つ友人の多門の過去を知る過程で、脳の働きと環境の力、幸福の遺伝子の関係を・・・。源蔵は走った。多門が追った。多門は、走りながら、道端の草花を摘んでいた。小さな白い花が、穂のようになって咲くサラシナショウマだった 新潮社(1998年)
サルスベリ 寒影 倉沢結之介 荒崎一海 長岡藩七万四千石の勘定方倉沢結之介は新婚の妻菊野を藩主に召し出され、家老達から表沙汰にしないために離縁状を書くよう圧力をかけられ、武士の意地と筋を通して拒否を続け孤立して行く発端となるのは、野駆けの帰りに殿が突然結之介の屋敷に立ち寄ったこと。結之介は、うなづき、足早に玄関へ向かった。紅の冠をかぶせたごとく花が咲きほこる百日紅の木が、門の横にある。その枝に、馬がつないであった。 (株)文芸春秋(2008年第1刷)
サルスベリ 落ちた花は西へ奔る 豊臣秀頼 岡田秀文 真田幸村の命を受けて大阪城落城の後、家康や島津家久らの企みに操られているとも知らず秀頼一行を守って真田大助らは、西の方へと逃れてゆくが・・・・。小姓たちを持ち場につかせたあと、家久はゆっくりと茶を喫した。襖を開けさせ、庭の百日紅の花にじっと目を注いだ 光文社(2004年初版第一刷)
サルスベリ 竹に紅虎 香丹の婿昇蔵 下川博 長崎の商家の息子昇蔵は二胡の達人だが放蕩を続ける内に見込まれて有田焼の色絵師香丹の婿になる。明王朝の滅亡に伴う混乱に揺れる景徳鎮へ行くことになるが・・・・。二十名に達するかという工房の一団は、近所に咲いている百日紅の写生に出掛けている。木肌が滑々しているために猿も登れぬという伝説を持つ木に咲き、サルスベリとも呼ばれるこの花は 株)講談社(2012年第一刷)
サンゴソウ さらば荒野 川中良一 北方謙三 ブラデイドール一冊目、北方謙三の本は男ならどれも好きになると思うが、女性ファンも多いらしい。確かにキリと自立した女性が主人公の本も多いので想像以上に女性のハートに訴えかけるのかも知れない。傷や痛みに強いところは作者に実体験があるのかなあ・・・・湿原はまだ続いていた。「何だろう」「え?」「水草が赤くなってる」「知らねえのか、サンゴ草だよ。あれが赤くなると北海道はもうすぐ冬だ」 門川書店門川文庫(平成2年第18版)
サンザシ サンザシの丘 城島清澄 緒川怜 警視庁捜査一課の倉沢刑事は、女性殺人事件の犯人を追って幼い中国残留孤児の生きてきた実状を追跡することになる。私は日本人であって、日本人でない。それどころか何者でもない・・・。「ああ、サンザイのことですね。春には白い花を咲かせ、秋になると赤い実をつける。あれだ。「ええ、日本語ではサンザシというんですか・・・?中国の東北部地方には、その木がたくさん生えています 株)光文社(2010年初版)
サンパギータ 茉莉花 水谷優司 川中大樹 フィリピンの留学生シェリーをホームステイさせている尽誠会巴組の組長優司は幼馴染み武雄が殺された謎を追う内にフィリピンの子供誘拐事件に絡む臓器移植ルートの存在に気づき・・・。黙祷を解いたとき、白い花から芳香剤のような香りが漂ってくるのに気づいた。しゃがんだまま見つめていると、高山社長が「サンパギータです」と花の名を口にした 光文社(2012年初版第一刷)
シイノキ 異形の者 こぶ 柳蒼一郎 思わず目を閉じたこぶは、閉じきれた左目の奥に玉子の姿を焼き付けると、桜風にまぎれて動き出し、裏門を見下ろす椎の木のは陰に身を潜めた。この門こそが、玉子と外界を遮蔽するものである。猿飛佐助が真田幸村と会うまでの外伝とでもいうべき物語であるが、このシイノキはスダジイではなかろうか 株式会社学習研究社(2001年第一刷)
シキビ 氷の秒針 原村俊介 大門剛明 殺人事件の時効が廃止になる時期を迎えて2件の事件に絡んで動く遺族の怨念が新たな悲劇を引き起こす中で。妻を殺された俊介の心は揺れる・・・。俊介は立ち上がると、準備しておいたしきびを手に取った。もう午後八時近い。遅くなってしまったが、今から墓参りだ。懐中時計をしまうと、俊介は思う。薫との間にある壁はそれだけではない 株)双葉社(2012年第一刷))
シキミ 銭形平次捕物控
鉄砲の音
銭形平次 野村胡堂 昭和26年から26年も続いた銭形平次捕物シリーズ383編の最終話で、訳のある真犯人を見逃すことで事件を片付け、女房のお静が待つ明神下の家へ帰るところで終わっている・・・。ところがお糸という子は、妙に木の実が好きで、樒の実やら青いぐみやら、秋になれば鳥かぶとの花やら、大変なものを集めておもちゃにする相ですよ 文芸春秋社オール読昭和の時代小説50選(昭和63年))
シキミ 仮面疾風 能楽師浩次郎 大久保智弘 秀吉の聚楽第開き祝能で師金春大夫安照の後見を務めた浩次郎は天下に名高い3面の捜索を明命じられ、飛びの道に隠れた砕風動の流れを汲む陰の者たちに出会う・・・。樒の樹が密生する苔むした古塚でありながら、このあたり一帯はあたかも聖地であるかのように清浄に保たれていた。さらに意外なことに、式部塚を掃き清めていたのは、百地砦の絶対的な支配者、百地三太夫だったのだ 株)講談社(2000年第1刷 )
シダレヤナギ たけくらべ 美登利 樋口一葉 美登利や正太の暮らす吉原近くの長屋の町の外にある大門の見返りヤナギ 角川文庫 (昭和35年23刷)
シダレヤナギ 吉原手引草 花魁葛城 松井今朝子 全盛を誇っていた吉原の花魁葛城が忽然と姿を消した謎を追って、吉原の関係者の話を聞き取る形で戯作者十返舎一九の弟子の又弟子三返舎某が真実を追求する話。藤色の紫小袖に仙台平の袴をはいた若侍は番所の大門の外へ出てからも、たいした度胸で堂々と道の真ん中を歩いた。衣紋坂をゆっくりと登り、見返り柳の手前でうしろを振り向くほどの余裕だ。 幻灯舎2007年第6刷)
シダレヤナギ 小説 防人の歌 物部道足 千早耿一郎 天平勝宝七年、物部道足は常陸の国から防人として召し出され、従五位下兵部省民部少輔・大伴宿祢家持に差し出す歌を2種命じた上司大友雁人と共に那津(博多)に着いたのは常陸の国府を出て58日目のことだった。赴任地壱岐に赴く途中で、取り立てた租を掠め取る地方役人の裏切りで反乱の罪を着せられ新羅に逃げることになったが。道足が問うと雁人が答えた。「このとおりだ」楊の枝を撓めて結んでいた。「ああ有馬皇子の・・」「私も結びます」 壱岐対馬伝ひ新羅へ吾が行けば真名女は呼ばふはや帰り来ぬ 木耳社(1997年第1刷)
シデ ニコライ盗撮 志村悠之介 風野真知雄 西郷隆盛の写真を撮ったこともある写真師の悠之介は
来日中のロシア皇太子ニコライの警護に絡む事件で西郷従道や伊藤貴族院議長に頼まれた写真撮影で大きな陰謀の蔭を感じて・・・・。悠之介はひそんだわきにも、枝の柔らかなシデの木があった。その新緑をいっぱいつけたシデの枝が、悠之介の写真機のところにゆっくりと覆い被さってきた。枝が被さるのと、シャッターを押したのと、同時だった
新人物往来社(2001年第1刷)
シナノキ ルパン最後の恋 アルセーヌ・ルパン モーリス・ルブラン 長らく封印されてきてようやく発表された正統アルセーヌ・ルパンシリーズの最終作で、9月に初版、11月に9版を重ねた本で、この際作品の質は度外視してファンは購入したのでは・・・。彼女はサヴォリーを連れて、セーヌ川に沿った美しいシナノキの小道へ入った。静かで穏やかなひとときだった 早川書房 (2012年9月9版)
シャクナゲ シャーロック・ホームズの思い出 シャーロック・ホームズ コナン・ドイル 海軍条約文書事件で紛失文書捜索の依頼を受けたホームズは状況を聞いた結果の推理により、見当をつけた犯人を現場で待ち伏せるため、灌木の間を縫うようにして這い進んでようやくみ病室の窓の前の石南の植え込みまで辿り着いた 新潮文庫 延原謙訳 昭和32年14刷
シャクヤク シーボルトの眼 出島絵師
川原慶賀
ねじめ正一 出島絵師の慶賀は敬愛するシーボルトから、シーボルトが観るもの聞くものを写す眼になれと言われてその才能を発揮するが、やがて事件に巻き込まれ・・・。「腑分ヶ図、違う。オ前、コノヨウニ、シャクヤクノ絵、描く。本物のシャクヤク。描く」シーボルトの視線が慶賀をひたと見据えていた。強い視線であった 株)集英社2004年第1刷
シャリンバイ 二夜の月 銑次郎 千野隆司 庭仕事で調べた大店に忍び込む盗賊を裏稼業にしている腕の良い植木職人銑次郎は、、惚れた女のために最後の仕事にと目明しを出し抜いて忍び込んだが・・・・。触れ合う葉音を聞いていると、銑次郎はそれがどの樹木の枝からしてくるのかが分かった。土蔵の脇から母屋にかけて、目隠しのために寄せ植えにした車輪梅の葉音であった 双葉社 (1997年第1刷)
ジャガイモ おしまいのページで 森亮 丸田才一 野菜サラダの詩という随筆コラム集の中の一つで、会ったことはないが知人の先生で評判の訳詩人が出した詩集の中の「野菜サラダを食べたあとで」を紹介している・・・下宿先のさびしいサラダです。縦に真ふたつに切られた卵は日本画の朧。馬鈴薯に斑にまじった薄桃色のソーセージ。その細切れの一片を取り出して嘗めると・・・ 文芸春秋社(1979年3刷)
シュウカイドウ 眠狂四郎無頼控 狂四郎の母 柴田錬三郎 秋海棠は、無頼の浪人眠狂四郎の亡き母の一番好きだった花であった。母は病が重くなった時、「わたしの墓の前に、秋海棠を植えてくださらぬか」と、狂四郎にたのんだのであった。十余年を経て、その約束をはたすわけであった。(一-嵐と宿敵) 新潮文庫(昭和37年6刷)
シュロ 女ざかり 南弓子 丸谷才一 六大新聞の一つ新日報社の論説委員南弓子が担当して書いた社説が原因で持ち上がった配置転換の話を葬り去るため、伝をたどって総理大臣に会いに官邸に行くことになったが、、秘書の案内で歩く深夜の官邸敷地の細い道は、手入れはしてない感じでいろいろの低木が雑然と植えてあり、どうしたわけか、ところどころに棕櫚もまじる 文芸春秋社70周年記念書下し文芸作品(1993年第2刷)
シュロ 同居人求む アリ・ジョーンズ ジョン・ラッツ アリは家賃節減のため新聞広告で同居人を求め、気弱そうな若い女性とアパートを共有することにしたが、自分自身が盗み取られて行くことに気付いた時には恋人も失い殺人犯人に、サイコスリラー・・・。ロビーは狭くて薄暗く、埃をかぶったシュロの植木鉢が置いてあり、床のタイルはところどころ剥げている。年老いた男が二人すり切れたアームチェアーにだらしなく座っていて、好奇の目をアリに向けた 早川文庫(1992年第11刷)
シュンラン キサキの大仏 光明皇后安宿 奥山景布子 聖武天皇の妃となった藤原不比等の子安宿は、藤原家の誇りと天皇を支える責任に苦悩しながら夫の夢実現に権力の全てを注いで大仏開眼を急ぐ、新薬師寺建立もそのために必要・・・。侍女が春蘭の籠を枕元に飾った。二輪の花が首と安宿に見える。日差しが淡い萌木色を透きとおらせた。「二人で行くのよ。ずっと」 中央公論社(2012年初版)
ショウズク さらば愛しき女よ フィリップ・マーロウ レイモンド・チャンドラー(清水俊二訳) 出所後の大鹿マロイの殺人現場に居合わせたマーロウは、盗まれた首飾りをギャングから買い戻す仕事を頼まれたが失敗し同行者を殺される羽目に、マーロウの苦境は続くが・・・・。私たちは飲んだ。彼はしょうづくの実をいくつか割り、私たちはお互いの眼を見つめながら、黙ってその実を噛んだ。「うまい」と彼はいった。彼は再び。グラスをみたした。こんどは私がしょうづくの実を割る番だった (株)早川書房(1993年42刷)
ショウブ 蠢く吉原 お七こと司 辻井南青紀 人買いに売られた平太とお七は十余年後、江戸の奉納相撲の強力として、吉原を背負って立つほどの花魁司として再開するが、豪商になった人買い弥平は司を身請けする。二人は手に手を取って彷徨ったあげく心中・・・・襖を開いた途端、座敷一杯に絢爛たる襖絵が広がった。窓からの陽光を浴びて眩しい白木の床の間には、一輪で町人の一家が半年暮らせるような高価な菖蒲が活けられている (株)幻冬社(2011年1刷)
シラカシ 白樫の樹の下で 村上登 青山文平 不釈流佐和山道場で師範代を務める小普請組の村上登は寺島流錬尚館道場に来た道場破りへの助太刀代と提灯張の内職に精を出しているが、幼友達の死や名刀一竿子忠綱の因縁から・・・。「新大橋を渡ってお籾蔵沿いの路へ分け入ると、もう佐和山道場のある堀越河内守の屋敷に聳える白樫の大木が目に入ってくる」 株)文藝春秋社(2011年第一刷)
シラカバ 智恵子飛ぶ 長沼智恵子 津村節子 高村光太郎を想う長沼智恵子は絵を描きに行った光太郎を追って上高地に向かい松本から七里の道を歩いて迎えに出た光太郎に出会い、二人で徳本峠の頂上を目指した。やがて頭上が明るくなった。足もとは一面の笹で、白樺が数本立っていた。さあ、「頂上だ」智恵子は光太郎と並んで、徳本峠の頂上に立った 講談社(1997年第一刷)
シラフジ 遠い旋律、草原の光 長沼智恵子 倉坂鬼一郎 若き美貌の女性指揮者と難病でサナトリュームにいる青年画家が音と色を共有できる心のハーモニーで繋がる恋愛小説と思って読んだが、カリンニコフ、作者不詳のバラード・・・。白藤や揺りやみしかばうすみどり ややあって、見崎はだしぬけに芝不器男の代表句を唱えた 早川書房(2009年初版)
シラン 霊岸島捕物控
大川端二人舟
お妙 千野隆司 岡っ引き五郎蔵の娘妙は芝車町の大火事に焼け出されて円覚寺に避難した人々を救う医師道也の手助けをする内、母親を殺した泥棒の一味らしい者に気づいて独自に探索を始めるが・・・。お妙も、その艶やかさに息を飲んで見とれた。紫蘭は、球茎が「「白及」という生薬になる。止血剤として、これまでも多用してきた。白及末を油で練って、火傷の体に塗ったものである 学習研究社(2002年第一刷)
シレトコスミレ 集魚灯の海 五味川元気 木谷恭介 羅臼の小さなバー「チェリー」のマネージャー元気は恋人津具美が殺された理由を求めて東京へ行く。津具美の出生の秘密に関係する人々に話を聞き回る内に、飛び切りの美人でありながら飛び込みでバーのアルバイトに志願してきた水恵が・・・・。一糸まとわぬ全裸だ。枕元には水を入れた湯飲み茶椀がおかれ、シレトコスミレの花が一輪、挿してあった ライブ出版(1994年第一刷)
スイカ 囮同心
深川醜聞始末
