FILE NO 41 宮崎と周辺の植物
キイレツチトリモチ Balanophora tobiracola Makino
喜入土鳥黐 ツチトリモチ科
撮影日 2004.11.21
撮影場所 県南部

 九州の長崎、宮崎、鹿児島と南西諸島の海岸に近い自然林に自生する雌雄同株の多年草。 波打ち際まで20mほどの明るい照葉樹の林の中。 見上げると周囲には、寄生主となるトベラ、ネズミモチ、シャリンバイの他、ヤブツバキ、マサキ、クロマツ、タブノキ、ナワシログミ、ギョクシンカ、イヌビワ、クスノキ等が太陽の直射光を遮っている。
 直径約2ミリの寄生根がどの木から伸びてるかは不明。
画像1 高さは5〜6cmほどで花穂は長い卵形。葉は花茎の下部に
さじ状の黄色っぽい鱗片葉となって互生する。
花は花穂の表面を覆う小さな粒の小棍体の間に全て埋まっている。
和名は、最初に鹿児島県の喜入町で見つかったツチトリモチ(別ページ参照)から。
画像2 時期的には開花適期は過ぎていると思われるが、花穂表面に白い雄花と盛期を過ぎて茶褐色に変色した古い雄花とが散生する花茎。
  白い花が咲いている花茎は殆どが、高さ4.5cm、花穂の太さ径1cmほどで、周辺にある花期を過ぎた花茎に比べてかなり小さかった。
(撮影:2004.11.23 県南部)
画像3 完全に雄花の時期が過ぎて、黒っぽい斑点が見える独特の模様になった花穂。
(撮影:2004.11.21 県南部)
画像4 雄花のアップ。花被は3裂してさしわたし2ミリほどになり、中央に3個の葯がある。花穂の左下には古くなって茶褐色に変色した花被が見える。 小棍体の間から伸び出した沢山の雌花の柱頭が小さな細い糸くずのように見える。(撮影:2004.11.23 県南部)
画像5 花穂表面には柱状に突起した多数の小棍体とその間に埋もれた無数の雌花から伸び出した柱頭、突出して散在する新旧の雄花、雄花が抜け落ちて凹んだ穴が見える。
  鱗片葉にアリが見えるが、花穂面から出る蜜を求めて動き回ることで、受粉の媒介に貢献していると思われる。(撮影:2004.11.23 県南部)
画像6 枯れた雄花が散在する花穂表面アップ。
無数の丸い粒は花穂表面を覆う小棍体で、先端が丸く少し膨らんでいるのが特徴。小棍体の隙間から見える黒い糸状のものは、小棍体の間に埋もれている雌花の花柱から伸びた柱頭が適期を過ぎて変色したもの。(撮影:2004.11.21 県南部)

画像7 長さ3cmほどの花穂の縦断面。
  表面を覆う厚さ1ミリほどの小棍体の下にやはりオレンジ色の雌花があるが同色で分らない。花穂には水気が多い。(撮影:2004.11.21 県南部)

画像8 直径2.5cmほどの花穂の横断面。
  オレンジ色の小棍体の内側にある厚さ1ミリに満たない同色の雌花(子房)は外からは見えない。雌花に花被はなく子房は紡錘状で同じオレンジ色、花柱は盛期になると長く伸びて、小棍体の間から柱頭が現われアリなどの媒介で受粉する。
 雌花の写真はデジカメ能力、私の撮影技術から撮影不能。 (撮影:2004.11.21 県南部)
(花の説明は平凡社の日本の野生植物U(1982年)等の説明から。)

画像10 寄生根の先は大きく肥大してでこぼこした塊状の中に入って、その周囲にも似たような数個のジャガイモをくっつけたような固まりがいくつかつながっている。また根茎はツチトリモチと違って簡単にはバラバラにはならない。
 また根茎にはツチトリモチと違って皮目はない。
 この写真の寄生根の直径は2ミリほどと細い。
 (撮影:2004.11.21 県南部)
画像9 根茎ごと掘りあげて泥を落とした。
4個の根茎があり、それぞれが黒川カボチャの蔓のような位置で花茎が出ている。花茎全体でほぼ5cmほどの高さ(撮影:2004.11.21 県南部)

画像12 画像11部分の近接写真。
左下からの寄生根が根茎の下部につながってその一部が根茎内部に入り、上方に枝分かれして途中で消えている。
  数個の根茎にも同様のことが見られるので、ツチトリモチの寄生のしかたとは違うような気がするが、これらの観察も素人の見方であり見当違いかも知れない。(画像11、12 撮影:2004.11.25)
画像11 寄生根の周囲の根茎を無理に剥がしたら、根の先は分岐して根茎の中に消えている。
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