FILE NO 331 宮崎と周辺の植物
サネカズラ Kadsura japonica (Thunb.) Dunal
真葛 マツブサ科
撮影日 2006.7.29
撮影場所 西米良村

 万葉の昔から歌に詠まれている葛で、富山県、福島県以西、台湾、中国まで分布する常緑性の蔓植物。 同じ株の蔓がお互いに長く伸びて絡み合うので、歌の会う、来るの枕詞として数多く使われた。
 お馴染みの歌に、小倉百人一首第25番の、「名にし負はば 逢坂山のさねかずら 人に知られでくるよしもがな(三条右大臣藤原定方 後撰和歌集)」がある。
 属名にある「Kadsura」は葛で、まさに日本人との相性を認めた学名になっている。
画像1 葛はごく普通の形の葉で、花も葉の陰に隠れて見えないので気づかないが、晩秋、樹の上からぶら下がった赤い果実を見上げて、初めてあちこちに長く逞しい蔓が巻きついていることに気づく。
別名でビナンカズラ(美男葛)ともいわれ、枝の皮を剥いで見ると確かにぬるぬるするが、水分は殆どないので、このままでは掌につけてポマード代わりにするのは難しいように思える。
出雲国風土記にも、諸々の山野にあるところの草木の中に、五味子の名前で各地に出てくるので、この頃から有用植物として知られていたようだ。

(メモ1) 宮崎の植物民俗覚書(1992年 南谷忠志著)に、フノリカズラといい、蔓を叩いて湯の中で揉 み、粘っこくなった汁で髪をそそぐリンス的使用や、馬の毛並みを良くする時に使ったとある。

(メモ2) 球磨の植物民俗誌(地球社 1978年 乙益正隆著)には、熊本県球磨地方ではビンツケカズ ラ、ベンカズラ、ノリカズラといい、昔は女性が髪を結う時に、このカズラを割って水に溶かし、糊状にどろどろになった液を使って結う髪に癖をつけたという聞き書きが記載されている。
画像2 山の清流沿い、ヤマトアオダモの幹にに巻きついた蔓。
撮影:(2006.7.29 西米良村)
画像3 葉陰に暫く目を凝らして注意深く探し、見えた赤い雄花と蕾。
     樹は、雌雄異株、時に雌雄同株があり、これは雌雄同株だった。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像4 葉腋から伸びた5cmほどの花柄、ガクはない。大小がある黄白色の花被片8〜12個を広げ俯いて咲く。 撮影:(2005.7.24 西米良村) 画像5 雄花。花は差し渡し直径2cmほど、厚みのある黄白色の花被片の間に、赤いオシベが球状に集合する。 撮影:(2006.7.29 西米良村)
画像6 雌花。メシベは緑色で丸く球状に集合し、白い花柱が顔を出す。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像7 新枝は皮目がありやや赤褐色を帯びる。葉柄は長さ1.5cmほどで無毛。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像8 エゴノキの枝にまきついた蔓、手前ピンボケは幼枝が若枝を巻いている。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像9 基部近くの蔓、ひび割れてコルク層がみられる。撮影:(2006.7.29 西米良村)
画像10 葉は互生し上面は深緑色、長さ12cm、幅5cmほどで無毛、光沢がある。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像11 葉の下面は上面に比べて淡緑色、縁には疎らな低い鋸歯がでる。
撮影:(2006.7.29 宮崎市)
画像12 果実は集合果、晩秋に赤熟してぶら下がり良く目だつ。 撮影:(2005.12.6 西米良村) 画像13 集合果は、未熟な果実を含んだたままのものも多い。 撮影:(2004.11.27 綾町)
画像14 半分ほど未熟な果実のまま成熟した集合果。撮影:(2005.11.12 田野町) 画像15 果実は直径5ミリほどの液果が集合して直径3cmほどの球形になる。
撮影:(2004.11.6 高岡町)
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