深見十兵衛 稲葉稔 北町隠密回り同心十兵衛は直接奉行からの命令を受け、火付けの事件の洗い直しを始めるが、関係者が続けて殺されたり闇討ちにあうなど・・・・。十兵衛は閉じられた口書きを一枚、一枚と繰って行く。その間に西瓜とぐい呑みにつがれた酒が運ばれてきた。十兵衛は酒に口をつけ、西瓜を肴にし、口書きに目を通してゆく 株)講談社(2010年第1刷)
スイカズラ レイルウェイズ
Railways
愛を伝えられない大人たちへ
滝島佐和子 大石直紀 仕事一筋の鉄道運転士滝島徹は1か月後に迎える定年を前に、看護師の仕事再開を告げた妻佐和子を家から追い出してしまうが・・・。信子の手が、上着のポケットに伸びた。その手に握られたものを見て、佐和子は目を見開いた。透明なビニール袋の中に、スイカズラの葉が入っていた。「このスイカズラがよく効くがいちゃ」 小学館文庫(2011年1刷)
スイセン つばくろ越え(彼岸の旅) 半助 志水辰夫 突然国へ帰ったらしい飛脚問屋蓬莱屋の半助を捜しため陸州龍田村へ旅立った主人勝五郎は、本名半次郎を隠して40年を江戸で暮らしていた半助の悲しい過去を追うことになる・・・。代って花生けに、白い水仙が一輪挿してあった。石垣のところで咲いていた花だ。墓を見上げた。こむつかしい戒名だ。横へ回った。俗名きくとあった。四十七歳 新潮社(2009年)
スイバ 伊奈半十郎上水記 伊奈半十郎 松浦節 家康入府以来関東郡代として河川の洪水対策に尽力してきた伊奈家は民百姓の安寧が第一と心得て代々の領主が努めてきたが時の為政者との対立も深まって・・・。お春は右手に持った酸葉(すかんぽ)を銜え、ちゅうちゅうと吸いながら、半十郎たちの方を恐ろしいものを見るように上目づかいに見る 新人物往来社(2002年第一刷)
スギ 涅槃の雪 北町与力
高安門佑
西条奈加
北町奉行所与力の門佑は奉行の遠山から市井の出来事を耳に入れる役目を仰せつかるほどの男だが遊女お卯乃を家に引き取ったことから心が揺れだした。時は水野の天保の改革の最中・・・。まるで年輪のみっしりと詰まった、杉の木のようだ。遠山は、いつか門佑の前で、矢部をそうなぞらえた。天に向かってまっすぐにそびえ立ち、どこから斧を入れようとも歯が立たない 株)光文社(2011年初版1刷)
スギ 陽炎の門 黒島藩執政
桐谷主水
葉室麟 下士上がりながら若くして黒島藩執政の仲間入りした主水は、冷徹非情を遂行して「つららの主水」と言われるほど精励恪勤して出世を果たしたが、次々に起きる事件で窮地に・・・・。道沿いに灌木が茂るあたりの少し先の、小高い丘の上に大きな杉が天を衝くように立っている。行徳の一本杉と呼ばれ、この木が村の入り口の目印になっている 講談社文庫(2016年第2刷)
スギゴケ 恩寵 大島風里 ほしおさなえ 仕事に意義を持てなくなった風里は退職して公園の向こうの古い一軒家を借り、近くの植物園で植物の標本づくりのアルバイトを始めた。好きな植物の刺繍をしながら新しい友人が増える中で・・・。初春の木の芽。みずみずしい新緑。秋に色づく葉。四季折々の花。さやさやと揺れる竹。地面を覆うスギゴケ。住んでいる私でも、季節が変わるたびにはじめて見るように驚く 株)角川書店社(平成20年初版)
ススキ 那珂川青春記 大山茂 森 詠 県立黒磯北高二年の茂は気の合う友人と男になるためにバンカラをを気取って高下駄で通学しながら若いエネルギーをラグビーやツッパリに費やしているが、クラスの美少女杉原かおりに恋心を抱いている。茂るの好きな帰り路の雑木林の終る付近には黄金色のススキ野が拡がっていた。背後に落ち葉を踏む気配がした。茂は振り向いた。濃紺のデーラー服が歩いてくる。胸が急に早鐘を打ちはじめた 小学館(1998年初版第1刷)
ススキ 元禄秘曲 花房百助 高橋義夫 江戸竪川の一刀流石川道場で小天狗の異名をとっている二百石の旗本次男坊の花房百助は、道場主礫斎も関係があるらしい兄弟子古木要蔵の旧主堀田筑前之守刃傷事件の尾を引く騒動に巻き込まれて・・・。距離を置き、刀を鞘におさめたとき、芒の陰から、「若さん、やりましたね」と大声をあげて海坊主の斧吉が飛び出してきた 文芸春秋社(2009年第1冊)
スミレ 日記も人なり 手記も人なり 高松宮(高松宮宣仁親王) 保坂正康 奇しくも戦後五十年の節目に出された注目の2冊。読んでみればその差は歴然。「文は人なり」とはよく言ったものだ。高級「高松宮」日記と低級{瀬島」手記~以上原文から・・・路傍のスミレに心ひかる。その紫に春を思ふ。にはかに日かげ暖かく感ず。都井の村は山ふところにて田も漁もよきにや。見かけは屋根の瓦にもゆたかに見えたり 雑誌新潮45(平成8年3月発行 株式会社新潮社)
スミレ 天明の密偵 白井秀雄(菅江真澄) 中津文彦 三河吉田宿の御師の二男に生まれた秀雄は30歳の頃
、国学の恩師義方の勧めで蝦夷地の事情を調査するために旅立ち、諸国の風俗・民俗を記しながら蝦夷地に到着、佐竹藩内で没する76歳まで生きた証を残し続けた。傍らの草むらには菫が咲いて、空には雲雀が囀っている。海辺の岩場に上ってのどかな鳴き声を上げる海狗の姿も見られ、これぞ蝦夷地の旅だと秀雄は喜んだ
文芸春秋社(2001年第1刷)
スモモ 赤穂騒動影の軍師 大石豪右衛門 木村紃也 赤穂藩大石内蔵助と同族の津軽藩士大石豪右衛門は山鹿流軍学と多くのつてを生かして陰から仇討を支援、悪名を被りながら討ち入り資金を作った大野九郎兵衛、卑怯者の汚名を着て第2陣、3陣の襲撃に備えた浪士達・・・。街道は登りのきつい山間部に入りこみ、やがて戸数宇四十ばかりの農家と街道筋に三軒の旅籠を伴う李平という村に出た。ここは米沢藩の廻米輸送のための中継所が置かれており、わずかな平坦地から丘陵地に至るまで、一面に李の木が群生している 株)叢文社 1996年発行
セイタカアワダチソウ 新宿鮫風化水脈 鮫島警部 大沢在昌 キャリアながら警察上層部の勢力争いによって新宿署に捨て置かれたままの鮫島警部は、悪を憎む強い気持ちで犯罪捜査に1人で当たることから新宿鮫と呼ばれ恐れられている。服をひっかけないよう注意しながら鮫島は鉄条網を乗り越えた。放置されたまま、雑草が伸び放題の空き地には、鮫島の背丈を超えるようなススキやセイタカアワダチソウが密生していた。 毎日新聞社 2008年印刷発行
セイヨウシバ 2020年の影 永平寺
貫主童浄
赤井三尋 パンパシフィックコンピュータ株の技師敷島が意識を持つロボットの開発に成功したことから、その開発に国家も関与することになったが、ロボットが権利を主張するように暴走を始め、開発に係る審議会の童浄禅師の叡智が・・・。庭の手入れは行き届いてますね。芝生も綺麗に刈り込んである。少し青みがかっているんで西洋芝です 株)扶桑社(2008年初版第1刷)
セキショウ 士道の本懐 田口定七 泉秀樹 侍でも小者百姓でもない水戸藩の中間定七は、兄茂兵衛と禁裏と将軍様へ献上する初鮭を運ぶ役を命じられた道中で旗本御番衆と争いになり兄が死亡するが、戦いぶりが評価されて・・・。さらに腐りやすいエラを切りとり、冷たい井戸水でよく洗い、塩を薄く当て、一刻ほど干して身を締めてから石菖の葉で丁寧に包んだ PHP研究所2008年第1版第1刷
ゼラニューム 紅はこべ 「漁師の宿」亭主
ジェリーバンド
バロネス・オルツィ フランス革命の勃発で共和政府に捕らえられてギロチンにかけられる貴族が続出する中、身分ある貴族達をイギリスに脱出させる「紅はこべ」と名乗るグループが利用するのが、フランスのカレーと航路を結ぶイギリス側ドーバー港の亭主ジェリーバンドが営む食堂「漁師の宿」だが、食堂の鉛枠についた窓には深紅のゼラニュームとひえんそうの鉢がずらりと並んでいる 創元推理文庫西村孝次訳(1988年26版)
センダン 平家物語 平宗盛 角川文庫 清盛の跡を継いだ平家の総大将平宗盛は壇ノ浦の合戦に敗れて捕らえられ、近江の国篠原で橘右馬充公長に首を切られた後京都へ運ばれて大路を通ることなく獄門の左のセンダンの木にかけられた(下巻 大臣殿誅罰の事) 角川文庫 昭和43年11刷    佐藤謙三校註
センニンソウ 白雲の彼方 増田甲才 山上藤吾 ロシアのプチャーチンが下田に来航した頃、掛川藩普請組頭の長子甲才は重役布施隼人から、難破したロシア船の修理地である戸田港に行って広く勉強して来るよう命じられてロシア語を学ぶが、国元では攘夷騒動で・・・。夏の終わりだった。葉をい茂らせた梅の木の根方に、仙人草の白い花が揺れ、庭の奥にある楠からヒグラシの鳴き声が聞こえていた 株)光文社(2009年初版1刷)   
ソテツ 黒猫侍 無品兵部卿
中興上総介
五味康祐 現天皇の兄に当たるも京八流の武芸百般を修めて武士となった上総介が黒猫侍となって赤穂浪士事件から18年経った江戸で起こる吉良と赤穂に絡む争いに・・・。薩洲公笑いながら、御じょう談を仰せられます、と言ったら、公は、「じょう談ではない、一番大きな蘇鉄の根元に、葵の紋の彫ってある笄が差し込んである筈じゃぞ」 徳間文庫 1990年3刷   
ソテツ 霧の橋 紅屋惣兵衛 乙川優三郎 元一関藩士の勘定組頭の次男だった惣兵衛は、江戸に出て偶然出会った紅を扱う小店の主人と知り合い、娘いとと世帯を持って店を継いでいるが、商売仲間との軋轢の中で捨て切れぬ武士の心を痛感する・・・。勝田屋の待つ座敷は廊下を三度も曲がった奥にあり、そこだけ箱庭のような小さな庭には、雪をいただいき震える蘇鉄が大小二つ並んでいた 講談社 1997年3刷   
ソテツ 島焼け 次郎大夫 高田宏 人口三百数十人の伊豆諸島青ヶ島は天明の大爆発で居住不能となり生き残った島民は八丈島へ仮住まいしながら帰島を願う。48年後の天保6年、再興なった島が幕府の検知を受けるまでの庄屋次郎大夫の苦労は・・・・。八丈島の崇福寺境内の蘇鉄に花が咲くと、まもなく御赦免船がやってくると言われていた。御赦免花の咲いたときには、お常の夫はいつもいらいらしだした 新潮社 1997年   
ソテツ  海嘯
逸と富蔵の八丈島 
近藤富蔵  乾浩  蝦夷地を探検した重蔵の息子富蔵は親への反抗を重ねたあげく、23歳で人を殺し八丈島送りとなる。流人生活を送る中で、父をも罪人に巻き込んだことを悔いながら妻をめとり自分の出来ることを探すうち・・・・。慈運法印の亡骸は島民や流人僧達の手で宗福寺に埋葬され、慈運法印の霊を慰めるために埋葬した土の上に二種の蘇鉄を植えたのであった。ところがそれから数年たって蘇鉄が成長し花が咲く頃になると、咲いた年には不思議なことに、赦免の知らせが江戸から届くように 人物往来社(2005年第一刷)
ソバ 雲を切る 由比三四郎 池永陽 越前丸岡藩士由比三四郎は父の敵を捜して江戸へ出て七年、長屋住まいで寺子屋を開き、亡き父に伝授された刀の峰を打って相手の刀を折る技で道場破りをしながら敵を求めている・・・・。いきおい、日々の食事の何度かは蕎麦ということになり、三四郎も幼い頃から地元で作られた蕎麦の味になじんできた。それがおろし蕎麦だった 講談社 2006年   
ダイコン 虚空伝説 餓鬼草子
(矢月繋)
高橋直樹 幕府大目付で5千石の大旗本矢月備前の守の一子繋は、家が断絶になった理由を探るため殺し屋となって貯めた金で徳川将軍家に隠された秘密に迫る。居眠り岩根にも繋がりそうな、10代将軍家治の世子家基が毒殺された秘密とは・・・。「先生ね、お菜も大根や豆腐ばっかりではお身体にー」言いかけたところで、おきゃんは山道を駆け登ってくる伊兵衛に気づいた 講談社(1998年第1刷)   
タイマ(ソウ) 煙が目にしみる (マムシ)
小金欣作
石川渓月 昔マムシと異名を取って暴れていた博多の小さな街金業者小金はふとしたきっかけでヤクザに追われる若者を助けたこから、組織と対決するハメになり、マムシ時代の意気地を取り戻して・・・。小金は葉を一枚毟り取った。間違いなく大麻草だ。かなりの広さだ。ざっと見積もっても、四、五百株は植わっている 株)光文社(2011年初版1刷)   
ダイコン 月浦総庄公事置書 月浦集落年行事
新次郎
岩井三四二 世が乱れて土一揆の頻発する室町末期、琵琶湖北端の合議制の村月浦集落の若い世話役新次郎は、隣村から仕掛けられた土地争奪に対抗するため領主日野松浦家に訴えることにしたが・・・。とらの目を忍ぶ、土間の隅の竈にかけてある鍋の中をのぞいた。大根と粟、米の雑炊が残してある 株文藝春秋(2003年第1刷)   
ダケカンバ 訣別の森 槇村博樹 末浦広海 元自衛隊員の槇村は自衛隊時代の古傷を引きずりながら北海道北見市にある総合病院のドクターヘリパイロットをしているが、、昔の仲間が企てた知床半島のエゾシカ対策の暗躍に巻き込まれて思い出したくない過去と向き合うことになり、・・・。勾配は緩やかながらも、昨日の海別岳と同様、ダケカンバやエゾマツなどが生い茂り、倒木もあちこちに見受けられる。暗い樹林の中、横に伸び出た枝や蔓を全身でかき分け足を運んだ 講談社 2008年第1刷   
タケバヤシ 友罪 益田純一 薬丸岳 帯のコメントから: 罪を償うことの意味を問い続け、未熟で不完全な僕たちを勇気づける魂の長編小説とある、人間の恐ろしさやエゴを思い起こさせる登場人物たち・・・・。ここを通るたびに、まるであの竹林の中から学がそう訴えかけるように感じた。お前が勝手に死んだんじゃないかー 益田はそのタたびにそう言い返した 株)集英社(2013年第3刷)
タチアオイ 船宿たき川捕物暦 真木倩一郎 樋口有介 元奥羽白河藩士で江戸の佐伯道場で青鬼の異名をとる倩一郎は前藩主世子だったとの噂もあるが、江戸岡っ引きの総元締米造の娘を助けたことから・・・。倩一郎は使い終わった手拭いを盆に戻し、中庭に咲いた立葵の花に目を細める飴色の陽射しが真横から高い板塀を焙り、その塀に沿って、五、六本の七夕飾りが林立する 筑摩書房(2004年第1刷)
タチアオイ レッド・ドラゴン ウイル・グレアム トマス・ハリス 不気味な死の儀式が行われて起きる満月の夜の連続殺人事件で呼び出された元FBI捜査官グレアムは、精神異常犯罪者収容施設の最厳重監視病棟のレクターに面会し犯人のヒントを得ようとする・・・・。彼女の前にその部屋にいた患者が残していったタチアオイの花が、洗面台にのせたほうろうの花瓶に差してある 早川書房早川文庫(1991年8刷)
タチバナ 待ってる
(橘屋草子)
