FILE NO 408 宮崎と周辺の植物
ムクロジ Sapindus mukurossi Gaertn.
無患子 ムクロジ科
撮影日 2002.6.14
撮影場所 高原町

  宮崎では県内に散在するといわれているが、たまに見かけたとしても下から仰ぎ見る程度で、花や果実を見るには双眼鏡が必要だ。
  たまたま枝に手が届きそうな樹が町内の牧場に植栽されていたので、山野に自生する植物を撮影するという原則からはずれるが、例外として取り上げた。
 実の皮を水に入れて「石鹸代わり」にした(宮崎の植物民俗覚書 1992年 南谷忠志著)、セッケンの木という(球磨の植物民俗誌 1978年 乙益正隆著)など、古くから石鹸として使われており、椎葉の焼畑農業の椎葉クニ子さんの子供の頃は、石鹸にしたり、羽根突きに使っており、学校帰りには遠くまでも実を拾いに行っていた(おばあさんの植物図鑑 1995年 斉藤政美著)ことから、 戦後までは利用されてきたようだ。
 材は家具材に、種子は追い羽根の玉や数珠の材料に、果皮は洗剤やシャンプーにと広範に使われて来たが、現在は所により巨樹に指定されている他は殆ど忘れられている。     
画像1 高さ15m以上になる雌雄同株の落葉高木で、中国、インド、ヒマラヤあたりまで分布するようだ。 学名のspiはラテン語のsapo(石鹸)、indusはindicus(インド)から来ているらしい。
画像2 枝先に30cmほどの円錐花序を出して、ごく小さな花を沢山つける。 画像3 花序には雄花と雌花がつくが雌花は少ない。花は直径4ミリほどで淡黄緑色。
画像4 花弁は4〜5個あるが平開しない。雄花のオシベ8〜10本が見える。
写真では見えないが、雌花のメシベは3心皮性で普通一個が成熟して核果状の分果をつくる。
画像5 葉は互生し、偶数羽状複葉で長さ60cmほど。小葉は4〜6対出て、5ミリほどの柄の先に長さ15cm以上、幅4cmほどになって付き、全縁の薄い革質となる。対生する葉は左右の位置が少しずれる。 画像6 葉裏。葉の脈は良く隆起する。
画像7 未だ若い樹の樹皮。 画像8 果実は黄色い球形となり直径約2cm。(撮影:2002.10.26 高原町)
画像9 普通は花後に三つの心皮の一つが大きくなって、未発達で残った二個はこぶ状になって果実に付着するが、時に2〜3個が成熟する。
(撮影:2002.10.26 高原町)
画像10 枯れて黄褐色の果実と中の種子。
種子は濃いチョコレート色のやや楕円状、
たて15ミリ、よこ12ミリほどになり固い。
子供の頃、果皮を囓ってたという話も聞くが、レイシやリュウガンはこの仲間。(撮影:2004.8.21)
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