FILE NO 121 宮崎と周辺の植物
ムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunb.
紫式部 クマツヅラ科
撮影日 2009.11.21
撮影場所 宮崎市

 北海道南部〜琉球、台湾、朝鮮半島〜中国に分布するという落葉性の低木で、日本では和名「紫式部」のイメージもあってよく知られているが、学名の「Callicarpa」も美しい実を意味しているという。
 県内でも山地を除いて普通に見られるが、かなり変異の幅が大きい上に、海岸近くに生える
オオムラサキシキブとの中間形やヤブムラサキとの雑種もあるようでややこしい。
 この樹の名が書物に出てくるのが江戸時代になってからというのも意外だ。(末尾参照)
画像1  高貴の色として扱われ禁色とされたこともある上品な感じの紫色の果実、和名を紫式部と表記した命名者のセンスは素晴らしい。   タカクマムラサキは葉の側脈数が目立って多い。
画像2 高さ3mほどの落葉性低木だが、普通は基部から横に多く分枝して広がり、
    斜上した枝先に紫色の果実がぎっしりとつくが遠目には小さくて見えない。 
    撮影:(2001.9.29 三股町)
画像3 花序は葉腋から伸びて、黄色いオシベの目立つ直径径5ミリほどの淡紅紫色の
      小さな花をつけるが、葉陰に咲いて目立たない。 撮影:(2006.5.25 宮崎市)
画像4 花は、花弁が大きく4裂して反り返り、4個のオシベの黄色い葯と、白く長いメシベが目立つ。
撮影:(2006.5.25 宮崎市)
画像5 横から見た花冠。浅く4裂した濃紅色のガク、花冠から伸びだしたオシベよりやや長いメシベが見える。撮影:(2006.5.25 宮崎市)
画像6  樹形も年数によって変化するが、若い株では斜上する枝が大きく垂れ下がって
    灌木状になる。薄いピンク色の小さな花は淡緑色の葉陰に隠れて見えにくい。
 撮影:(2004.6.12 宮崎市)
画像7 対生する葉は洋紙質で鋸歯のはっきりした長楕円状、先端は特徴のある形に尖る。
撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像8 葉の上面は成葉では無毛で側脈は5〜6対。葉は普通さ5〜6cm長だが、長い葉は10cm以上にもなる。撮影:(2003.12.7 日南市)
画像9 葉の下面。主脈と側脈が目立ち側脈は葉縁で急に消える。 撮影:(2009.11.21 宮崎市) 画像10 葉の下面には小さな腺点があるが、肉眼では見えにくい。 撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像11 花序は葉柄基部から少し離れた位置に着く。 撮影:(2006.5.25 宮崎市) 画像12 小枝は若い時に星状毛があるが後に無毛。ほぼ平滑。 撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像13 果実は直径4ミリほどの球形で、美しい紫色に熟す。 撮影:(2009.11.21 宮崎市) 画像14 樹高3m近い高さの樹の枝先にぎっしりとついた果実。 撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像15 果実の紫色も変化が大きく、これはパープルの紫色に近い紫。 撮影:(2009.11.21 宮崎市) 画像16 やや青味の強い紫の果実、スミレのバイオレットに近い紫色。 撮影:(2003.12.7 日南市)
画像17 若い枝の楕円状の小さな縦の皮目。葉腋には冬芽がある。 撮影:(2009.11.21 宮崎市) 画像18 この仲間の冬芽は裸芽で、灰褐色の星状毛に覆われる。 撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像19 旧枝の表皮と小枝の出方。皮目は目立たなくなる。枝脇に小さく突出しているのは冬芽。
撮影:(2009.11.21 宮崎市)
画像20 年数の経った樹幹は灰褐色で小さな皮目が全体に散らばって粗雑、縦に切れ切れの小さな筋が走る。
撮影:(2009.11.21 宮崎市)
 ムラサキシキブ。 江戸時代の儒学者であり本草家でもあった貝原益軒が、宝永7年(1709年)に出した「大和本草」の巻之十二木部雑木類に記載された記録が、ムラサキシキブのことが書物に述べられた最初の記録ということになっている事を前提に、以下の文は、学校法人中村学園のホームページ電子図書館資料 「大和本草」から転記した。
玉ムラサキ 葉ハ茶ニ似タリ又桑ノ如ニシテ頗大ナリ枝長シ紫ノ實葉ノアル所コトニ両ニワカレテアリ實ノ大サ胡椒ヨリ甚小ニテ一所二十四五粒アツマル葉ト實ト一所ニアリテ葉モ實モ一所ニ両々相對ス漢名不知京ニテ紫シキミト云筑紫ニテ小紫ト云小樹ナリ
トップへ 科名リストへ