おふく あさのあつこ 12才で深川元町にある料理茶屋「橘屋」に奉公に出て5年、おふくは甲斐性なしの父を捨てて家を出た母親が新しい家族と暮らしている姿を見て、独りで生きてゆく覚悟を決める・・・。「橘屋」の庭には、その名の謂れともなった橘の木がある。隠居大名や豪商が訪れるほどの格式はないが、町方の旦那衆に好まれて、問屋仲間の寄り合いが引きも切らずあるほどの繁盛ぶりだった 講談社(2009年第1刷)
タマリスク 百億の昼と千億の夜 プラトン 光瀬龍 アトランティスについて記された文書を持っているという神官を訪ねてきた賢者ソロンの縁戚アテーナイのプラトンは、アーチを抜けて中央に楊樹(タマリスク=ギョリュウ)の大樹が茂っているせまい広場に出た ハヤカワ文庫 昭和48年2刷
タメトモユリ 海嘯
逸と富蔵の八丈島
近藤富蔵 乾浩  蝦夷地を探検した重蔵の息子富蔵は親への反抗を重ねたあげく、23歳で人を殺し八丈島送りとなり流人生活を送る中で、父をも罪人に巻き込んだことを悔いながら妻をめとり自分の出来ることを探すうち・・・・。「為朝百合じゃ!」逸が指差して、富蔵に言った。「江戸にはない大きな花だな」大輪の白い花弁の中に鮮やかな黄色が色づき、雌しべのまわりに長く太い橙色の雄しべ雄々しく映えていた 人物往来社(2005年第一刷)
タモノキ  流水浮木  山岡晋平  青山文平  先祖が伊賀忍者である山岡晋平は江戸城大手三之門の門番で、月4~5回だけの勤務の間に皐月の盆栽作りで暮らしているが、友達が相次いで死んだことから忍者の能力を磨いて変化を求める動きがあることに気が付く・・・。その日、晋平は山歩きの時と同じ身支度をしていた。汚れが目立たぬ藍鉄の木綿を着け、同じ色の野袴を穿き、自分でタモの木を削った杖をついている 株)新潮社(2013年第一刷)
タンポポ O・ヘンリー短編集 サラ O・ヘンリー タイピストのサラは田舎で農夫ウォルターから髪にタンポポの花冠をさしてもらい婚約したが、移転後手紙が2ヶ月も途絶え、泣きながら仕事でレストランのメニューをタイプで打っていたところへウォルターが訪ねてきた。引っ越し通知が届かなかったウォルターが探し当てたのは偶然入ったレストランのメニュー「固茹卵つき、あたしのウォルター」という料理だった(1ーアラカルトの春) 新潮文庫 大久保康雄訳 昭和31年10刷
タンポポ 子盗り 榊原美津子 海月ルイ 京都山里の旧家に嫁いで子供ができないまま13年前経った美津子、妊娠しても産めない女、産んだのに母親になれない女、の情念が交錯して、気持ちが暗くなる話だが何故か最後はハッピー風? 作者は20年後の続編を書く義務がありそう・・・。「お母ちゃん、これ」美津子の膝の上の毛布に、哲也はタンポポを置いた。ひや、こんなん、どこに咲いてたんや」 (株)文芸春秋 平成14年第1刷
タンポポ Riko-女神の永遠 村上緑子 柴田よしき 新宿署防犯係長のリコは男の論理が罷り通る警察組織の中で身体も心もズタズタに傷つきながら戦っている。女でいることが悪いことか、優しさを求めることは悪いことなのか。許せない男、上司の中でチコは走る・・・・仕事を離れた時のこの人は、タンポポの咲く春の土手に寝ころんで雲を見ている少年のように飾りがない (株)門川書店(1995年第5刷
チガヤ 少年達の欅 木原保夫 大屋研一 戦後間もない頃の田舎の村の小学生保夫は、貧しい家庭ながらガキ大将の修一や明達と川や山で遊ぶ毎日、やがて家の手伝いで遊ぶ暇もないようになるが、ああのどかで豊かだった20年代の村の生活・・・・。白茅がいっせいに穂をつけるのだ。河原の草むらで盛んに葦切が鳴き、風とともにその鋭い鳴き声が白い穂を揺するかのよう。保夫たちは白茅をツバとよぶ。手にとると柔らかくて昔は、綿のかわりや火口などに使った (株)三五館 2000年初版
チドメグサ 弧笛のかなた 夜名ノ森の
小夜
上橋菜穂子 取り上げ女の祖母と里の外夜名の森陰で暮らす12才の小夜は、ある夜犬に追われた子ぎつねを助けて里人が出入りしない奇妙な森陰屋敷へもぐり込んで不思議な少年に会う・・・。小春丸は立ち上がると、垣のそばに生えている雑草をよりわけ、なにかつんでもどってきた。「血止め草じゃ。」草をちょっともんでから、小春丸は、そっとそれで傷をふいてやった (株)理論社 2003年初版
チューリップツ 黒いチューリップ コルネリウス アレクサンドル・デュマ ルイ14世のフランスとの戦いが始まろうとする時期の騒然としたオランダのドルトレヒトで、政治の混乱と無縁に新種のチューリップ研究に情熱を燃やすコルネリウスは、黒いチューリップ発見の10万フロリンを狙う同じ研究者の陰謀により、オランダ国民の敵として逮捕投獄されるが、牢獄の看守の娘ローザの助けを借りて黒いチューリップの作成に成功、ローザの活躍で若きオレンジ公殿下から無実を認められる。チューリップはみごとであり、堂々としており、すばらしいものであった。茎は6センチの高さに伸びており、槍の穂先のようにまっすぐ・・・・ 創元推理社文庫 宗左近訳 1978年第17版
ツゲ いつか 虹の向こうへ 尾木遼平 井岡 瞬 元刑事だった尾木遼平は警備のアルバイトで食いつないでいるが、ふとした事件に巻き込まれて身内を殺された暴力団長から真犯人を捜し出すよう脅迫を受け、行きがかり上保護しそこねた女性を救い出すためもあって引き受けるが・・・・。「こちらへ」 私は男のあとをついて小石を敷き詰めた道を歩いた。柘植や椿、楠などが鬱蒼と茂っている 角川書店平成17年初版
ツゲ 抹殺 宮崎一晃 東直己 車椅子の殺し屋一晃は、裏稼業を知らない美貌の介護人兼愛人の篤子を月150万で雇用しながら仕事を引き受けている。依頼窓口兼相棒は特養ホーム理事長で車椅子のパイプ等を銃の部品に組み立てて・・・・。牡丹雪がチラリチラリと舞っている。見えるところでは、柘植の枝に雪の風情がなかなか素晴らしい。(もう少し積もってもいいな) 株)光文社(2007年初版1刷)
ツタ タウゼロ チャールズ・レイモンド ポール・アンダーソン 1993年星雲賞受賞の傑作SF。生きて帰らぬ計画の32万光年の乙女座の星を目指して進む宇宙船に生じた事故、タウゼロ近い速度、ビッグバン理論の究極?、宇宙船の中にも緑は必要なようだ。・・・。レイモンドはそれまで休息していたあずまやをあとにした。矮性の樹木と、繁茂したツタと、苔と、草花は、彼の憩いの場所だった。しかし、最近の部屋へやってくるものはめったにないようだ。 P東京創元社(1993年第7版)
ツルバラ 斃れし者に水を 藤原真澄 渡辺容子 脚本家の真澄は不倫の恋人織田が糖尿病で入院した病院に看護補助目的で泊まり込む内に、マンションの自治会長が殺された事件の犯人は恋人ではないかと、調査を始めるが・・・・。斜向かいの家の庭から、花鋏で何かを切る音がした。植え込みから覗き込むと、綿レースのエプロンをつけた婦人が、蔓薔薇を相手に格闘しているところだった 祥伝社(平成11年初版第1刷)
ツツジ 甘水岩 嗅ぎ忍の伊真 多田容子 敵方忍者に売られて育った伊真は憎しみの鬼となって技を磨き、古里に帰って一族の頭となって武家の謀略を逆手に暗躍する中で、知り合った渡り巫女との縁を深めてゆく・・・。伊真は、薄衣と朱袴の影が遠ざかるのへ向かって、小声で叫んだ。「白躑躅・・・」巫女の後ろ姿が一瞬、身を縮めた。が、巫女は一層の早足で駆けてゆく。 PHP研究所 2003年第1版第1刷
ツツジ 狸汁 流れ板の久田銀次 柴田哲孝 麻布十番にある一見様お断りの小料理「味六屋」は美人の町子と銀次が品書きのない料理を出す店、銀次が造る客の舌の原点に響く狸汁から鮎のうるかまで6種の料理への挑戦・・・。朝食の後、宿の周辺を散歩した。物見山、日和田山へと続く遊歩道を登ってみると、日当たりのいい斜面に季節を迎えたつつじが咲き乱れていた 株)光文社 2009年初版第1刷
ツバキ 木練柿 遠野屋清之介 あさのあつこ 過去に曰くを抱えたまま刀を捨てて小間物問屋を営む清之介は、同心信次郎の目を意識しながら商売仲間や使用人の信頼の中で周囲の事件に係わってゆくが・・・。椿の花が音もなく落ちてきた。ごろりと地に転がる。伊佐治は半歩下がり、身震いをした。突然に白刃をかざす男も尋常でないけれど、それを凌いで立つこの男もどこか異相の面を持つ 光文社 2009年初版第1刷
ツバキ アバスルビーの事件(シャーロックホームズの功績) シャーロックホームズ アドリアン・コナン・ドイルとジョン・デイクスン・カー ホームズの相棒ワトソン博士の事件メモの末尾には紹介できない事件名が記されているが、シャーロキアンのデイクスン・カーがドイルの息子と共著でそれらの事件を想像で再現した偽ホームズ物・・・。まったくきれいな花ですね。あなたが今日の午後摘まれた赤い椿というのは、その花のことですか? ハヤカワミステリー(昭和42年第五版)
ツバキ しずり雪 幸太 安住洋子 水野様の改革で贅沢品が禁止されて仕事を失っていた蒔絵職人の幸太は、幼馴染の作次が取り次いできた仕事を引き受けたが、2度目は断った。そして降り続いた雪がやんだ朝、作次は死んでいた・・・井戸端の椿の枝に積もった雪が、細くこぼれ落ちていく。花のまま地面に落ちた椿が半ば雪に埋もれていた。~。1人で死んでいったのか、作次・・・・ 小学館(株) 2004年初版第1刷
ツユクサ Riko-女神の永遠 村上緑子 柴田よしき 新宿署防犯係長のリコは男の論理が罷り通る警察組織の中で身体も心もズタズタに傷つきながら戦っている。女でいることが悪いことか、優しさを求めることは悪いことなのか。許せない男、上司の中でチコは走る・・・・「おまわりなんて、ホントにつぶしが利かないね」 緑子は足元に咲いている気の早いツユクサを摘んで、シャツの胸ポケットに刺した。 どこかでカエルの声がする (株)門川書店(1995年第5刷
ツバキ 寒椿ゆれる 玉島千蔭 近藤史恵 南町奉行所同心の千蔭は何故か気の合う吉原の遊女梅が枝や事件で知り合った中村屋の若手女形巴之丞などの情報を集めながら金貸し内藤屋の盗賊事件を調べるうちに見合い相手の・・・。大石様、わたくしは椿の植えられた家で育った女でございます。武家では椿の花は厭われます。椿ほど美しくはございませぬが、わたくしは自分が椿のように思われます 光文社(株) 2008年初版第1刷
ツユクサ 蛍草 菜々 葉室 麟 父が無念の切腹、家は断絶して母もまた逝って16歳の菜々は百姓家の世話で百五十石取り風早市之進方の女中奉公をすることになったが、奥様の佐知の優しさに助けられて懸命に務めていた。藩内の騒動が大きくなり市之進も・・・。菜々の傍に腰を屈めた佐知は言葉を継いで、「露草ですね。この花を万葉集には月草と記してありますが、俳諧では蛍草と呼ぶそうです」と教えた」 (株)双葉社(2012年第1刷
ツワブキ 銀漢の賦 日下部源吾 葉室 麟 月ヶ瀬藩郡方に出仕する源吾は、若い頃仲良しだった家老の松浦将監と絶縁していたが、藩政のいざこざをきっかけにして助けることになる。人も花も同じです。生まれ持ったものは尊いでしょうが、それを美しくするためにはおのずと切らなければならないものがあります。千鶴は静かに石蕗に鋏を入れながら「花の美しさは形にありますが、人の美しさは覚悟と心映えではないでしょうか」 (株)文藝春秋(2007年第1刷
デイゴ カフーを待ちわびて 友寄明青 阿刀田高 沖縄県寄那喜島で小さなよろずをしている明青は生まれながらに右手が拳で独身だが、北陸の遠久島に島人と観光ツアーに行き、絵馬に「嫁に来ないか」と書いて吊したら手紙が来てお嫁に行きますと。日本ラブストーリー大賞受賞作・・・。小学校の校庭の片隅に、デオゴの巨木が立っていた。樹齢は何百年ともいわれている。 宝島社(2006年1刷
トウガラシ 数えからくり
女錠前師緋名
緋名 田牧大和 秋猫の大福と暮らす天才女錠前師お緋名に旗本屋敷から座敷牢の錠前の注文があったが、牢内に閉じ込められた娘に秘められたからくりを娘の歌う数え歌から解いてゆく・・・。大工二人は首を傾げたが、辻から辻を売り歩いている唐辛子売りは「ああ、子吉っつぁんとかしげたがゆくに隠されていた。 新潮社 2010年
トウゴマ 旧約聖書を知っていますか ヨナ 阿刀田高 アイヤー、ヨッ から始る旧約聖書の分かりやすい話で、最後まで読んだらイスラエルや旧約聖書が分かったような気になる本。・・・・「あなたは自分で育てたわけでもない唐ゴマの木が一夜で葉を茂らせ、一夜で滅びたことを惜しんでいる。ならばどうして私がこの大きな都ニネベを惜しまずにいられようか。大勢の人間、無数の家畜、みんな私が命を与えたものだから」ヨナは神の心を知り、ひれ伏した・・・。 株)新潮社 1991年3刷
トウバナ 回天(関東軍独走す) 石原莞爾 紀ノ宮深 満州事変にいかに陸軍が関わったか、柳条溝事件は誰が起こしたか、独断専行が許される関東軍とは?天皇の意思が簡単に無視される陸軍の体質は何処から・・・・。敷地は、檜林、杉林に囲まれ、邸内には山百合、鬼あざみ、あかね、塔花、大根草、弟切草などの高山系の植物が生い茂る野趣豊かな別荘であった 総合法令出版(株)1995年初版
ドクダミ 冬の旅 緒方隆雄 阿刀田高 求めて奪われ、掴んでは失う人生、5年の刑期を終えて出所した隆雄は、失職、病、路上生活、強盗致死、真面目に暮らすのに悪い方へ悪い方へと、回文の名前か・・・・。指はもはや体を支えきれず、彼は墜落した。白いドクダミの茂みが落下の衝撃を和らげてくれて、軽く膝を打つだけで済んだ。ドクダミの匂いが強くたちこめる 株)集英社(2013年第1刷
ドクダミ 捩れた関係(女が別れを告げるとき) 女と男 落合恵子 女は男から50通目の手紙をもらった年の七月に一緒に暮らし始めた。女が稼いで男が料理を作る生活、女が妊ったときから男は真面目に仕事をしたいと思い始る、女は守るもののない毀れた暮らしを続けたかったのに・・・・毒だみ、そう、貴方は毒だみの花なのです。あいつは匂いが強いのに、目立つほどの花ではない。例えば手折ってきて、家のなかに飾る程の花ではないのです 株)講談社文庫(1992年第3刷
