FILE NO 556 宮崎と周辺の植物
カエデドコロ Dioscorea quinqueloba Thunb.
楓野老 ヤマノイモ科
撮影日 2006.9.3
撮影場所 野尻町

  本州中部から琉球、中国まで分布する多年性つる植物。
  種小名「quinqueloba」は5浅裂したの意味で、葉が掌状に5〜7裂することを表わす。
 よく似たキクバドコロの種小名「septemloba」が7浅裂したを表わすように、この仲間の区別が葉の形、裂けかたにあるように見えるが、図鑑の検索表はそれとは別にもっと厳密な違いで検索されている。
  食用になるヤマノイモを掘ることも少なくなり、違いを知る必要もなくなった現在、花の時期に少し気になる程度だ。
画像1 林縁が畑になった傾斜地、低木を黄色で覆った花序が広がる。 雌雄異株で、珠芽はない。
画像2 雄株の花序。花序は下垂することはなく、葉腋から複数出て淡緑色の葉に黄色で目立つ。
撮影:(2005.8.28  野尻町)
画像3 雄花、短柄のある橙黄色の花は、花被片6個が平開し6個の完全オシベがつく。
撮影:(2005.9.3  延岡市)
 画像4 雌株の花序。 花序は葉腋から疎らに出て長さ10cmほど下垂する。
撮影:(2006.9.3  三股町)
画像5 雌花は、花被片6個が長さ5ミリほどの太い子房に直接接して平開し、雄花より色が濃い。
撮影:(2006.9.3  三股町)
画像6 メシベの花柱は3裂しまた小さく2分する。花被片6の花は差し渡し5ミリほど。
撮影:(2006.9.3  三股町)
画像7 蔓は周囲の枝等に巻いて長く伸びる。
この崖から下がったつるの基部は遠くまで伸びて小指ほども太い。 撮影:(2005.8.28  野尻町)
画像8 蔓は無毛で硬くて強い。葉の下面は短毛があり脈がはっきりと浮き出る。
(2005.8.28  野尻町)
画像9 長さ10cmほどの葉柄の基部にある1対の小突起が、良く似たキクバドコロとの相違点。
撮影:(2006.9.3  三股町)
画像10 葉は長さ約10cm、掌状に5〜7裂、中央裂片の先は鋭く尖るが、他の裂片の先は丸い。撮影:(2006.9.3  三股町)
画像11 果序は長く垂れて、3個の翼のある刮ハを多くつける。 果実はまだ未熟。
撮影:(2006.9.10  木城町)
画像12 刮ハは、長さ1.5cmほどの扁平な翼3個からなり、翼1個に楕円形の種子1個がある。
撮影:(2006.9.10  木城町)
野老
  カエデドコロとは、葉が楓に似たトコロの意だが、トコロは野老と書く。
    長寿を象徴する長いひげと腰の曲がったエビを海の老(海老)と書くが、
白く長いひげ根を持つトコロ(オニドコロ)は、野の老(野老)と書く。
江戸時代、正月には縁起の良い物を飾る風習が盛んだったが、
橙、搗栗、串柿、昆布、海老に混じって野老も入っており、江戸の
歳末風景に「野老売り」もいたという解説が下記事典に載っている。
(図説 花と樹の事典、植物文化研究会編、木村陽二郎監修、柏書房、2005年)


トコロ(オニドコロ)は出雲風土記にも出てくるほど古くから知られていた植物で、
根茎の苦味を取って食用にしたらしいが、確かによく似た仲間のヤマノイモは
掘ってそのまま食べられるので、ヤマノイモよりも掘りやすいことを考えると、
あくを抜く工夫をして食べたことは十分に頷ける。
これはカエデドコロで、ほんものの野老とは違っているが、硬くてざらざら
した感じのカケラを少し齧ってみたが、特に味らしいものは無く、僅かに
えぐみがある程度で、、この程度なら水に晒せば食べられそうな気がした。
画像13 地面を掘って深さ約20cm、大きな根茎が横たわり節が枝状に伸びて、数年は経った株と思われる。撮影:(2006.9.16 宮崎市) 画像14 掘り出した根茎の一部。長さ約30cm、太さ2.5cmほどで、白いひげ根が長い。
撮影:(2006.9.16 宮崎市)
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