FILE NO 321 宮崎と周辺の植物
イイギリ Idesia polycarpa Maxim.
飯桐 ヤナギ科
撮影日 2006.1.3
撮影場所 西都市

 イイギリは飯桐で、昔、葉で飯を包んだことによるとされているが、古い詩歌やこの樹木に関する記述は意外に見あたらない。貝原益軒著の大和本草(宝永6年:1709年)以降の記録に、さまざまな名称で出てはいるようだが(図説草木名彙辞典、木村陽二郎著)、その葉の実用性や果実の鑑賞性を考えると、もっと昔から資料に出てきてもよさそうな気もする
 たとえば有名な万葉集の有間皇子の歌、「家なれば笥に盛る飯を草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る」では飯を椎の葉に盛っているが、葉の大きさだけからすればイイギリの葉の方が大きくて効率的とも思われる。
 しかし、イイギリは椎の木のように気軽に利用できるほど道の周辺に沢山は生えていないので、歌に読まれるほどポピュラーな植物では無かっのかも知れない。
 飯を包むのに葉を利用していたとしたら、万葉集に一首ぐらいはあっても良さそうだが。
 晩秋、落葉した枝から垂れた赤い果実は、山中で特に目について面白いが、宮崎では公園や広場等に植栽されているところを見たことが無い。
 1属1種のイイギリはAPG新分類でヤナギ科イイギリ属に配置されている。 別名で南天桐ともいう。
画像1 輪状に段をなして枝を広げる高木で、樹冠は不整で大きく枝分かれして横に広がる。 青森県以南日本各地〜台湾、朝鮮半島〜中国に分布し、県内でも各地に自生するがそれほど多くない。
画像2 高さ15mほどにもなる雌雄異株の落葉樹で、大きな葉の間から垂れ下がった花序は、色が葉に紛れて判りにくい。撮影:(2003.5.24 田野町) 画像3 長さ30cmほどの雄花の花序。ぎっしりと付いていた花もかなり落ちて、隙間の多い花序になっている。撮影:(2003.5.24 田野町)
画像4 花序は円錐状に伸び、1〜2回枝分かれする柄の先に花をつける。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像5 1.5cmほどの雄花。花弁はなく、卵形の淡黄緑色のガク片5と、多くの雄しべ1がある。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像6 葉がまだついている内の果実は濃い緑の派に隠れて見えにくい。(別名南天桐が頷ける)
撮影:(2001.10.27 田野町)
画像7 葉が全部落ちた後では、真っ赤な果実が独特の雰囲気で垂れ下がる。 
撮影:(2006.1.3 西都市) 
画像8 林道の対岸山中でシイノキ等に混じって目立つ果実を付けた大木。
     少し枯れ始めた葉は紅葉することなく巻いて裏が表になり白く見える
撮影:(2012.10.31  西都市寒川奥林道)
画像9 葉は卵心形で先は鋭く尖り、表面は濃い緑色で、葉柄は長く葉身同様20cm近くなる。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像10 下面は基部の掌状脈から伸びた脈がはっきりしている。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像11 葉柄の先(葉の付け根)に楕円形をした腺体が2個ある。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像12 若い葉柄は途中にも腺体が出ることが多い。若い緑の枝には皮目が目立つ。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像13 葉の下面脈腋には毛がある。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像14 葉の鋸歯と葉脈の様子。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像15 樹皮は柔らかく小さな皮目が多い。材は器具や下駄に使われる。
撮影:(2003.5.24 田野町)
画像16 枝の様子。葉は互生して上方に車輪状に開き、葉柄は赤みを帯びることが多い。
撮影:(2003.5.24 田野町)
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