ドウダン 八丁堀春秋 小山田采女 花家圭太郎 元北町奉行所定町回り同心の采女は、倅の伊織に仕事を譲って若い女房おしゅんと以後三昧の日々だが、持ち込まれる厄介ごとに乗り出してゆく・・・・。おしゅんの言う通りたしかに狭いが、丹精の偲ばれる庭である。庭はその家の心、主人の心を移す。椿、躑躅、満天星などが形よく叢をつくり、そこへ楓、海棠、百日紅など、背の低い木々が程よく配されている 株)集英社(2005年第1刷
トチノキ 盤上の敵 末永友貴子 北村薫 テレビデイレクターの北村の家に殺人犯が押し入って妻友貴子が人質になった。警察とテレビ局を手玉に取って友貴子が犯した事件を闇の葬るために、チェックメイト・・・・。・・・・栃の木。覆いかぶさるように高く、枝のあちらこちらに白い花が、本当に蝋燭を立てたように咲いていた。風が渡ると、そのキャンドルは緑の葉に中に揺れる 講談社 1999年第1刷
トチバニンジン 早春賦 八王子千人同心の小人風一 山田正紀 武蔵八王子に流れ着いた元武田家臣の兵士団は徳川へ帰属して千人同心なっていたが、城主大久保長安の死を契機に内部争いとなり、父を殺された風一は幼馴染みの林牙、山坊と組んで火蔵、火拾兄弟と戦うことに・・・・。「はい。薬草でござーます。ハシリドコロはことのほか痔病にきくと申します。またトチバニンジンの滋養をもたらすこと、これにまさるものは他にねーと言われておりまして」 株)門川書店(平成18年初版)
トドマツ 氷結の森 柴田矢一郎 熊谷達也 秋田のマタギで銃の名手だった矢一郎は過去から逃げながら樺太に渡り、ニシン漁等の作業で稼ぎながら流浪生活を送っている。新しい職場は氷点下48度にもなる山の伐採飯場で、矢一郎はトドマツの幹、追い口に食い込んでいる鋸に、最後の一挽きを加えた 集英社文庫 2010年第1刷
ドロノキ 月神 月影潔 葉室麟 元福岡藩士の月影潔は尊王攘夷に殉じた従兄弟の洗蔵の志しを思いながら、新政府の役人として北海道の集治監建設団長として発ったが、蝦夷地の冬はすさまじいもので囚人たちは次々と死んでいった。・・・あたりにはナラ、カツラ、ドロノキ、岩カエデなどの大木が多くあった「元来この地方にはトド松が多いのです 株)文角川春樹事務所2013年第1刷
ドロヤナギ ロシア黙示録 坂本真二 熊谷独 日ソ貿易の商社勤務の坂本はモスクワで貿易公団の手強い担当者を相手に駆け引きする内、徐々に相手の術中にはまりながらも秘書のターニャとわりない仲になり日本へ連れ帰るが・・・。ドロヤナギの綿毛が深海を漂うマリンスノーのように空中を舞、原野にはタンポポが咲き乱れる。黄色地緑の周辺部をこごめ桜の白いがうっすらと彩る 株)文藝春秋  2002年第1刷
ナシ 月芝居 小日向弥十郎 北重人 左羽藩江戸御留守居役弥十郎は昔の道場での遊び仲間遠山金四郎や惣七郎、尽左衛門との縁を生かしながら役目を果たしていたが、老中の絡む不正事件に巻き込まれてゆく・・・。見れば、両手に大きな梨を抱えている。おけいは皮を剥いで切り割った実を、皿に盛って出してくれた。水水しく甘い梨だった 株)文藝春秋  2007年第1刷
ナツグミ 星につなぐ道 林伸二 柴垣文子 小学校の新任教員となった伸二は真理と正義を愛する青年としての情熱を子供たちに、恋人育子に、共産党員として活動に真っ直ぐ注ぎながら前進して行こうとする。「いただきます」育子は数個のグミを採り、伸二も手を伸ばした。農婦に礼を言い、歩き始めた。夏グミの柄を指先でつまんだまま口に含むと、甘い果汁が口に中に広がり・・・・ 新日本出版社  2011年初版
ナツツバキ さらば長き眠り 魚住夕季 原遼 探偵沢崎が突き止めた、11年前の夏の甲子園準々決勝での八百長疑惑事件の当事者魚住彰からの依頼調査は、姉夕季の自殺の真相に絡んで2転3転するが、「彼女の遺体はどうしたのだ」 「その夜、あいつに手伝わせて、三鷹の俺の家へ運び、庭のナツツバキのそばに埋めた」 早川書房  1995年第4版
ナナカマド 路傍に死す
冬の蝉
的場陣九郎 坂岡真 雑賀党の血を引く陣九郎は藩内の家督争いに巻き込まれて殿様を撃ち、山中深くにに逃げ込んで山毛欅の幹に1万体の仏を彫ることを生きるよすがに猟師をしていたが・・・・。隆々とした腿を上げ、天鷲絨のような体毛を靡かせる。行く手には、一本の七竃が佇んでいた。幹に塗った蜜の甘い香りに誘われ、牡鹿はやって来たのだ 徳間書店  2008年第1刷版
ナノハナ 清佑ただいま在庄 代官清佑 岩井三四二 京の大寺が支配する荘園の逆巻庄に代官として派遣された清佑は、年貢取立と庄内のこすっからい村人の生活を守る公事の仕事に前例を探しつつ精を出すが・・・。道ばたの野原や河原に菜の花が咲いている。逆巻庄にも春が来ているのだ。仕事を終えて京へもどるのだから、やはりほっとする 集英社済(2007年)第1刷
ナノハナ 玉兎の望 鉄砲鍛冶師藤兵衛 仁志耕一郎 近江国友村の鉄砲鍛冶藤兵衛は身売りした幼馴染サヨを想いながら鍛冶師の腕を磨き、次第に認められるようになり空砲のを発明など・・・。燈籠が立っている躑躅の木の辺りから、盛んに虫の声が聞こえてくる。夕飯後、藤兵衛は夕涼みがてら、縁台から下駄を履いて庭にで出た 株)講談社(2012年)第1刷
ナメコ 新・雪国 芸者萌子
田島めぐむ
笹倉明 川端康成の雪国を舞台にした新しい時代の男女を描いて、トンネルを越す前に新幹線から降りた柴野が駅に立った時から話は始まる・・・。萌子が二杯のホットコーヒーと、これはサービスだというなめこ汁をふた椀、トレイにのせて運んできた。なめこはこの辺りが産地で、夏場はハイキングコースとなる清津峡にかけての道がなめこ狩りのスポットだという 廣済堂出版(1999年)
ナラ  蝉しぐれ 牧文四郎 藤沢周平 海坂藩の普請組15才の文四郎が隣家の12才の娘ふくと会話する朝の風景から始まる物語は、30余年後前藩主没後一年を期して髪をおろすことにしたふくとの別れの場面で終わるのだが・・・。そして隣家との境、家々の裏手には欅や楡、かえで、朴の木、杉、すももなどの立木が雑然と立ち、欅や楡が葉を落とすの冬の間は何ほどの木でもないと思うのに、夏は鬱蒼とした木立に変わって、生垣の先の隣家の様子も見えなくなる 文春文庫(2005年第46刷)
ナンテン 身をつくし(清四郎よろず屋始末)第三話・・お染観音 辻清四郎 田村大和 よろず相談所をしている清四郎は3年前、南町奉行の内与力筆頭だった頃奉行の内密の依頼で引き受けた事件処理の後遺症に悩みながら、町方の暮らしぶりを見つめていたが・・・。赤い実をたわわに付けた南天の枝に積もった雪を払っていると、店の方から聞き覚えのある声ー松田玄之進が、清四郎を呼んだ 講談社  2010年第1刷
ナンバンギセル 運命の剣のきばしら最終章 残欠 近衛工兵小隊児島元徳少尉 中村隆資 鎌倉の末。備前長船の刀工助平が打った無銘の刀は「のきばしら」と呼ばれて時代を超えて変遷するが太平洋戦争終結の占領軍とのやりとりの中で最後の切れ味を示して折れる・・・・。侍従だろう。紺色の制服を着た先導役が答える。「ナンバンギセルというのはね」大勲位菊花章をつけた人影は、児島に背を向けて草の説明をし始めた 講談社  2010年第1刷
ニシキギ 神無き月十番目の夜 小生瀬の肝煎石橋籐九郎 飯島和一 世に聞こえた月居騎馬衆として半自治の里を率いてきた籐九郎だが、家康の世になって過酷な検地が始まり、独自の暮らしに誇りを持ってきた村人の心に反抗の色が、一村消失へ歯車が・・・。小枝ごとに薄い茶色の膜をつけ、名のとおり秋には美しい紅の葉を飾る灌木がある。都人が思いを歌に託して読みかけるように、保内の地では太古から、男は最も美しく色づいた錦木の枝を山から手折り来て、思いを寄せる娘の戸口に闇夜立てかける風習が行われていた 株)河出書房新社(1997年第1刷)
ニシキモクレン 悪忍 飛び加藤 海道龍一郎  傑出した忍びの者で飛び加藤の異名をとる加藤段蔵は、己の能力、偸盗、虚偽、裏切りの限りを尽くして生きているが・・・。本堂の軒下から刀にかけた小荷物を取り出し、肩にかついだ段蔵は、脇に咲いていた錦木蓮の花に目を止める。薄紅の入ったその一花を摘み、香りを嗅ぎながら思った  双葉社(2006年第1刷)
ニラ 随想録 モンテーニュ モンテーニュ  ある人、一哲学者の恰もそれをやっているところに来合わせて、何をかしたまうと問いたるに、かれ、「人間を一人植えているのじゃ」とすまして答えた。韮を植えているところを見られたほどに赤くならずに。〜略、羞恥が抑え引っ込めたところのものを射出すためには、やはりあとで物陰をさがさねばなるまい(第三巻第12章 レイモン・スボン弁護)  新潮文庫 関根秀雄訳昭和39年7刷
ニレ 密偵 桐生征二 秋山香乃  元桑名藩士の子征二は新政府の警視庁密偵として、尊王攘夷の騒乱の中で突然死した先帝孝明天皇の死因メモを探るため民権運動者の収容されている北海道の空知集治監に潜入するが・・・。これは囚人たちの輸送に使うシベツ川の船便の波止場に生えた大木の楡の木で、悠然と大地に根を張るその姿を見て、刑期を終えてここを出てゆく囚人たちは必ず船の中から見返り、辛かった日々を思い返し、もう二度と戻ってきてはならないと心に誓うのだ 幻冬舎(2010年第1刷)
ニレ サイボーグ・ブルース アーネスト・ライト 平井和正 木星定期便の宇宙船ほどの金がつぎ込まれて作られた連邦警察の黒人のサイボーグ特捜官ライトは、驚異的な能力・破壊力を持ちながら人間的意識を捨てきれず苦悩していた。ロボットにはもうブルースは歌えない・・・。寄宿舎の入口のそばに、ニレの巨木がそびえていた。青年はそこまで送ってくれて、手をさしだした 東角川文庫(昭和49年初版)
ニワウルシ 空海秘伝 空海 寺林峻 15歳で讃岐善通寺から都へ学問に向かう真魚の時代から62歳で入寂するまでの空海の生涯を、現役の密教僧が描いた小説で空海が少し分かった気がした。・・・早速、真然らが手伝って、威儀を整えた空海を真如は抱きかかえて、嵯峨上皇から贈られた樗(にわうるし)の木づくりの椅子に座らせようとした。「まことにつろうございます」十二歳の空海のあまりの軽さに真如の声が潤んだ 東洋経済新聞社(1997年)
ニワトコ おしまいのページで 遠い昔の
一校の先生
丸谷才一 随筆コラム「博物誌」の中の話、大学進学の時に植物学科か英語学科迷ったほどだった英語学の大家市河三喜は、散歩時生徒に樹を見るたび試験して答えられなければ、満足してその樹の日本語、英語、ラテン語の三つで教えてくれたというが、一方遠い昔の一校にいた先生は英語訳をつける時に少し難しい植物が出てくると全部「ニワトコ」と訳したという 東文芸春秋社(1979年)3刷
ヌルデ 西林図 土井冬亭 久生十蘭 土井冬亭が隣家の鶴が池の鯉を食ったのでその仕返しに鶴鍋にすると言って裏門から鹿島輿兵衛の屋敷に入ると、西林図にあるようなひろびろと池があるが、汀に紅葉した白膠木が1本あるだけで、庭木らしいものはひとつもみあたらない 角川文庫 母子像・鈴木主水(昭和34年初版)
同上  幻の法隆寺 神原東洋 邦光史郎 法隆寺を模した新法隆寺に夢殿を造って観光施設イカルガランドを目論む赤木健作に招かれた歴史紀行家の神原は、資産相続に絡む怨念の殺人事件の真相を、法隆寺建立と聖徳太子の謎とともに推理することになる。このとき、14歳の聖徳太子が、ヌルデの木を切って四天王の像をつくり、これを頭上にのせて、・・・ 徳間文庫(1985年初刷)
ネギ  孤舟 大谷威一郎 渡辺淳一 大手広告会社を定年で辞めた威一郎は、期待していたバラ色の第二の人生からほど遠い家庭、親子間で本当の孤独を味わうハメに、仕事をしない男は家庭でどう過ごせば・・・・。「また長葱と豆腐か、たまには別の具に変えたらどうなんだ」いい終るのを待ちかねたように、洋子の声が返ってくる。「長葱は、三島から送ってくれたものですよ。せっかくくださったのに、食べきらないと、もったいないでしょう。うちは年金生活者なのですからあまり贅沢はいわないでください 株)集英社(2010年第一刷)
ネコヤナギ  吹雪の虹 神原東洋 光瀬龍 アメリカを放浪していた柏木秀人は事件を知って帰国し、アルバイトをしながらバイクで国内を放浪し新宮司笙子を捜していたが遂に見つけた笙子は記憶を失った高校生だった。高校生の青春小説。・・・清二
のかたわらの笙子が、とつぜん、身をひるがえした。小さな影が、雪の河原をどこまでも走った。真っ白なねこやなぎの陰にその姿が消えた
徳間文庫(1989年初刷)
ネムノキ  王城の忍者 寒川竜王坊 南原幹雄 代々天皇家の忍びを務める静原冠者の頭竜王坊は、桃園天皇崩御後の倒幕運動に絡んで前大納言徳大寺行公城の指示を受けて動き始めたことから、同じ忍びの八瀬童子と敵対する・・・・。竜王坊は合歓の木の根方にひそんで、湯殿の気配をうかがった。遠くから蜩の声が聞こえる。時に湯を使う音が聞こえた 新潮社(2005年)
ノアザミ 白樫の樹の下で 神原東洋 村上登 三十俵二人扶持小普請組で父の代から出仕したことがない登は内職と不釈流佐和山道場での稽古に明け暮れていたが、竹光に替えて預かった一竿子忠綱を腰の指すようになって、周囲に変化が始まり・・・。登は単衣の裾をたくし上げ、磨り減った下駄を脱いで、糸蚯蚓を入れておくための葉芋の葉を一枚折ってから、薄紫色の野あざみの花が揺れる川縁を降りた 徳間文庫(1985年初刷)
ノイチゴ 鬼神の狂乱 みつ 坂東眞砂子 16才になるみつは、狗神憑きが広がった村の中で藩から調査に来た若い作配役の藤崎信八の優しさに心惹かれて村内の案内等をするが、身分違いは心得ていた・・・・。社には瑞々しい榊が飾られ、野苺が供えられている。長丞は今も変わりなく氏神を祀りつづけているのだ。なんということもなく、その前で手を合わせて立ち上がった時、背後に人の気配がした 幻冬舎間(2008年第1 刷)
ノカンゾウ 還流 小原かおり 稲葉真弓 長良川と木曽川に囲まれた輪中の町で、祖母ひな、母詩子3人の女所帯で暮らす16歳かおりは、亡父が作った川を下る蛇の話を想い長良川の源流を訪ねることにした。・・・一緒に出迎えたかおりが意表をつかれたのは、メモ帳のほかに途中で摘んできたらしいオレンジ色の野カンゾウの花を携えていて、それを玄関の上りがまちにそっと置いたことだった 株式会社講談社(2005年第1刷)
