FILE NO 539 宮崎と周辺の植物
サルトリイバラ Smilax china L.
猿捕茨 ユリ科
撮影日 2005.11.12
撮影場所 田野町

 日本全土でよく知られている落葉のつる性植物。
 県内では、スーパーなどで売られている柏もちはこのサルトリイバラの葉に包まれているのが普通で、現在はカカランハ(カカラの葉)の柔らかい5月に限らず桜もちと同じ場所に一年中並んでいる。
 刺の鋭くて丈夫なことは名前のとおり猿でも、た易くは逃れられないほどで、このつるを見たらカカラナイ(触らない)のが一番だという先人の知恵からか、このあたりでは「カカラ」と呼ばれている。
画像1 山道で3mほどの頭上の枝から垂れ下がったつるだが、独特の枝ぶりについた赤い果実は、活け花の材料としても利用される。
画像2 4月頃、新葉が開く時期に葉腋から散形花序を伸ばして花をつける。雌雄異株。
撮影:(2004.4.17 田野町)
画像3 枝先から伸びた柔らかい枝と葉、雄花、葉柄から伸びだした巻きひげ、古い巻きひげ。
撮影:(2004.4.17 田野町)
画像4 淡黄緑色の雄花は、曲がって反り返る花被片6、オシベ6からなり、直径7〜8ミリほど。
撮影:(2004.4.17 田野町)
画像5 果実は直径7〜8ミリほどの美しい赤い球形で、中に種子が2〜4個入っている。
撮影:(2005.11.6 北郷町)
画像6 とげと巻きひげで周囲の枝に絡んで這い登ってゆく。撮影:(2005.11.6 北郷町)  画像7 茎は緑色、堅く鋭いとげは不規則に生えるが、その生え方は変化が大きい。
撮影:(2005.11.16 宮崎市)
画像8 葉は直径10cm前後になる卵円形、無毛で光沢があり革質で堅い。
撮影:(2005.11.12 田野町)
画像9 葉下面。葉の基部から伸びて先端でつながる3〜5の脈があり、下面に隆起する。
撮影:(2005.11.12 田野町)
画像10 葉の先端は、小し突き出して尖らないが、形は変化が多い。 撮影:(2005.11.12 田野町) 画像11 巻きひげは小枝等にぐるぐると巻きついて固まる。 撮影:(2005.11.16 宮崎市)
画像12 托葉は葉柄の下部を半分取巻く形で丸くなり、先端は2本の巻きひげに変化する。
撮影:(2005.11.12 田野町)
画像13 托葉の上端に2本の角のように見えるのは、千切れて残った巻きひげの基部。
撮影:(2005.11.16 宮崎市)
余談あれこれ
  日本植物方言集では、サルトリイバラには255の異名が記載されている(図説花と樹の事典、植物文化研究会+雅麗編木村陽二郎監修、柏書房、2005年)というが、自分が子供の頃、5月の節句時分には、まだ柔らかいカンカラの葉(母はカンカラと言っていた)2枚で両面を覆って蒸篭で蒸した米の粉だんご(カンカラだんご)を、母が作ってくれたことを思い出す。
  多分、日本各地で様々な呼び名があり、それぞれの地域で様々な利用の話が伝わっていると思われるが、宮崎では、南谷忠志氏の宮崎の植物民俗覚書(平成4年度宮崎県地方史研究紀要第19輯)の中で利用法として、団子を包む葉、おできに効く、止血剤、雷徐け、実鉄砲、タバコの葉、葉の音遊びなどの聞き書きの記載がある。
 カカラの語源について冒頭に書いたカカラナイ(触らない)は、都城盆地及び周辺の植物(都城盆地植物愛好会、1995年)に記載されて、カカラダゴ(カカラ団子)の利用に触れている。
  なお、画像3のような、新芽と葉は、あくが無いのでそのまま摘み取って、茹でたり、テンプラにすると美味しいので、4〜5月の山菜として楽しんでいる人も多い。
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