FILE NO 197 宮崎と周辺の植物
ノリウツギ Hydranger paniculata Sieb. et Zucc.
糊空木 ユキノシタ科
撮影日 2008.7.29
撮影場所 日向市

  北海道〜九州屋久島まで、南千島、台湾、中国中南部に分布するとされ、日本では北海道や東北に多いといわれるがここ宮崎でも多く見かけるので、多分沖縄を除く地域の山野に数多く自生していると思われる。
  種小名の「paniculata」は、円錐花序の意味らしいが、宮崎では7月終わりから8月一杯にかけて山野のいたる所で、円錐形の花序を四方に伸ばした特徴のある樹が目につく。
 落葉性の小高木で、幹が株立ち状になることが多い。
画像1 四方に広がった枝先に白い大きな円錐花序を伸ばした樹。 
画像2 横に広がった枝先から上向きに伸びた長さ25cm近い円錐花序。
     花は軸近くにまとまった両性花とその周囲に開いた装飾花がある。
撮影:(2008.7.27 高千穂町)
画像3 樹形。林道そばの伐採地跡に進出し、基部付近で枝分かれして
     株立ち状になった樹。幹が目立つ樹もあるが株状のものが多い。
撮影:(2004.7.24 川南町)
画像4 花序。軸から出た小花序の先に伸びだして、楕円状の花弁状ガク片4個の装飾花(中性花、全体約2.5cm)がつく。 撮影:(2007.7.28 都農町) 画像5 両性花。花弁は5で花の差し渡し約7ミリで平開。オシベは10個でその内5個は長い。メシベは小さくオシベに囲まれて花柱3も見えにくい。
撮影:(2008.7.27 高千穂町)
画像6 ガク筒は子房と合着して花筒となり、伏した短毛がある。 撮影:(2007.7.28 都農町) 画像7 装飾花(中性花)。花弁状の白いガク片の中央に退化した花弁、オシベ、メシベが開く。
撮影:(2008.7.27 高千穂町)
画像8 柄も毛も白い、両性花とその先端に伸びた装飾花。
撮影:(2008.7.27 高千穂町)
画像9 対生する葉は変化が多くて大きさも様々変化する。鋸歯があり葉先は細長く尖る。
撮影:(2008.7.29 日向市)
画像10 葉の上面は若い時ははっきりと伏した短毛が見えるが、段々少なくなる。鋸歯は近くで見ると尖っている。 撮影:(2007.7.28 都農町)
画像11 葉の下面。中央脈、側脈が突出し全体がやや表側に反る。葉柄の赤みは葉身下部まである。
撮影:(2007.7.28 都農町)
画像12 葉の下面拡大。 伏した短毛は脈腋に少しと脈沿いにもある。
撮影:(2007.7.28 都農町)
画像13  葉柄は長さ3〜4cmで、伏した短毛が残る。  撮影:(2008.7.27 高千穂町) 画像14 小枝には縦の皮目が多く出る。
撮影:(2007.7.28 都農町)
画像15 和紙の紙漉きに使った幹の表皮内側にある緑色の内皮。 撮影:(2007.7.28 都農町) 画像16 樹皮。だんだんと縦の裂け目が大きくなって剥がれる。 撮影:(2007.7.28 都農町)
画像17 装飾花のガクは果実とともに、翌年の開花時期になっても未だ枯れ残っている。 
撮影:(2008.7.6 川南町)
画像18 果実は長さ約4ミリの長楕円形、先端に花柱3が残る。 まだ果実は未熟だが、枯れた装飾花が見える。 撮影:(2007.10.13 高千穂町)
ノリノキについての余談・・・ノリウツギは各地に多くの呼び名があり、生活に役立っていたことが分る。
 宮崎ではノリギと呼んだようだが、東北、北海道の呼び名のサビタは昭和30年ごろの歌謡曲で「サビタの花」のタイトルで歌われて話題になり、いつまでも散らない花の特徴を知らしめたという。
  ノリノキは、糊の木で、昔、和紙を漉き流し法でつくる時に、コウゾ、ミツマタ等の細かく砕いた繊維を良く絡み合わせるために、この内皮から取った糊エキスを水に混入して粘剤として使ったことから、糊の木と呼ばれたようだ。
  山里の生活に利用する植物に詳しい宮崎県椎葉村の椎葉クニ子さんの話では、ノリギといって、「包丁で上皮をこさいだ後、次の皮(内皮)を包丁でこさいで集め1斗罐に入れて売っていた」という。
おばあさんの植物図鑑(斉藤政美・文、椎葉クニ子・語り、1995年、葦書房)から。
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