ノギク 風の轍 鍋谷の志乃 岡田秀文 越前随一の名門商家鍋谷の娘志乃は強引な商法から父や一族の処刑から逃れ、京の女郎から救い出さした元手代の文吉と商いを始め、誇り高い商魂で何度もの試練の後、信長軍への物資調達で店を繁盛させるが・・・。いまわのきわにあって文吉の意識は、幼い志乃がはじめて野菊を贈った美しい思い出に舞い戻っているのであろうか。志乃の問いかけに文吉はもう応えるだけの体力もなく、ただせわしく息をついているだけであった 株)光文社(2008年初版1刷 )
ノギク 太閤暗殺 石川五右衛門 岡田秀文 お拾い様の誕生で関白の座が危うくなった秀次の側近の命を受けて無道悪逆な盗賊五右衛門は、京都所司代前田玄以や秀吉側近三成達等の追求を逃れながら、奇策を持って伏見城内へ侵入し寝所近くへ迫るが・・・。足元から下へ二尺ほどもあ所にある岩の割れ目から一輪の野菊が顔をのぞかせていた。秀保はそこに目を止めると、手を伸ばし身を乗り出した 株)光文社(2002年初版1刷 )
ノバラ
(ノイバラ)
三屋清左衛門
残日録
清左衛門 藤沢周平 藩主に引き立てられて用人にまで出世した清左衛門は息子に家督を譲って隠居し、雑事から解放されて見て初めて老いを感じ寂寥感に襲われるが、藩の執政間の争いなどもあり・・・。清左衛門が思い描いている悠々自適の暮らしというのは、たとえば城下町周辺の土地を心ゆくまで散策するというようなことだった。記憶にあるばかりで久しく見る機会もなかった白い野ばらが咲き乱れている川べりの道を想い浮かべると、清左衛門の胸は小さくときめいた。 文春文庫(2001年23刷 )
ハイマツ 煉獄の山 綾戸省造 梓林太郎 結婚した妻の一族会社の常務になっている省造に昔、吹雪の山に放置した女と登った山の写真が届けられたので調査した結果、女は生きていた。離婚し会社をやめて名簿販売業を始めたがやがて・・・。帰りに池の近くを歩くことにして、薄暗い空を気にしながら樹林の中を登った。山頂はハイマツの平坦地だったのを綾戸は覚えていた 株)双葉社(
1995年)
ハクサンチドリゲ オホーツク・わが愛 小手川茜 五十嵐均 女学校3年の茜はロシア語の能力が高いことから終戦まじかのカムチャッカ半島のサケマス漁船に乗ってでロシア軍の通信傍受を依頼されて現地に赴くが、砲撃を受けて連行され・・・。「7月がいちばんお花の多い時なのよ。赤いのが蝦夷ツツジ、白がハクサンイチゲ、黄色がイワオトギリ、紫のがハクサンチドリ・・・。何十種類ってお花が一緒になって咲くんだから」 東京書籍(株)(
1996年第一版 )
ハクバイ 東京影同心 金子弥一郎 杉本章子 結南町奉行所同心の弥一郎は幕府崩壊の中で妻や尊敬する兄も失い、新政府の世で生きる目的を失っていたが、ふとした縁で新政府の務無法を追及する中外新聞社記者に・・・。吉衛門の歳暮は、根締めに福寿草と南天をあしらった室咲きの白梅の大鉢であった 株)講談社(2010年第1刷)
ハクモクレン あをにさうらふ 神山佐平 志水辰夫 大百姓の三男佐平は小藩の武士に取り立てられたものの、気がついたら主君の急死で藩の混乱に巻き込まれ、馴れぬ刀を振り回しながら非情な武士にはなれないことを・・・。「あそこの白いのは辛夷の花ですか」「いえ、あれはたしか白木蓮のはずです」前方に見えている木のひとつだった 新潮社(2007年)
ハコベ 深川澪通り木戸番小屋こぼれた水 近江屋の内儀お加世 北原亜以子 亭主の近江屋山左衛門が嫁ぎ先から帰されたお京の面倒を見ていると知ったお加世は後をつけて借りてやった住まいを探し当てるが、山左衛門に知られ・・・。はこべが小さな花を咲かせている路地を走って番小屋の前に出ると、弥太右エ門が蝋燭のありかを
探していた。客はお京で、笑兵衛は頭から布団をかぶっている
株)講談社(2004年第1刷)
ハコヤナギ デストロイヤー
国際麻薬組織
レモ・ウィリアムズ R/サピア&W・マーフィー 大統領直属の非合法組織に属す唯一人のデストロイヤーであるレモへの今回の指令は、50トンもの密輸麻薬の販売組織の壊滅だったが、空手の師チウンの教えは・・・。部屋にはかすかなハコヤナギの匂いと、それにつつましい服装の、魅力的な女性から立ち上る妙なる匂いとがただよっていた 岩創元推理文庫四八一佐和誠訳(1975年初版)
ハシバミ 非道行ずべからず 荻野沢之丞 松井今朝子 11代目中村勘三郎を座主とする中村座で起きた連続殺人事件で、花形役者の地位を争った過去の因縁が問題となるが、本卦還りを過ぎた今も立女形の沢之丞の後継者争いが絡んで楽屋暮らしの長い職人等を巡って奉行所同心や手先の探索が続く・・・。喜多村松栄で・・眼は榛の実のようにくりっとしていて、ものを食べる顔つきは、鳥が無心にものをついばんでいるに見える 株)マガジンハウス(2002年第1刷)
ハシリドコロ 早春賦 八王子千人同心の小人風一 山田正紀 武蔵八王子に流れ着いた元武田家臣の兵士団は徳川へ帰属して千人同心なっていたが、城主大久保長安の死を契機に内部争いとなり、父を殺された風一は幼馴染みの林牙、山坊と組んで火蔵、火拾兄弟と戦うことに・・・・。「はい。薬草でござーます。ハシリドコロはことのほか痔病にきくと申します。またトチバニンジンの滋養をもたらすこと、これにまさるものは他にねーと言われておりまして」 株)門川書店(平成18年初版)
ハス 三たびの銃声 和美浩次 有沢創司 民間支援団体AVC現地職員として派遣されたカンボジアは和美はポルポトと政府軍の抗争の中で任務を果たしながら愛を誓った彩子の心変わりを知り愛と憎しみの中でこの抗争を利用した復讐計画を・・・。柩は矢代の乗ってきた小型トラックに積まれ、大きなハスの花を飾って村人たちが二本の縄で引いて行った 新潮社(2001年)
ハナズオウ 銀簪の翳り 北沢彦太郎 川田弥一郎 定町回り同心彦太郎は命ぜられた死人事件の検屍の疑問から医師や似顔絵師、岡っ引きの力を借りながら真相を追及し、事件を解明して行くが・・・。濡れ縁の向こうの庭では、花蘇芳が暖かい春の日差しを吸い込んで、まるで蝶が枝に群がっているような形の、紅紫の美しい花を咲かせていた 読売新聞社(1997年第1刷)
ハナダイコン うしろ姿
むらさきの花
中井隆次 志水辰夫 田舎町で小さなバイク店をしている隆次はたまに来る客を待ちながら外に出ることなく暮らしていたが、、こじらせた風邪が治りリハビリに川の土手の散歩を始めてハナダイコンの花を・・・。第一亭主がなぜそんなに気色ばんでいたか、冨美子には理解できないみたいだった。おそらくハナダイコンといったってわからないだろう。田舎で生まれ育った人間にしては、というよりむしろそのせいで、冨美子は花や木に対する関心がおどろくほど低かった 株)文藝春秋社(2005 第1刷)
バナナ アンダードッグ 井出亮二 海野碧 小さな軽食喫茶店をしてい亮二は学生時代にバンコクで知り合ったハルオと新宿で出会い、当時の遊び仲間との同窓会をきっかけにハルオの自殺騒ぎがに巻き込まれ17年ぶりにバンコクへゆく羽目になるが・・・。大声で呼びかける英語の声がして、藪の向こうから右手に拳銃を持ったソムチャイが、左手でw脇腹を抱えながら左足を引きずって、野生のバナナの葉を掻き分けながらゆっくりと近寄ってくる 実業之日本社(2009初版 第1刷)
ハマナス ベーコン随筆集 フランシス・ベーコン フランシス・ベーコン ベーコンは随筆集の中で庭園について月毎に美しい花が咲くように植えることが望ましいと述べた後、入り口に緑地、出口に荒れ野、中央に主要な庭の3部分が必要で、荒れ野は自然の野性味にのっとって作りたい、その中には立木は植えぬこととし、ハマナスとスヒカズラ、それからそれに雑って若干の野葡萄からなる茂みだけにする・・と書いている 岩波文庫 神吉三郎訳(昭和40年第26刷)
ハマボウフウ 智恵子飛ぶ 長沼智恵子 津村節子 智恵子は高村光太郎の滞在する犬吠埼を訪ねて同じ暁鶏館に宿をとって、毎日連れだったスケッチに出かけた。君ヶ浜の砂地に群生している植物を、浜防風だ、と光太郎は智恵子に教えた。柄が赤く、茎の先に白い小さな花を多数つけているのが可憐である。刺身のつまについているでしょう。根は煎じて風邪薬になります 講談社(1997年第一刷)
バラ   山手線のあやとり娘(思い出のV) 深井貴美絵  中井紀夫  塩田淳也は返済に一生かかるようなローンを組んでタイムマシンを購入し、規定に違反する25年前の過去にとセットさせた。・・・。肉も骨も内臓も脳味噌も、すべて渾然となって溶け流れて大地に染みこみ、その大地のうえを埋めつくして幾千本もの深紅の薔薇の花が繚乱と咲きみだれている。そんな感じがした。   波書房( 1992年初版)
バラ   代理処罰 岡田亮  嶋中潤 サラリーマン岡田はブラジルに帰った妻と別れ、週末に二人の子供を預けた母親のところに帰っているが、娘を誘拐したとの電話がある。二千万円を母親が届ける条件で・・・。怒りがこみ上げてきたそうです。理由を尋ねたところ、悠子さんが供えた白い花がどうもバラだったらしく、墓前に棘のあるバラを供えるなど非常識にもほどがあると思い、強い口調でたしなめたそうです  光文社(2014年初版第一冊)
ハルリンドウ 秘剣
の黙示
長沼智恵子 多田容子 市井の提灯屋重吉の娘おれんは天下の兵法如月流の影の宗家として七代目宗家を継ぐべく父重吉こと如月重四郎から教えを・・・・。おれん、道すがら摘んだ青紫の春竜胆を供えた。重吉や自分は、おこうにひどいことをしていたようだ、全く・・・拙い嘘を重ねてきた 講談社(2001年第一刷)
ハンノキ 山彦ハヤテ ハヤテ(勝吉) 中米村圭伍 塩陸奥折笠藩のお留め山で一人で生きていた少年ハヤテはお家騒動渦中の新藩主正春を助けたことから町中に出てみて次第に人と交わり世間を知るようになる・・・。ハヤテはハンノキの密生を抜けて岩場を下り、正春を助けた川原に降りました。麓の村に直接出たのでは、天狗山に住んでいると気づかれてしまいます  新潮文庫(平成23年初版
ヒイラギ  風車の浜吉捕物綴
似顔絵の女(月夜駕籠)
風車の浜吉  伊藤桂一 浜吉は5年ぶりに江戸へ舞い戻って小石川伝通院で風車を売ってが、昔の力を見込まれて事件の捕り物に担ぎ出されることが多い・・・。根津宮永町の浜吉の家でも、門口に、柊の枝先に鰯の頭を刺した厄除が打ち付けてある。正月以来、風車売りの稼ぎも忙しいから、毎日、風車つくりにいそしんできた。浜吉は、根津の親分といわれるご用聞きだったが、故あって犯科人を見逃した咎で、十手取縄を召し上げられ、5年の間、江戸から追放されていた  株)新潮社( 1995年)
ヒエ  風を断つ 由比三四郎 池永陽 寺子屋の師匠をしながら通い女房お里と暮らしている秘剣氷柱折りを使う浪人三四郎は、幕府と薩摩の隠密群から監視されている風銃研究家の伊十から用心棒を頼まれたが・・・。稗や粟の味付けの、野草の食べ方など貧乏話しに花が咲いた。そんな話の終わりにおせんは必ずこういった。「なじょして、こんなにあたしたちは貧しいんだなし。悲しいね。とっても悲しいね」  株)講談社( 2011年第1刷)
ヒオウギ  嫋々の剣
破鏡の妻
菅沼外記
妻畹
澤田ふじ子 七万石膳所藩中老の菅沼外記は松尾芭蕉が客死した幻住庵を提供したほどの高足だったが、藩の国家老の専横ぶりに私怨を理由に討ち果たし家を断絶させるが、後に家名再興の使いに対し、破鏡と号した妻は肯かなかった・・・・「ところでそこに活けられている檜扇はいかがしたのだ。屋敷内に檜扇など咲いていなかったはずだがー  徳間書店( 1990年第1刷)
ヒガンバナ  一朝の夢 中根與三郎  梶ようこ 與三郎は北町奉行所で閑職の両組御姓名掛で趣味の朝顔作りに魅せられてあくことが無かったが、朝顔の縁で幕末動乱の中を駆け回る要人や浪士の騒動に巻き込まれる中で黄花の朝顔作りに情熱を注ぐ・・・。墓地は本堂の裏手にあった。線香の煙があたりに薄く漂っている。右奥から二番目が村上家の墓だった。その脇には彼岸花が青々とした緑の葉を真っ直ぐに伸ばしている   文藝春秋社( 2008年第1刷)
ヒトツバタゴ 文章探偵 左創作 草上仁 ザ・ノベル講座の講師左創作は、講座受講者が提出した原稿を材料に作者の年代や考え方を推理しながら作者を特定して文章指導をし、各種新人賞を目標とする受講者を支援・・・。バイクで駅前まで二十分そこそひ。伊佐美大橋を通る。キイワード:ヒトツバタゴの花。通勤途中にバイクショップ?ノースタンドで駐車可能な場所? 早川書房新社(2006年初版)
ヒナゲシ 惜春 藤川紫乃 井上明久 目次の配置構成で考え込み、主人公は誰かと考え、紫乃は生きているのか、遠野さんと峰塚君は高等遊民だ等々、漱石を思い起こすような小説だなあ。・・・でも、ホラ血の痕だ。違う、唇の痕だ。やっぱり、血の痕だ。唇だ。血だ。唇だ。血だ。唇だ。血だ。唇と血が濃い紅色の花を印したのだ。小さな雛罌粟のように。 河出書房新社(2000年初版)
ヒノキ 銀閣建立 橘三郎衛門 岩井三四二 公方番匠の橘三郎衛門は父である棟梁の右衛門の下で前将軍足利義政が東山に建てる山荘の内の山上亭を請け負い苦労しながら木曾の檜を運ばせて完成させた後、観音寺(銀閣寺)も請け負うことになる。木曾谷の檜は優良の木材とされている。やわらかくて加工しやすい上に、腐りにくく丈夫で長持ちする。 講談社(2005年第一刷)
ヒノキ しだれ柳 片桐晋悟 荒崎一海 江戸城御膳所御台所人の3男坊晋悟は無海流小太刀の皆伝ながら半ば勘当の身を覚悟でおちよと暮らし一膳飯屋をしているが、客の6千5百石の元書院番頭や奉行所役人等との関係で多くの事件に携わって行く・・・晋悟は声をひそめた。「御前、二軒目の横の檜に、潜んでいる者がおります」「左内に頼まれたか」晋悟はうなずいた 徳間書店(2009年第一刷)
ヒノキ 遠い国からの殺人者 シエラ・A・ラウロン 笹倉明 フィリピンから出稼ぎに来たシエラはヤクザ組織の網の中でストリップの踊り子等で家族に仕送りしていたが、悪質なひもを争いで殺して逃亡する。シエラのために姉御肌の踊り子仲間や逃げ込んだ酒場のマスター等に弁護士が加わって正当防衛裁判に・・・。まだ世には出ていない二流三流のタレントがほとんどで、明日はヒノキになろうといった意味の社名がいい得て妙だ 株)文芸春秋社(1989年第2刷)
