FILE NO 603 宮崎と周辺の植物
クマノミズキ Swida macrophylla (Wall.) Sojak
熊野水木 ミズキ科
撮影日 2008.6.7
撮影場所 西都市

 三重県の熊野で最初に見つけられ ミズキに似ている樹だからクマノミズキといわれるらしいが、日本での分布範囲が青森県〜屋久島であることからすると、そのほぼ中間地点と思われる熊野がついていると考えると納得できる。
 台湾、中国、ヒマラヤ〜アフガニスタン山地にまで分布するそうだが、県内でも水田脇の里山から山地まで幅広く見られる。椎葉ではアワミズシと呼んで粟を蒔く時期の目印にしたという。(宮崎の植物民俗覚書 南谷忠志 1992年)
画像1 林道脇の見通しのよい道脇、枝が段状になってタナミズシとも呼ばれるミズキと違って、普通に広がった枝の上に白い花がつく。
樹高は、ミズキほど高いのは少ないようで、これは7mほどの高さ。
山野でよく似たミズキと混在している。
画像2 6月(5月に咲いたミズキの白い花が終わって月が替わり)になると、
   横に長く伸びた枝に短枝状についた葉を覆うように花が立ち上がる。
撮影:(2007.6.23 西都市)
画像3 対生する大きな葉を広げた若い枝先に、高さ14〜15cmほどの
      花序を伸ばして、やや黄味を帯びた白い花をびっしりとつける。
撮影:(2007.6.23 西都市)
画像4 散房状に広がる花序が見えるように蕾の状態を撮影した。 撮影:(2008.6.14 三股町) 画像5 花は両性。花弁4は狭長楕円形で約5ミリ 、オシベは4個。 撮影:(2006.6.17 西米良村)
画像6 オシベは落ちやすく、柱頭がやや膨らんだ花柱だけの花も多く、基部の黄色い花盤の蜜は吸いやすい。 撮影:(2006.6.17 西米良村) 画像7 花には様ざまな昆虫が来るが、このカミキリムシの仲間は触角から翅にまで花粉がついている。 撮影:(2008.6.14 三股町)
画像8 対生する葉は長さ14〜15cmになり先が細長く伸びて尖る。
    よく似たミズキとの比較はミズキのページを参照されたい。
撮影:(2007.5.15 椎葉村)
画像9 葉柄は長さ3cmほどで、対生する基部はやや膨れる。葉は両面ともごく短い伏毛があって光沢がない。 撮影:(2007.5.15 椎葉村) 画像10 (参考)互生するミズキの葉。基部は、左右同位置から出てるように見えるが、僅かにずれている。 撮影:((2007.5.18 北郷町)
画像11 葉の上面は艶がない。縁に鋸歯はなくやや波打つ。  撮影:(2006.5.28 西都市) 画像12 葉の下面は粉白色だが、ミズキほど白くはならない。  撮影:(2006.7.1 都農町)
画像13 下面の伏毛。ミズキと同じように微細な短毛があるが、ミズキとは感じが違うようだ。
(17)を参照。  撮影:(2006.7.1 都農町)
画像14 樹幹は淡い灰緑白色で縦に浅く裂けるが、ミズキの樹皮とは裂け方が違う。
撮影:(2006.6.17 西都市)
画像15 花序の枝は鮮やかな朱色になり、黒紫色に熟した果実が映える。 
撮影:(2007.10.21 西米良村)
画像16 果実(核果)は先端にガク片が残って小さく突出し、ミズキと違って凹まない。 
撮影:(2007.10.14 西米良村)
(17)県内の椎葉の植物に詳しいおばあさん<椎葉クニ子さん>の話では:(ミズキはタナミズシ、クマノミズキはカタミズシと呼ぶ)、タナミズシの生は柔らかくてナタで切ると面白いごと切れる。硬いのがカタミズシ。タナミズシは肌がつるつるして葉っぱも毛がなくていいけど、カタミズシちゆうのはよくう(休憩する)ときに枝を折ってお尻に敷くと布越しに痒くなってね。だから注意せんといかちお父さんたちが言いよった。
おばあさんの植物図鑑(斉藤政美文、椎葉クニ子語り、1995年、葦書房)から一部引用。 
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