FILE NO 534 宮崎と周辺の植物
トラノオスズカケ Veronicastrum axillare ( Sieb. et Zucc.) Yamazaki
虎の尾鈴懸 ゴマノハグサ科
撮影日 2005.9.11
撮影場所 宮崎市

 スズカケソウの仲間は3種あるが、3種ともごく限られた地域でしか見られないもので、 江戸時代に園芸植物として栽培されていたスズカケソウは岐阜県の一部にあるそうだが、キノクニスズカケは紀伊半島の1部で、そしてこのトラノオスズカケは四国の南部と九州に自生するとされている。
 まことに変わった和名がついているが、3種に共通する鈴懸は、球形の花序の付きようが、(鈴懸衣)山伏などの修験者が着用する法衣の上につける結袈裟(ゆいげさ)についた、丸くて大きな房に似ていることから来ているそうで、房状の果実がぶら下がるプラタナスの和名が鈴懸の木となっているのも同じ理由からのようだ。
  このトラノオスズカケは、球形ではなくて長楕円形になった花序を葉腋につけるが、花は近くによってもあまり目立たず、トラノオ(虎の尾)とはあまりにも大げさな命名に思える。
 植物の名前ではミズネコノオやネズミノオなどとともにトラノオがつく和名もいくつかあるが、尻尾状に見えるもので、猫や鼠に比べて太く荒っぽい感じのものを虎の尾と表現したのだろうか。 
画像1 多年草。遊歩道脇に垂れ下がって長さ1.2mほどに伸びた株、先端に行くほど葉も小さくなる。
画像2 枝葉に絡まって蔓状に上にのびる、地上を這う、傾斜地では下にぶら下がるなど、周囲の環境で違うが、互生する葉は蔓の先端を向いて左右に開く。撮影:(2005.9.11 宮崎市) 画像3 花序は長さ約3cm、基部は殆ど葉腋に接して多くの花をつける。ガクは深く5裂して、長短のある裂片は線状皮針形で先は細く尖る。
撮影:(2005.9.11 宮崎市)
画像4 花冠は紅紫色で長さ約4ミリ、4裂してかなり切れ込んで先は尖る。オシベ2個は長さ6ミリほどで葯は黄色、メシベは1個で約7ミリ長。
撮影:(2005.9.11宮崎市)
画像5 花が済んでも落ちることなく残って、こげ茶色になった苞やガクに包まれた果実は、2分果のように見える。茎には稜が見える。
撮影:(2005.2.5 都農町)
画像6 正面の黄白色に見える果実は扁平な卵円形をした刮ハで長さは3ミリほど。
撮影:(2004.1.7 宮崎市)
画像7 果実が熟し、周囲が落葉して日当たりが良くなってくる頃、葉裏や茎は紫色を帯びてくる。撮影:(2005.2.5 都農町 )
画像8 ガクにしっかりと包まれた未熟な果実を取り出して見ると、2分果状で簡単に2つに分かれる。先端中央からまだ残っている細いメシベの花柱が見える。撮影:(2005.9.23 宮崎市) 画像9 まだ未熟な果実(刮ハ)だが、高さ3ミリほどの分果の中には、小さな種子が目で数えられそうなほど入っている。
撮影:(2005.9.23 宮崎市)
画像10 葉は、卵形〜長楕円状卵形で周囲に3角状の鋸歯が均等に出て、先は尖る。
撮影:(2005.9.11 宮崎市)
画像11 基部に近い葉には短い柄がある。
葉は大きいもので長さ12cm、幅5.5cmほどになり無毛。撮影:(2005.9.18 宮崎市)
画像12 短い葉柄の基部。茎は無毛で5〜6の稜がある。撮影:(2005.9.23 宮崎市) 画像13 茎は伸びて細くなった先端が地中にもぐり、新しい株を作って増える。この深さは地中2cmほど。撮影:(2005.9.18 宮崎市)
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