ヒマラヤスギ ゼロの焦点 板根禎子 松本清張 新婚の夫鵜原憲一が行方不明になり行方を捜すうちに亡き夫が昔警察官をしていた事実が判明、さらに義兄や関係者の死亡事件が続く中で夫が他人名義で自殺していることが分かり、禎子の調査は確信に迫って行く。長い塀がある。和洋折衷の瀟洒なその文化住宅に見覚えがあった
。禎子は、そこでタクシーをおりた。その庭にも特徴のあるヒマラヤ杉があり、棕櫚があり、梅の木があり、垣根には枯れたバラの蔓が這っている
新潮文庫 平成21年20刷
ヒマワリ 大江戸人情花火 玉屋清七 稲葉稔 花火屋の鍵屋から暖簾をもらって玉屋を再興した清七は花火師の腕と女房おみつの才覚もあって次第に評判を上げ鍵屋を凌ぐ地位を固めてゆくが・・・。「おれにいわせれば、今の花火は半割れだ。星は伏せた茶碗のようにしか広がらない。まん丸い、お月さんのような、それこそ向日葵のような丸い花火を作りたい、だができない 講談社間(2007年第一刷)
ヒマワリ 国境の南・太陽の西 島本さん 村上春樹 国境の南、太陽の西のヒステリア・シベリアナ、僕は大地につっぷして死んでゆくシベリアの農夫の姿を思い浮かべた・・ナット・キングコール。そこでは島本さんは十六の少女で、庭のひまわりの前に立って、ぎこちなく微笑んでいた。「結局、私はあなたに会いに行くべきじゃなかったのね。それは最初から私にもわかっていたのよ。こうなるだろうことは、よそうできたのよ。でも私にはどうしても我慢することができなかった 講談社村上春樹全作品2(2003年第1刷)
ヒメシャラ 傀儡 叉香 坂東眞砂子 タクラマカン砂漠から仏の道を求めて鎌倉に辿り着いた沙依拉夢は、騒然とした世情の中で傀儡と知り合い山賊と行動を共にしながら、色即是空の意味を問い続け、砂漠の仏教と傀儡の住まう日本の仏教は違うと思い知り・・・・。風になびくもの ひめしゃらの梢 竹の梢 空には浮雲 野辺には花薄 山賊の背なる傀儡女の心 集英社( 2008年第1刷)
ヒメジョオン 庖丁人轟桃次郎 桃次郎 鯨統一郎 割烹ふく嶋を経営する彩乃が雇った板前桃次郎は抜群の料理人で、次々と挑戦される料理対決に意外な食材を使って勝ち抜くが、同時に町の悪人が殺されてゆく・・・。学校からの帰り、将人は空き地に咲いているヒメジョオンの花とタンポポの花をたくさん摘んだ。明日、母親にプレゼントするためだ 株)早川書房( 2005年初版)
ビワ 山手線のあやとり娘(昔聴いた曲) 洋子 中井紀夫 ほんとうのわたしをちゃんと見て・・洋子と別れることになった原因をずいぶん捜した。ぼくの強引なプロポーズはエリック・サテイのピアノ曲グノシェンヌに作用されたらしいが・・・。ここはぼくの生まれ育った家だ。~。縁側から、いつも登って実をもいだビワの木をながめていると、いくぶんかなりとも癒しをえられるような気がした。 波書房( 1992年初版)
ビワ 145gの孤独 倉沢修介 伊岡瞬 死球事件を心に引きずったまま引退し便利屋をしている元プロ野球選手の倉沢は、付き添いの仕事で心の奥底に傷を抱える依頼者達に必要以上に深入りして自分の傷を誤魔化しているが・・・。なぜか?また見つけてもらうためさ。俺はさ、本当はビワだのオチジクなんか食いたくなかった。本当はその子が見たかったんだ 角川書店(平成18年初版)
フキ 塵袋 第三 草鳥 平凡社 鎌倉時代中期語原探索エッセー集で、第一の天象から第十一の畳字(熟語)まで619項目について説明がある。草の部・・款冬ハ春ノ末ヘニサク物也。但シ誤綻ト云エルハ、イカニトアヤマルゾ。本草ニ、款冬ヲ釈スルニハ、山川ノ辺水ニトカヅキテ、冬十二月ニ花サ物也 角川書店(平成18年初版)
フキ 津軽隠密秘帖 甲斐庄正水 平凡社 幕府御目付甲斐庄正水は上司の若年寄から津軽藩の内情探索を止めるよう指示されつ中で、津軽隠密群と幕府との深い関係を知ることになり・・・。津軽では(津軽七草)と言って蕗の苳・葱・豆・もやし・芹・なずな・はこべを指すそうだが、なかでも、春先に雪を掻き分けるように萌え出てくる蕗の苳は、格別の味ということだ 株)河出書房新社2005年初版)
フキノトウ 早春の化石 神山健介 柴田哲孝 福島の私立探偵神山は、二年前に殺された姉の遺骸を発見して欲しいという奇妙な依頼を受け、捜査をはじめたが思いがけない事件が続いて捜査は行き詰まる。事件の裏にうごめく蔭・・・。周囲の山々に、春の気配は日々を重ねるごとに増していく。森の中に野鳥が囀り、樹木の梢にはまだ固い蕾がふくらみはじめている。佳子は朝からフキノトウを採りに出掛けていた 祥伝社平成22年初版第1刷)
フクジュソウ 月山・鳥海山 無名の男 森敦 鶴岡市の方丈の紹介で出羽の霊山・月山の山ふところの注蓮寺に厄介になっている男は、村の人々と様々な関わりを持つが、雪の中源助のじさまの家へ野ウサギの昼食に招かれると、つぼの雪が取り除かれていた。「福寿草ですかね、あれは・・・」ふと夢み心地になりながらそう訊くと、「ンだ・・・」 文春文庫 1979年第1刷
フジ 秘剣奔る
静山剣心帖
松浦静山 新宮正春 甲子夜話を世に出した肥前平戸藩主だった静山はまた心形刀流の達人で、巷の噂話や町道場を含む他流の剣術の話を聞きながら剣の奥儀を究めようとしているが・・・。庭に植えられている珍しい花や木は、静山の三代前の藩主篤信が隠居後に集めたものだった。その中でも、紫と白の藤は、格別に珍しいとされ、諸侯のあいだでも評判となった 新人物往来社 1997年第1刷
ブナ 光の山脈 ロッタ(六田賢司) 樋口明雄 幼少のころ自閉症と言われたロッタ(賢司)は南アルプスの自然の中で猟をしながら失語症の妻亜希と暮らしていたが。・・・いわれて亜希は向きなおった。目の前に青々と苔むした、あのブナの大木があった。「この森のおじいちゃんなんだ」若者の言葉に面くらいながら、いまいちど、そのブナを見上げた 角川春樹事務所(2004年第2刷)
ブナ もう君を探さない 高梨龍平 新野剛志 七年前に自殺した教え子を救えなかったことに負い目を持つ元暴走族だった女子高教師の高梨は、夏休みに突然家出した教え子を探すべく奔走するが・・・。このブナ林はいつも気持ち良かった。照りつける太陽を濾した木漏れ日は穏やかで、谷を渡風が爽やかに肌の汗を乾かしてゆく。明るく、いつも元気に動き回っていた安子が、この森で、一本の樹にしがみついているはずがなかった。私などに囚われているはずもない 講談社(2000年第1刷)
ブナ トゥエルブY.O. 平貫太郎 福井晴敏 たった一人のテロリストに屈して沖縄のアメリカ海兵隊が撤退したのは、最強のコンピュータウイルスアポトーシスⅡと謎の兵器ウルマを使った「12」の仕業だったが・・・・。走り出して10分弱。坂部はブナの木が立ち並ぶ林の前で車を止めた。「まっすぐ歩いて行けば会える」と言ったきり運転席を倒し、居眠りの態勢に入った坂部を置いて・・ 講談社文庫(2004年第14刷)
不明高木 緑の館 リマ W・H・ハドソン 南米ベネズエラのオリノコ川を遡ってついた集落の隅に住み着いたアベルは、原住民がデイデイの娘が居ると恐れて決して入らない森の中で今は滅んだ一族の娘リマ出会って愛しあうことになるが、原住民に追われて150フィートもある高い木に逃げたリマは火を付けられてアベルの名を呼びながら死んでいった。この小説で個別の草木名は出て着ないので、高木の名も判らない 角川文庫 守屋陽一訳(昭和42年第11刷)  
プラタナス 新編琅玕記
南蛮酒について)
新村出 新村出 京都先斗町に住む広辞苑の編者新村出氏の語源を探る随筆集。昭和5年に改造社から出た琅玕記61編の内30編を収めた文庫版で、愛、右と左の源散等興味深いもの満載・・・。正月の半ごろだと思うが、烏丸通のプラターヌスの街路樹を電車の中からじいっと見入っていたと、ふと前々から念をかけていた南蛮酒の看板のみが一枚特に目に入ったのであった 旺文社文庫(1981年初版)
プラタナス 凍樹 高桐布結子 斉藤純 地方の町立美術館学芸員布結子は心の傷を引きずりながらも誇りを持って専門職として仕事を続けているが、心惹かれるトランペット奏者佐久間檀との付き合いの中でジャズの世界に・・・。日差しがあるときと違って風が冷たい。布結子はコートのボタンをきちんとかけ、プラタナスの枯れ葉が舞う舗道をワシントンスクエアに向かって歩き出した 講談社1998年第一刷)
プリベット ドルリーレーン最後の事件 ドルリー・レーン エラリー・クイーン 耳は聞こえないが優れた探偵能力を持つ元シェークスピア役者ドルリー・レーンが導入とも言えるX・Y・Zの事件の後に挑んだ最後の事件の解決として示したのは、、サム警部達が隠遁生活を送るハムレット荘を訪れた時、プリベットの低い生け垣ごしに、錆びたベンチに、背中を向けて腰をかけた自身の姿だった ハヤカワポケットミステリー砧一郎訳(昭和32年発行)
ブルーポピー 未踏峰 橘裕也 笹本稜平 ハンデイを背負った三人の若者は山小屋を経営する伝説の登山家に出逢い、一緒にヒマラヤの峰に挑む訓練のさなかに登山家は事故死するが未来の希望を求めた登山家の気持ちを想う若者たちは逃げることなく・・・。とくに目を惹かれたのはヒマラヤの靑いケシと呼ばれるブルーポピーだ。ガイドブックによれば、一般的なトレッキングルートではそうお目にかかれない幻の花らしい 祥伝社平成21年初版 第一刷)
ヘチマ 居眠り磐音江戸双紙 どてら金兵衛 佐伯泰英 居眠り磐音が住む深川六軒堀町の金兵衛長屋の大家金兵衛は、木戸口に植えているヘチマの蔓を切ってヘチマ水を作る(3ー花芒の海)  双葉文庫さ-19-03(2006年29刷)
ペンペングサ 命賭け候 浮世絵師
宗次
門田泰明 妖し絵で評判の絵師宗次は楊真流の達人でもあるが、奉行所から助力を求められた酒問屋伏見屋の内儀が殺された事件で幕府の隠された秘密に繋がる己の出生の経緯に繋がりがあることを知る・・・。五段の石段を上がって境内奥に見える本堂などは、屋根瓦の多くが落ちてペンペングサが生え茂り、濡れ縁は崩れてとても歩けるものではなかった  株)徳間書店(2008年第1刷)
ペンペングサ 果つる底なき 二都銀行渋谷支店伊木代理 池井戸潤 二都銀行渋谷支店融資課課長代理の伊木は友人の回収担当代理の坂本の突然死が殺人らしいと気づき、融資に絡む闇組織の策動に立ち向か決意をするが・・・・。工場とマンションンとの間に閑散とした脇道があり、両側にぺんぺん草の生えたU字溝が埋まっているた。それに落とさないようにシビックを脇に寄せた  株)講談社(1998年第一刷
ホウセンカ 朱雀の闇 丹波景 高野裕美子 飛騨雛乃村の2つの造り酒屋の衰退に絡んで生じた両家の子供達の確執と憎しみ、成長して花火師となった因縁の復讐劇、故郷への思いを込めた新作の朱雀と流ボタルは夜空に高く上がった・・・・。しょうづ留の高山秘日だ野んだ  光文社(2005年1版1刷)
ホウレンソウ 隠蔽捜査 竜崎伸也 今野敏 東大卒キャリアの竜崎は警察庁長官官房総務課長で官僚は国家のために死ぬ覚悟で尽くすことが本分と信じて、保身や手抜きの仕事を軽蔑して周囲と軋轢を起こしながら・・・。竜崎は大きく息を吐いた。サワラの西京焼きとほうれん草のおひたしをつまみながら、さらにもう一本缶ビールを飲んだ  新潮文庫平成21年15刷
ホオズキ  グレイメン 柚木怜  石川智健 職場の皆に苛められている遼太郎が自殺しようとする場で声をかけられたグレイメンに案内された事務所には様々な理由で自殺しかけた仲間が集められ何かの目的に向かって活動していた・・・ 。遼太郎は感嘆した。よく見ると、梅、桜、向日葵、鬼灯、薄、コシモス、水仙、冬牡丹があり、春夏秋冬の花々が一堂にひとつの花瓶に活けてあった  株枻出版(2012年第一版第1刷
ホオノキ  絃鳥  (末次)路  藤沢周平  代々二百石を頂く家柄の物頭を勤める末次家で婿を迎えている路は、無外流を指南していた亡父三左衛門から工夫した不敗の剣「風籟」の型を伝える口伝を密かに受け継いでいたが・・・ 。隣家の杉浦家との境界のあたりには、杉のほかに朴の木、李、えごの木などが寄りあつまって鬱蒼とした木立になっている  株文芸春秋オール読物昭和63年臨時増刊号 昭和の時代小説50篇
ボタン  柳影 られん香柳次 多田容子  陰間茶屋茉屋の売れっ子で、られん香の柳次と呼ばれる柳次は、表と裏の世界に棲みながら心底から生きている証を求めていたが、幕府裏隠密の茶屋主との縁もあって府内連続殺人事件の容疑者の招きに・・・。慈光院の閑居は、牡丹庵と呼ばれ、春には紅白の牡丹が咲き乱れる。夏は小池の菖蒲、秋には柿の実がたわわになり、近所から童達が集まった  株講談社(2000年1刷)
ボタン  深尾くれない 深尾角馬 宇佐江真理  因幡鳥取藩の馬廻藩士深尾角馬は短躯ながら剣法指南役を務め、傍ら牡丹栽培に情熱を注いで深尾くれないと噂される名花を作り上げるほどだったが、反骨の故に妻を切り捨てても・・・。「まだ足りんがよ」ふきの言葉に挑発されるように角馬は次々と牡丹の根を引き抜いた。途中からふきも一緒になって引き抜いた。揚句、再び使い物にならぬように角馬は足で踏みにじった  新潮文庫(平成10年1刷)
ポプラ あきらめのよい相談者 弁護士剣持鷹士 剣持鷹士 イソ弁の剣持鷹士は高校以来のの友人2人と定期的に飲みながら様々な情報交換をする中で、親しい仲間がコーキと呼ぶ友人の、物事の本質を見抜いて合理的に説明する能力のお陰で事件解決に至ることが多い。良いヒントをもらっての帰り、特に必死で張りついているポプラの葉は今にも突風に負けて、その身を引きはがされそうとしていたが、その風さえ今日の僕を一瞬たりともふらつかせることはできなかった 東京創元社(1995年初版)
ポプラ 償い 日高英介 矢口敦子 脳外科医だった日高英介は多忙で家庭を放棄したことから子供と妻を亡くし医師を捨てて光市の公園でホームレスをしているが、研修医の頃に助けたことのある少年に再会、市内で起きた連続殺人との関係に生じた疑惑を調べる気になった。夕子の揺るぎのなさは、日高の故郷の河岸に立つ一本のポプラのようだ 幻灯社文庫(平成20年18刷)
マキ 八州回り桑山十兵衛 桑山十兵衛 佐藤雅美 九十表三人扶持の御家人で関東取り締まり出役の十兵衛は外回りのお勤が性に合い、八州様と呼ばれる百姓・町人の治安維持の仕事で様々な事件に遭遇するが・・・。枝振りのいい槇の木が左右に植わっている庭をぼんやり眺めていたら、放し飼いになっている鶏が三羽、ひょこひょこやって来て草の実をつっこんでいる 株)文藝春秋(平成8年第1刷) 
