FILE NO 397 宮崎と周辺の植物
ヤマアイ Mercurialis leiocarpa Sieb. et zucc.
山藍 トウダイグサ科
撮影日 2005.3.27
撮影場所 西米良村

 近頃は特にアイちゃんが流行のようで、さまざまな分野で活躍が伝えられているが、静岡県以西に自生するといわれるこちらのヤマアイは最古の染料の一つとして知られ、万葉集を始めとする歌集で多くの歌が詠まれていた。
 中国から持ち込まれ、染料用に栽培されているアイと区別するために山藍とよばれたそうだが、タデ科のアイと違って色素成分のインデイゴは含まれていないらしい。
 多分気の遠くなるような手間がかかるだろうと思われるこのヤマアイを使って、緑や茶色にも染められる染色技法を研究した辻村喜一氏の「萬葉の山藍染め」(染織と生活社、1984年)のことは、「野草図鑑-7」(長田武正、長田喜美子氏、保育社、1985年)で教えてもらった。
 現在まで引き継がれている宮中の儀式である大嘗祭ではこの山藍で染められた小忌衣(おみごろも)を着用するならわしになっているそうだが、山の木陰等の湿気のある道脇等で、見栄えのしない地味な花を咲かせるアイちゃんにも、今流行のアイちゃんに負けないようにまだまだ頑張ってほしいものだ。
画像1 横に分枝した地下茎が長く伸びて絡み合い、たいていの場合群生しているが、なぜか目立たない。 地下茎には独特の異臭があり、バケツに根を浸しておくと、水は異臭がして赤っぽくなる。
画像2 株は、雄花序だけのもの、雌花と雄花のついた花序があるもの、雌花序だけのものがあるような気がするが、地下茎ではつながっているものもある。これは、独特の形をした果実と雄花がついているもの。撮影:(2005.4.1 国富町) 画像3 雄花序。花序は茎の上部の葉腋から15cmほどの花柄に穂状につき、間隔をおいて3〜5個ほどの花がかたまってつく。花弁はなく、顎片は3裂する。この花では10個ほどのオシベがついているが、オシベの長さは3ミリほど。
 
画像4 雌花。上部には果実ができているが、正面は、鱗片状の顎片、子房の先から伸びたメシベの2裂した花柱が見える。
画像5まで撮影:(2005.4.1 国富町)
画像5 雌花。膜状の顎片、線状の鱗片が見える。
画像6 花序の先端にある果実。
 そのすぐ下には雄花が開いている。
画像7まで撮影:(2005.4.1 国富町) 
画像7 果実は独特の形で表面はデコボコしており、2つがくっついた様に見えて(幅は6ミリほど)、その中間には残っている花柱が見える。 
画像8 茎は高さ30から40cmほどで、稜があるので、触ると4角形に感じられる。
 葉柄の基部には、前後に2個ずつ膜状の目立つ托葉がある。撮影:(2005.3.27 西米良村)
画像9 葉は、対生して柔らかい。 2〜3cmほどの葉柄と、濃い緑色で光沢のある長さ7〜8cmほどで先が尖った長楕円状の披針形で柔らかい葉の表面には疎らな毛がある。撮影:(2005.3.27 西米良村)
画像10 数本ずつが株状になっているが、伸びた地下茎が絡み合って大きな株に見える。
撮影:(2005.3.27 西米良村)
画像11 地下茎と茎の下部は乾くと藍色になる。
(乾燥2日目)
撮影:(2005.4.1 国富町)
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