FILE NO 363 宮崎と周辺の植物
カミヤツデ Tetrapanax papyriferus (Hook.)K. Koch
紙八手 ウコギ科
撮影日 2004.12.19
撮影場所 日南市

 宮崎では、集落周辺の荒れ地、道路脇の藪などに野生化しているが、台湾、中国原産の常緑低木で、九州以北では落葉低木となるそうだ。 
 時に公園で見ることもあるが、管理された状態で植栽されれていることは少ない。
 用途の一つとして幹の中心にある髄を利用して紙を作っていたようで、通草紙という名で広く使われ、別にツウダツボク(通脱木)、ツウソウ(通草)とも言われている。
画像1 枝はなく、普通高さ3mほど、周囲の状況ではもっと高くなる。  紙については画像16を参照
画像2 まだ幼木だが全形が分る。
  枝先に集まって互生する葉も、葉柄も大きい代表のヤツデよりさらに大型で、全体に毛が多い。
(撮影:2002.11.4 日南市)
画像3 宮崎では完全な落葉状態にはならず、一部の葉を残したままで冬を越し、3月末になると茎頂から新葉を展開する。
(撮影:2003.3.23 高岡町)
画像4 葉は円形で大きく切れ込んで7〜12裂して星状毛が生え、大きいものではさしわたし60cm以上にもなる。(撮影:2002.11.21 日南市) 画像5 花軸は緑色だが、淡黄褐色の綿毛で覆われている。 小苞も綿毛に覆われる。
(撮影:2004.12.16 高岡町)
   
画像6 花は高さ60cmほどの円錐花序となる。  散形花序の蕾はまだ小さく固いが、分枝する小花軸ごとに小苞に綿毛ごとしっかりと保持されている。
(撮影:2004.11.21 日南市)
画像7 小花軸に展開した散形花序の大きさは、オシベの長さも含めて2cmほどで、短い小花柄の先につく。(撮影:2004.12.16 高岡町)
画像8 花の直径はさしわたし7ミリほどの大きさで花弁は4枚、3角状卵形で外面に短毛が密生する。(撮影:2004.12.16 高岡町) 画像9 平開した花弁、オシベの付け根に溜まった蜜が見える。オシベは4個で花柱は2個。
(撮影:2004.12.16 高岡町)
画像10 高さ4ミリほどの萼筒は綿毛が密生し、先は殆ど全縁。オシベが落ちて2つの花柱がよく見える。(撮影:2004.12.20 高岡町) 画像11 葉表の鋸歯。切れ込みも含めて縁には細かい鋸歯がある。(撮影:2004.12.16 高岡町)
画像12 葉裏の毛。葉柄の毛の一部を指で掻き落とした。(撮影:2004.12.16 高岡町) 画像13 開きかけた新葉の様子、全面に黄褐色の綿毛が密生する。(撮影:2004.11.21 日南市)
画像14 葉柄の跡が残る茎の上部。
(撮影:2004.11.21日南市)
画像15 茎に枝はなく、縦のしわが目立つ。
(撮影:2004.11.21日南市)

画像16 直径約2cmの茎、と中心部の髄。
この髄を取り出して作った紙を通草紙という。
カミヤツデ、ツウダツボク、ツウソウといわれる由縁だが、特に有名なのが水中花で、冷房がなかった江戸時代には、夏の暑さしのぎに多く作られたらしい。この紙は水にあうと膨れるので、色を付け水中に入れる造花にしたもので、今でも縁日や夜店で売られていることがあるというが・・・・・・・。
(撮影:2004.11.21 日南市)

画像17 水中花(駄菓子屋さんで購入して自宅で広口瓶に入れて咲かせたもの:材料は不明)
和漢三才図絵(正徳三年(1713年):寺島良安著)にカミヤツデ の記載があるらしいので、その当時からかなり使われていたと思われる。
 (図説草木名彙辞典:木村陽二郎 1991柏書房を参考にした)
(撮影:2004.12.20 自宅)
トップへ 科名リストへ