マタタビ 雪国 島村 川端康成 駒子はコオトに白い襟巻をして、駅まで見送ってきた。またたびの実の漬物やなめこの缶詰など、時間つぶしに土産物を買っても、まだ二十分も余っているので駅前の小高い広場を歩きながら、四方雪の山の狭い土地だなあと眺めていると、雪子の髪の黒過ぎるのが、日陰の山峡の侘びしさのためにかえってみじめに見えた 現代日本文学館24(小林秀雄編集) 川端康成
マツ ジャン・クリストフ ジャン・クリストフ ロマン・ロラン (訳文そのまま)聖クリストフは河を渡った。夜どおし、彼は流れに逆らって歩いた。頑丈な手足を持つその体は、岩のように、水流から出ていた。左の肩には、か弱くて重い「幼児」がのっている。聖クリストフは、引き抜いてきた松の木に体を支え、木は撓む。彼の背も撓む 筑摩書房 世界文学全集43ロマン・ロラン 高田博厚訳(昭和45年第1刷)
マツ 夢助千両みやげ
(ちんぴら狼)
夢助 山手樹一郎 ようやく夢助と所帯を持ったが、本当の夫婦に成るよう寝化粧を濃くして友禅の長襦袢に着かえていたお銀だったが、相変わらずの風体言動で江戸市中を歩いて人助けをしていた夢助はある日、突然走ってきた小僧に突き当たった・・・。おどろいたことに、夢助がいうなりに三十両。小判で渡してやると、狼小僧はすぐかたわらの大きな松の木を見上げておいて、おい、もういいぜ、と声をかけた 株文芸春秋オール読物昭和63年臨時増刊号 昭和の時代小説50篇
マツ 札差弥平治事件帖 弥平治 海渡英祐 十八大通の一人の血筋である札差の弥平治は吉原での豪遊の代わりに捕り物の謎解きにに生き甲斐を見いだし、河原崎座の立役者で売り出し始めた二代目河竹新七と一緒になって事件を追って動き出す・・・。あきれたような顔をして、弥平治は枯野の一点に目をこらした。いじけたような松の木がひょろりと二、三本立っている当たりに人影は一つ認められたからである 株)徳間書店(1998年第一刷)
マツ 烈風の港 蔵田悟郎 石川渓月 元高校教師で居酒屋の悟郎は15年前生徒を助ける騒ぎの中チンピラを殺したことがあり、地元で進む大型プロジェクト事業の利権を調査していた教え子が殺されたことを知り真犯人を・・・。松の木を支えにして立ち上がり歩きを始めた。一歩進むたびに息ができなくなるほどの痛みが胸に突き刺さった。足は止めなかった。清水は沙織を連れて逃げられたのか 光文社(2012年初版第一刷)
マユミ ウエッジ選書15
あくがれ
わが和泉式部
和泉式部 水原紫苑 宮は余裕ありげに言って、立ち上がった。庭に出て、家の前の透垣のもとに、檀の葉が少し色づいていたの手折り、高欄に寄りかかって、言の葉ふかくなりにけるかな 葉が色づいたように、二人の間に交す言葉も、心が深くなりましたね。 と、宮は詠みかける。白露のはかなくおくと見しほどに・・・ 株)ウエッジ(2012年第1刷)
マユミ 蘭陵王の恋 神林麻太郎 平岩弓枝 御宿かわせみは旧幕時代と変わらずるいが取り仕切って繁盛しているが、東吾の子麻太郎は22歳となり築地居留地のバーンズ診療所の医師として働きながら父親譲りの推理力を生かして持ち込まれた事件の解決に・・・竹内先生はマユミという植物をご存じありませんか。実を申すと、私も知らなかったのです。生来、風流とは無縁で月にも花にも関心がなく 株)文芸春秋(平成25年第1刷)
マロニエ 私立探偵・麻生龍太郎 麻生 柴田よしき 刑事を捨てて私立探偵になった麻生は裏社会に生きる練への償いに拘りながら、引き受けた事件の依頼者の真の狙いを追求してゆく・・・。その街路樹がマロニエだと教えてくれたのは、誰だっただろう。何度かこの街を事件がらみで訪れて、その間に知り合った所轄の人間の誰かだった気がする 株)角川書店(平成21年初版)
マンジュシャゲ 修羅の旅びと ジャン・クリストフ 典厩五郎 刑務所の看守長降旗雄介は同僚刑務官が殺害された事件を調べるうちに甲州の山奥赤霧の里出身の志奈子に惹かれるようになるが・・・。河上に続いて居房に入った瞬間、雄介は目を見張った。鉄格子の窓際にある、野口こと新開順の曼珠沙華が紅の花を満開にしていた。狂い咲きだった。 株)文芸春秋(1990年第1刷)
ミズキ 山妣 ジャン・クリストフ 坂東眞佐子 駒ヶ岳の見える女郎屋に流れついた君香は女将の金を盗んで男と山に逃げ込んで裏切られて死にかけたところを渡り又鬼に助けられ、山中で子供を産む・・・。なにがどいうど、自分は子供を産まねばならねえ。それで水木の枝を敷いてくださいというんだど。その夜、女は子を一人産み、二人産み。十二人まで生んだど 株)新潮社(1997年第3刷)
ミズバショウ 天狗 喬子 大坪砂男 宿で出された蕎麦をひと皿余計に胃の腑に納めたことに起因する明け方の厠で起きた喬子の洋褌咫尺事件に関して生じた感情の歪みは、3日間部屋で思索した結果、理性をXとし、感性をYとして数式に示せば明瞭なように、二元一次法定式で解決ができる・・・。この先が名にし負う岩参道の、地面があるかと思えば湿地帯で、季節には水芭蕉の茂みに蝋燭のような花を並べるとか。 角川文庫日本代表ミステリー選集9中島河太郎 権田萬冶編(昭和51年初版)
ミツマタ 役の小角 小角 黒須紀一郎 蘇我宗家の部曲である葛城の加茂一族の頭の子小角は、父から遠い昔、韓半島から進入してきた勢力の葛城一族に弾圧され支配されるまでは加茂一族の地だったと聞かされて育つ・・・・。小角は、岩穴の前に生えているミツマタの木の下に座っていた。入山して。二年目の春が巡ってきた。陽光がミツマタの若葉を透かして、萌黄色の光を小角の頭上に注いでいる 株)作品社(1996年第1刷)
ミツマタ 其の一日
小の虫
小角 諸田玲子 小島藩士寿一郎は9歳で急死した父の跡を継いだが、ふとしたきっかけで普通でない我が家のありようが見えてきた時、亡き父が黄表紙作家恋川春町で・・・。米の代わりに紙で年貢を納めてもよいと定めたために、農民は我も我もと三椏の生産をはじめた。未だ藩を潤すまでにはゆかないが、駿河半紙のお生産量は年々上向きになっている 株)講談社(2003年第2刷)
ミネザクラ 銀狼王 山立猟師二瓶 熊谷達也 明治20年の北海道、日高の山に巨大な銀色の狼がいると聞かされた二瓶は、愛銃ウインチェスターM1873を手に愛犬疾風を連れて単身厳冬の新冠の山中に踏み込んで狼を追い始めるが・・・・。ミネザクラやカエデなど、低木が多くなっている林のへりに、数えてみると、5頭の蝦夷鹿の群れがいた。狼たちが追っている鹿の群れに違いなかった 株)集英社(2010年第1刷)
ミネバリ 櫛挽道守 小角 諸田玲子 中山道木曽薮原宿の元祖お六櫛の櫛師で神業と称される吾助の長女登瀬は、ただひたすら父親のような櫛を作りたいと何もかも捨てて櫛づくり一筋に励むのだが、黒船が来て新しい時代へ足音が聞こえる頃、弟子入りした実幸が婿養子となり・・・。鉱物さながらに堅いミネバリの櫛木も、鋭く研いだ粗鉋の前ではいたく直だ。するすると薄く皮を削るときの滑らかな感触は、登瀬をたちまち虜にする 株)集英社(2013年第1刷)
ミヤコザサ 入らずの森 金沢圭介 宇佐美まこと 愛媛県の山奥の中学校教師になった圭介は、入らずの森と恐れられた奥深い山中に生息する粘菌の恐ろしい能力に絡む事件を解く鍵が失われた校歌の3番にあると気づいて・・・。ミヤコザサが風に吹かれてザワザワと鳴った。大ぶりの笹の葉の上には昨晩の雪が薄くのっていて、それが風に伏き飛ばされてゆく 祥伝社(平成21年初版第1刷)
ムクゲ 風待ちのひと 福井喜美子 伊吹有喜 心に風邪を引いて海辺の町に来た哲司は同じく心に傷を持ったまま懸命に生きている喜美子と出会い、徐々に生きる喜びを取り戻してゆく・・・・潮騒が響いてきて、木槿の花のまわりを飛ぶミツバチの羽音が聞こえた。タオルケットに顔を寄せると、日向の匂いがして、心地よく肌にまとわりついた 株)ポプラ社(2009年第1刷)
ムクゲ 炎いくたび 高台院湖月尼 内村幹子 秀吉亡き後も25年生きて大阪城と豊臣恩顧の武将達の生き様を見続けた寧々の悲しみと天下人太閤の妻だった矜持を描いた小説・・・・。織田家に仕えたころは、同じ長屋に隣り合って住み、垣根ごしに朝夕の挨拶を交わした仲だった。木槿の垣の間から、気楽に行き来した。味噌も漬け物も分け合った。懐かしい思い出だ 新人物往来社(2008年第1刷)
ムクノキ 忍者月輪 萱生伝兵衛 津本陽 伊賀の忍者伝兵衛は織田家の京都所司代に雇われて諜報能力を発揮しているが、信長の動きにつれて各地の武将が激しく相争う中で世の移るさまをわが身に置き換えて・・・。太い椋の木の傍を通りすぎるとき、「助七、大儀や」と声をかける。椋の葉むらのなかに上体を隠し、足を枝にかけ、ももんがあのようにぶら下がっていた門人の三味田助七が、地面に飛び下りた 中央公論新社(2014年初版)
ムシカリ 剣岳(点の記) 芝崎芳太郎 新田次郎 山の案内人宇治長次郎を頼んで剣岳登山の下見で室堂経由の登山中、ブナの樹林の中の陽が差し込むような隙間があると、必ずといっていいように赤い実をつけた灌木があり、長次郎に名を聞くと、ムシカリと答えた。芝崎は新妻の葉津よに見せてやりたいと思った 文春文庫2-1-34 2009年第13刷
メタセコイア  八日目の蝉 野々宮希和子  角田光代 希和子は愛人だった男の家から生後6ヶ月の女の子を盗み出して薫と名付け、転々としながら3年後の秋小豆島で捕まって薫は実家に帰る。薫は大学2年の秋愛人の子を妊娠、過去の呪縛から抜け出せない自分や親を認識する・・・私たちの頬にはまだニキビがあり、目の前には難解なフランス語が書かれたままの黒板があり、廊下から陽気なざわめきが聞こえ、窓の外にはみっしりと葉をつけたメタセコイアが陽を浴びている   中央公論新社( 2010年20版)
モウソウチク 野中宗助 夏目漱石 野中宗助は、大学を辞め親を捨てて御米と社会の隅でひっそりと暮らしていたが、家主との交際の中で6年前に信頼を裏切って妻とした御米の婚約者だった親友安井の消息を聞き、思い惑って鎌倉の禅寺に参禅し、父母未生以前本来の面目は何かの公案を与えられるが・・・。宗助は思い出したように立ち上がって座敷の雨戸を引き縁側へ出た。孟宗竹が薄暗く空の色を亂す上に、一つ二つの星が燦いた。  夏目漱石全集第十巻(明治文学刊行会昭和23年発行)
モクセイ 九月が永遠に続けば 冬子 沼田まほかる 突然いなくなった息子文彦を捜す水沢佐知子は、事情を知るかも知れない別れた夫の子冬子に会いたいと思っていたが、マンションに帰ると植え込みの辺りに冬子が立っていた。冬子は佐知子が近づく間に側のモクセイの葉を指で細かく裂いた。 新潮文庫ぬ21 平成23年第6刷
モクセイ 白い闇 冬子 五十嵐均 突警視庁捜査一課強行犯係長の鴨志田は、英語力でアメリカ大使館員等との連携役も兼ねているが、横田基地の側で起きた幼女暴行事件に絡んで米兵犯行の可能性も含めた対応を迫られる・・・・メアリーは身体を寄せてきた。木犀から採ったらしいオーデコロンの香りが、夏背広の鴨志田を包んだ 読売新聞社(1997年第1刷)
モクレン 蛍の森 山折小春 石井光太 古い因習が色濃く残るの残る戦後、雲辺寺を目指す遍路道の途中にある山中の集落で起こったヘンド・カッタイに対する差別と人権蹂躙事件に端を発する殺人事件、言われなき差別の中でそれでも生きてゆくのか・・・。庭にはキキョウとモクレンが植えられており、川から引いた水が流れ、二人の家政婦が代わる代わる庭仕事をしていた。この屋敷の隅にある納屋に、妾となった母は乙彦と暮らした 株)新潮社(2013年)
モチノキ しずり雪
(虎落笛)
沢木祐真 安住洋子 藩の上層部が関わった不正事件で殺さた勘定方の父の死因解明を思いながらも江戸に逃れた祐真は、街火消与力の養子となり過去を忘れようと千歳を嫁に迎えるが・・・・。格子戸を開け、訪ないを告げる。暮れなずむ中、格子戸の脇のモチノキの赤い実が揺れていた。玄関の戸が開いた。出てきた母親は祐真を認め、「沢木の」と呟いた 小学館(株)(2004年初版第1刷
モミノキ 切羽へ 麻生セイ 井上荒野 セイは小さな島で画家の夫と平和に暮らしている養護教諭だが、転勤してきた石和に惹かれる心を抑えきずにうろたえ、石和もまたセイを・・・。担いでいるのは樅の木だ。シロウやイクオたちは、石和のすぐ後ろで自分たちも担いでいるつもりになっているが、遊び半分なので、実質的には石和がひとりでーむしろ、シトウやイクオの体重ぶんもー担いでいるようなものだ 株)新潮社2008年2刷
モミノキ SAS/伯爵夫人の舞踏会 プリンス・マルコ ジェラール・ド・ヴィリエ 神聖ローマ帝国第18代大公殿下のマルコは通称殿下と呼ばれるが、住居であるオーストラリアの城の修理費を稼ぐためもあってCIAのスパイとして超人的記憶力を役立てている・・・樅の木立が雪に覆われた狭い道の両側に壁をつくっていた。シナイアは1キロばかり下のほうで、ここはさびしい山の上だ。マルコは道を間違えようがなかった 創元推理文庫1980年初版
モモ 眠狂四郎無頼控 白鳥主膳 柴田錬三郎 眠狂四郎との勝負の場で好敵手白鳥主膳は敢えて命を捨てて桂宮のために桃の小枝を切り落とした(5-桃花無明剣) 新潮文庫(昭和37年5刷)
モモ こらしめ屋お蝶花暦
寒中の花
御茶漬屋
お蝶
浮穴みみ 元芸者で今は日本橋近くの小さなお茶漬屋を営むお蝶は長い旅に出た亭主伊三郎を待ちながら、困った人を見捨てておけない世話好きの性分で、町で悪事をはたらく者に立ち向かって「こらしめや」と評判で・・・・。雛市に店を出している花売りの若者が桃の花を手に、ちらちらとお蝶に流し目を送ってくるのだ 新K株)双葉社(2011年第1刷)
モモ こ深川澪通り木戸番小屋澪つくし 木戸番
笑兵衛・お捨て
北原亜以子 人は皆さびしい。構ってもらいたい。相手を思いやる気持ちよりも自分の不満が先に出る。お捨の手の温もりは癒し効果がある・・・。人目を避けて入って行った路地の奥に、桃の木が植えられていたのを覚えている。濃い
桃色の花が今を盛りと咲いていて、路地に桃の香りがこもっていたものだ
株)講談社(2011年第1刷)
ヤエムグラ 絵伝の果て 正四位・参議公家
十川家の長男
十川抽介.
