FILE NO 233 宮崎と周辺の植物
イタドリ Reynoutria japonica Houtt.
虎杖 タデ科
撮影日 2008.9.27
撮影場所 西都市

 北は北海道から南は琉球、台湾まで、朝鮮、中国にも自生する多年草で、各地で様々な形で利用され親しまれ様々な地方名で呼ばれてきた。
 そのまま手で皮を剥いで生食する春先の若い茎は、宮崎ではサドとかサドガラと呼んで、県内広く分布し知られているが、成長した後のイタドリについては殆んど忘れられているようで、面白い花や果実に興味を持つ人は少ない。
 揉んだ若葉は擦り傷の止血、痛み止めに効くことから、痛み取りだという説もある。
画像1 山地の国道脇山側斜面から垂れ下がった赤みの強いイタドリは、ベニイタドリ(メイゲツソウ)と呼ばれ、品種扱いになっている。 雌雄異株だが、メバナ(両性花)のオシベは目立たない。
画像2 道脇崖から大きく弓なりに垂れた茎。花はごく普通に見る
    雄株の白色で、葉腋から出た花序は上向きに立ち上がる。
撮影:(2008.9.21 大分県佐伯市)
画像3 白い花の雄株と淡紅色の雌株が並んで花をつけた。
      雌株のほうが開花が早く、殆んどが果実になっている。
撮影:(2002.9.15  諸塚村)
画像4  (オバナ)花序は葉腋から出て総状。小さいながら花被とオシベが目立つ。
撮影:(2006.9.30 国富町)
画像5  (オバナ)白花の花被は5深裂して差し渡し2ミリ程度、オシベ8個は花外に飛び出し、葯が粒状に見える。 撮影:(2008.9.27 西都市)
画像6 (両性花)赤みの強い(ベニ)イタドリの花が終わって、外側の花被片3個が
         翼状に膨らんで赤くなり、花柱を包みながら果実に成長している。
撮影:(2008.9.13 諸塚村 )
画像7 両性花(メバナ)の花序。メバナの花被片は白いが、果実になると赤くなる。枝は赤い。
撮影:(2008.9.27 西都市)
画像8 直径約2ミリの両性花のアップ。花被片の外側から花柄に繋がる部分が赤い。花柱は3個。  撮影:(2008.9.27 西都市)
画像9 果実は花柄部分2ミリ、翼部分7ミリのほどの3稜形 。  撮影:(2008.9.27 西都市) 画像10 メイゲツソウともいわれる赤い果実型。品種の違いという。 撮影:(2008.9.27 西都市)
画像11 花や果実は白と淡紅色の中間型もある。 撮影:(2008.9.27 西都市) 画像12 茎はタケに似ており、斑紋の跡が小さな突起状に残る。 撮影:(2008.9.27 西都市)
画像13 中空の茎は竹に似る。若い茎もマダケ等の筍に似る。 撮影:(2008.9.27 西都市) 画像14 葉は画像1を参照。葉柄に繋がる基部は切形が基本形。 撮影:(2008.9.27 西都市)
画像15 若い茎は宮崎ではサドやサドガラ、他県でスカンポやタジヒなど様々に呼ばれ、茎をポキンと折って皮を剥いで食べたり、塩漬け等にして利用する。  撮影:(2002.3.21 宮崎市) 画像16 漢名の虎杖は、若い茎の表面の斑点が虎の模様に似ているからで、清少納言も枕草子の中で大げさな文字表現の例に挙げている。低い托葉鞘は早落する。 撮影:(2008.5.22 諸塚村)

(メイゲツソウについて)・・・牧野富太郎の「牧野新日本植物図鑑26版、図鑑の北隆館、昭和49年3月」には、[花が紅色のものをベニイタドリ、一名メイゲツソウ(L. colorans Makino)という。しかし花色は株により濃淡があり白色の普通品との間が続いていて区別ははっきりしない。]と記載がある。
 植物図鑑や解説書などでは、花が紅色のもの、花や果実が赤いもの、果実が紅色のものなどの表現で、それぞれをメイゲツソウと記載しているがはっきりしない。そして作者の所有する僅かな資料やインターネット画像で調べた限り、赤い花と明確に確認できる大きな画像等を見つけることはできない。.
 少なくとも画像7や画像8で見るように、花被片の赤みの程度が少ないものから多少多いものまであるが、画像2や画像4や画像5の普通種の白い花の花被片が全部赤くなった花は宮崎では見られない。
 開花の時期は赤みのある花の方が早いようなので、白花が咲く頃には赤みのある花はもう大半が果実になってしまうが、果実の間に見える咲き遅れた花も花被片が赤いと表現するほどではない。
 図鑑等でいう花や果実の赤いものとは、花の時期にはある程度赤みがあるもので、果実の時期に赤みが強くなって良く目立つようになるものを指していると考えられる。つまるところ、メイゲツソウとは程度の差はあっても果実が赤みを帯びて美しいものをいうのではなかろうか。
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