早瀬 乱 貧乏公家の息子抽介は父親に蹴鞠で負けたことから引き裂かれた絵巻物の一部をもとに全体の内容を明らかにする指示を受けて探す内、鬼の一族の存在を・・・。不安に襲われた抽介は、葉陰の下の湿った地面に両膝をついた。周囲は、笹と茨と蔓草でできた八重葎である。鞠は無い。もう少しで追いつこうというところで、不意に視界から消えた。 株)文藝春秋社(2010年第1刷)
ヤクシソウ 佐助を討て 伊賀者
壬生ノ数馬.
犬飼六岐 伊賀の数馬は駿府伊賀組の頭領伊賀崎道順から真田の残党の一人猿飛佐助の打ち取りを命じられたが失敗し多くの部下を失った。さらに続いて受けた三好青海入道の打ち取りは果たしたが、、家康の佐助への執念は消えずさらに数馬の暗躍は・・・・やくし草
の黄色い花はあぶらすすきの白い穂が、いずれも黒く揺れていた。斜面はしだいに勾配を強めつつ、およそ半町つづき、その先で断崖に落ちている
株)文藝春秋社(2012年第1刷)
ヤダケ 佐賀士魂
笠家御用心鐘由来
奈川武八 松永義弘 唐津藩でお鐘御番役を務める武八は幕府の長州征伐参軍に家中が総動員される中でもその役目がら声がかからなかった。鐘が鳴らないことが藩の安泰・・・・。門前に立った。垣根をつくる矢竹の葉の一枚一枚に小さな露の玉が、その数だけの朝の太陽を閉じこめてにかじりついていた 有楽出版社(2005年初版)
ヤツデ 円周率を計算した男 建部賢弘 鳴海 風 算聖と言われた関孝和の若き弟子賢弘は、超えようとしていた師から期待された円理(円周率の公式)の究明に情熱を傾け、発見して師を超えたと思ったのは40年後の59歳の時だった・・・・母上は、お前の気が違ったかと思われたそうだ。まだ、ある。庭の八つ手の葉っぱをみんな摘んで紙代わりにしたり、瓦の上に何度も書いては、水で洗い流して、また使うということをした 新人物往来社潮文庫(1998年第4刷)
ヤツデ 慶次郎縁側日記夢の中ふたり 森口慶次郎 北原亜以子 別れたいと思うろくでなしの亭主、家付きの娘の嫁などかつかつの暮らしの中であれこれ迷う男と女、いざとなると優しいところもあったと心に響く江戸長屋の人情・・・。慶次郎は、身を隠してもらっていた八手の鉢植えから離れた。暮れ六ツの鐘がなり、闇も濃くなって、裏通りを行く人の足が早くなった 株)新潮社(2005年)
ヤナギ 徳川慶喜 徳川慶喜 加野厚志 3度の将軍選びに破れた後に着いた将軍職だが慶喜のすることは大政奉還だった。大正の時代まで生き抜いて77歳で死んだ慶喜は白面の貴公子で頭脳明晰、先が見えすぎることが欠点と・・・。(江戸者の健気さよ)慶喜は柳の小枝をかるく手で払いのけた。安政の大地震で壊れた御堂は、町衆の寄進によって翌年には再建されていた 東洋経済新報社(1997年)
ヤブツバキ 黒星(臨場) 倉石義男 横山秀夫 L県警捜査一課で終身検査官の異名を持つ倉石検査官が、殺しから自殺へ判定替えをした初黒星事件は、元県警にいた女性の死亡に絡むものだが、皆はわざとそうしたと噂しているらしい・・・・。まだ 一花も開いてない 立ち姿 やぶ椿は やっと一つ 色づいていて 葉は つややかな 息づかいをしている 光文社(2004年初版第1刷)
ヤマウド 暗夜行路 時任謙作 志賀直哉 出生の暗さを抱えながら青年らしい欲望と鬱屈した精神を克服しようとする主人公謙作が、鳥取大山の山中で迎えた明け方に目をあいた時、橙色の曙光がのぼりあっちにもこっちにも花をつけた山独活が一本づつ、遠くの方までところどころに立っているのが見えた。そのほか、おみなえし、われもこう、萱草、松虫草なども萱にまじって咲いていた 岩波文庫暗夜行路後編(昭和40年第32刷)
ヤマザクラ 忘れ雪 桜木一希 新堂冬樹 忘れ雪に願った約束に心を燃やし続けた一希と深雪の気持ちがようやく通じ合った時・・・・。マリア公園を、あとにした。深雪の歩調に合わせて、ゆっくりと、ゆっくりと並木道を歩いた。風に舞う山桜の花びらが、ふたりを祝福するライスシャワーのように降り注いだ 角川書店(平成15年3版 )
ヤマザクラ 彩の舞人 夏川廉 石原郁子 高校二年生の廉は事情で歌舞伎役者橋本角之丞の付け人となり華やかな役者の世界に身を置いて業界の人々と知り合うが、特別の超新作「新羅花郎」に挑戦する角之丞の世話をする内に・・・。もうすっかり春で、暗いほどに生い茂った木々の間にも、こぶしや山桜の花々が咲き乱れ、山全体が彩りに溢れて、淡い光を帯びて見えた 光風社出版(1998年出版 )
ヤマザクラ 白い激流 明治の医官相良知安の生涯 相良知安 篠田達明 明治期の医学界の方向を争う漢方医界と西洋医学、薩長閥の横暴、旧弊から抜けられない為政者、お雇い外国医師に翻弄されながら狷介不羈を貫いてドイツ医学を推し進める治安は不遇のうちに・・・・。肥前佐賀藩三十五万七千石の城下に、春の風が吹いていた。このところ咲き誇っていた山桜やしだれ桜が、昨夜来のつよい風雨に花びらを医散らせている 新人物往来社(1997年第1刷)
ヤマブキ 少将滋幹の母 従五位上左近少将藤原滋幹 谷崎潤一郎 四十年前の春の日に、机帳のかげで抱かれた時の記憶が、今歴々と蘇生って来、一瞬にして彼は自分が六七歳の幼童になった気がした。彼は夢中で母の手にある山吹の枝を払い除けながら、もっともっと自分の顔を母の顔に近づけた。 角川文庫(昭和40年12版)
ヤマブキ 小説太田道灌 太田道灌 大栗丹後 四室町幕府の関東管領上杉家の家老職第5代当主である道灌は幼少の頃から武芸学問に優れて神童と呼ばれ、長じても孫子の兵法を駆使して応仁の乱間近い世を正していた・・・・。娘は、わずかに困惑した表情をしたが、「ちょっとお待ちください」と言って、外へ出て行った。すぐに庭で手折った山吹の一枝を持って戻ると、道灌へ差し出した 栄光出版社(平成14年第1刷)
ヤマブドウ 挽歌 兵藤怜子 原田康子 主人公兵藤怜子の部屋の窓から見える蔓 角川文庫緑249
ヤマユリ されど修羅ゆく君は 戸川姫子 打海文三 不登校を続けている13歳の姫子は近郊の山中で出会った怪しげな行動をする坂本が気になり、刑事や探偵等が入り乱れる中で坂本のために奔走するが、・・・。姫子の腕で一抱えもあるヤマユリの花束だった。白い花なのに、花びらの中央に太く黄色い帯が走り、淫らな感じの赤い斑点が散らばっていて、すごくきらびやかな花だ。「では修羅場をいくつかくぐりなさい」「修羅場って」「人生の修羅場は一種類しかない」「なあに」「失恋」 徳間書店(1996年1刷)
ユーカリ プレイバック フィリップ・マーロー レイモンド・チャンドラー ご存じの:しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかたら、生きている資格がない:の科白で有名な探偵マーロー最後の作品・・・。彼は街道に戻って、しっくいの壁のはずれまで急スピードで車を走ると、ホテルと反対側の曲がりくねった細い道に車をとめた。ふしだらけの幹がふたまたにわかれているユーカリ樹が私たちの上におおいかぶさっていた ハヤカワミステリー文庫(1993年第32刷)
ユスラウメ 蔓の端々 瓜生禎蔵 乙川優三郎
郷田藩武具方の軽輩禎蔵は十方流川又道場で腕を磨いているが、激しくなった重臣達の権力争いで好ましく思っていた隣家の八重の失踪を機に家老の織部に取り込まれてしまうが・・・。何気なく庭へ目をやると、ゆすらうめが揺れていて、微かな風があるようだった。(量八は足軽の次男だ・・・)身分は同じでも宇根吉よりもさらにあてどない、と思った 株)講談社(2000年1刷)
ユリノキ 天使のナイフ 桧山貴志 薬丸岳 刑事責任能力のない少年達に妻を殺されて4年後、主人公は当時の少年の1人が殺された事件を契機に、更生施設を出た少年達の状況を確認したいという気持ちが起こり、訪ね歩くうちに単純でなかった妻が殺害された事件の真相に迫ってゆく。やり切れなさに桧山は、その場に立ちすくんだ。金網の向こう側に屹立したユリノキの大木が、外の俗世や子供たちの生活を脅かすものを睨みつけて、学園を守っているように見えた 講談社(2005年第1刷)
リュウノウギク 老人と狩りをしない猟犬物語 老猟師仙造 西村寿行 南アルプスの猟師の仙造は、息子の嫁と大事な猟犬も殺し、孫をも傷付けた凶暴で狡猾な巨熊を倒すために衰えた体に鞭打って山中に住み、偶然出会った子犬の紀州犬「隼」の成長を待ち望むが・・・・。森と畑の堺の竜脳菊が一ヶ所だけ荒々しく揺れ動くのがみえ、老人は目を擦った。兎かと思ったが、動きが激しすぎた。出てきたのは隼であった 角川文庫(昭和61年7刷)
リンゴ 鏨師 志村逸平 平岩弓枝 刀剣鑑定家の福原は、偽銘切りをやめられない神技に近い鏨技術を持つ義弟の逸平と義絶していたが、姪の頼みで長曾彌虎徹を鑑定するが・・・・。都電を下りた所の果物屋で、三千代は林檎を買った。牛込にある国立病院の階段を上がりながら片手でマフラーをはずした。「あ、志村さん」下りてきた医師が、ちょうどよかったといった表情で三千代に近づいた 講オール読物100回記念号(平成元年)
リンドウ 群蝶の空 神坂ひさ女 三咲光郎 もっと言い返したい衝動を抑え、玄関を出ていく夫の背にいってらしゃいませと頭を下げた。良満の乗った黒塗りの大型車が出ていくと、車寄せの花壇にリンドウの白い花が幾つも開いているのがみえた。可憐な、秋の訪れを知らせる花だった。 (株)文芸春秋平成13年第1刷
リンボク Xの悲劇 ドルリー・レーン エラリー・クイーン 耳が聞こえなくなって引退したシェークスピアの名優だった名探偵のドルリー・レーンは何時もリンボクの杖を突いている 創元推理文庫鮎川信夫訳
ルリフタモジ オール読み物
夕立ち
奈穂 柴田よしき 夫から逃れた奈穂は百合ヶ丘高原で、提供する空間と時間を楽しんでもらえるようなカフェを開いて新しい友人もできてきた・・・・。亮介は、ポケットかを探って紙片を取り出し、読んだ。「ツンバギア・ビオラケア」 「わ、憶えにくそう」 「でしょう」 亮介は笑った (株)文芸春秋(平成25年3月号)
リョウブ 天狗の剣 服部孝太郎 藤本ひとみ 日新館の小天狗と呼ばれる孝太郎は自分に冷たい父左膳に反抗する気持ちで京都守護職となった会津藩重役の警護役として京都にに行くが警護を無視して薩摩の田中新兵衛に戦いを挑む・・・・。くぐり戸が開いたらしく、冴え冴えとした朝の風が辺りを通り抜ける。花をつけた令法の枝がわずかに揺れ、匂いがこぼれた (株)中央公論新社(2011年初版)
レンギョウ 朝鮮佐役
雨森芳州の涙
雨森芳州 賈島憲治 対馬藩に仕官した儒者の芳州は朝鮮御用佐役に任じられ利権と賄賂の蔓延る関係者の間で通訳兼交渉役色として朝鮮に行き来するのだが・・・。芳州と金は春のある日、竜頭山に登った。あちこちに咲いている連翹の黄色の花が目にしみた 風媒社(1997年第1刷)
レンギョウ からゆきさん おキミさん 森崎和江 からゆきさんと呼ばれた女性達のあまりにも悲しい生き方・・・。おキミはケナリの花を愛してる。レンギョウのことである。綾さんが世帯をもった庭には春ごとに鮮黄色の花がこぼれんばかりにひらく。それが朝鮮に春を告げていた姿さながら、揺れる。おキミが愛しているので綾さんが植えたものであった。どこかの娼妓での思い出がまつわっているようで、ああことしも咲いたな、という 藤田雄三(昭和54年第27
刷)
レンゲソウ 碧の遺稿 杉崎船長 今井泉 船を下りて3年経つ杉崎へ指名で改装して函館丸から青嵐丸に改名された船を船長として函館へ運ぶ依頼があり、ある思いを持って引き受けることにしたが・・・・。「あら・・・これ、れんげのお花でしょう」佳世子は。レンゲソウ。芳州と金は春のある日、竜頭山に登った。あちこちに咲いている連翹の黄色の花が目にしみた 文藝春秋社(平成4年第1刷)
ロウバイ お火役凶状 植松頼助 澤田ふじ子 京都祇園社の神灯目付役の頼助は黒の塗り笠に顔面に面垂れを下げた伊賀袴という姿で市中警護の役目の中で馬庭念流の腕を生かして様々な事件を庶民の身になって解決して行く・・・徳蔵が小障子を開け、見下ろしている庭には、蝋梅がいまを盛りと花を咲かせていた 文中央公論新社(2006年初刷)
ワカメ 共震 宮沢賢一郎 相場英雄 大和新聞東北総局の遊軍記者宮沢は震災後の東北で取材中に復興に情熱を燃やす県庁職員が殺された事件の謎を追ってボランテイア、警察、住民の間を駆け回る。被災地の生々しい状況を正確に描きながら事件の花犯人に迫る・・・。 仮設店舗に入居する老舗中華料理店「楼閣」の女将が、宮沢の前に丼を差し出す。「澄んだスープの上に、チャーシューが三枚、そして地元産のワカメが載っている 株)小学館(2013年初版第一刷)
ワラビ 無窮の道 斉藤篤信斉
(弥九郎)
乾荘次郎 神道無念流練兵館の斉藤弥九郎は隠居して長男に道場を任せて江戸の郊外で開墾に勤しんで居たが、井伊大老が殺された事件に絡む尊皇攘夷騒動に鬼勧と呼ばれた次男勧之助が動き出したことから・・・。やがて女将と年老いた小男が運んできた膳に魚はなく、そのかわり蕨やたらの芽、芹などの山菜がたっぷり並んでいて、それはそれで旨いものだった 株)双葉社(2005年第一刷)
ワレモコウ 権七太鼓の夜(幽鬼伝) 太鼓軒権七一樹信士 宇江敏勝 熊野詣で宿所として栄えた田辺の近野村道湯川は独特の太鼓踊りで知られていたが、時代が変わり町への移住が進んで最後の盆踊りを迎え歌い手のお梅と房代は太鼓たたきの権七の墓に向かった・・・。登って行く細い道の回りには吾亦紅の花が群がり咲いていた。一尺ばかりの丈の草で、細くわかれた茎にえび茶色の丸い花をつけている 新宿書房(2012年第1刷)