FILE NO 246 宮崎と周辺の植物
テイカカズラ Trachelospermum asiaticum (Sieb. et Zucc.) Nakai
定家葛 キョウチクトウ科
撮影日 2006.12.16
撮影場所 国富町

 古事記の上つ巻天の岩戸で「天の手力男の神、戸の脇に隠り立ちて、天の宇受賣の命、天の香山の天の日影を手次に繋けて、天の眞拆を鬘として、天の香山の小竹葉を手草に結いて, ・・・・」とある天の眞拆はテイカカズラのことで、新古今集等の和歌に出てくる:まさきのかづら:もこの蔓のことをいうらしい。
 出雲風土記には、クズサルトリイバラフジなどの蔓やマサキは出てくるが、このマサキノカズラは無いようだ。
 古名マサキノマズラがテイカカズラ(定家葛)になったことについての有名な説に、平家滅亡の時代の後白河上皇の皇女式子内親王と浅からぬ縁のあった歌人藤原定家を題材に、室町時代にできた謡曲「定家」説があり、式子内親王の墓石にまとわりつく葛を定家の執念に例えた筋立ての能楽がある。
 定家の時代から約200年を経たこの頃、すでにそのような話があってそれを材料にしたのか、この謡曲が基でこの葛をテイカカズラというようになったのか不明だが、幕末の本草学者賀来飛霞の高千穂採薬記に、宮崎県延岡市の海岸辺りで「絡石(テイカヽヅラ)」が記録されている。
画像1 深山にはあられ降るらし外山なるまさきのかづら色づきにけり(古今集)
画像2 ちょっとした木立のある藪では到るところで見られる蔓性の常緑植物。
       樹木等に絡んで白い花が樹木を一部覆い尽くすほどに茂ることも珍しくない。 
撮影:(2006.6.3 日南市)
画像3 花冠の裂片は5裂、直径2cmほどの風ぐるま状にねじれ、初めは白いがだんだん黄色みを帯びてくる。 撮影:(2006.6.3 日南市) 画像4 花は集散花序につき、花冠は下部が長さ7ミリほどの筒になる高杯形で、芳香がある。
撮影:(2006.6.3 日南市)
画像5 果実は基部から左右1対になってぶら下がり、長さ20cmほども伸びて赤くなって熟す。
撮影:(2006.12.12 北郷町)
画像6 常緑樹なので、モミジのような紅葉はないが、1部だけ赤くなった葉も印象的だ。
撮影:(2006.12.16 国富町)
画像7 果実は赤く熟すが、裏側は淡緑色が残る。
撮影:(2006.12.16 国富町)
画像8 左は表側、右は側面から見た果実。
撮影:(2006.12.16 国富町)
画像9 杉の木にまとわりついた蔓。蔓は時には隣の木にも広がるほど長く伸びるが、紅葉期も目立たない。 撮影:(2006.12.16 国富町) 画像10 果実は熟すと基部から裂開し、中には白い長毛のついた種子が15〜16個入ってる。
撮影:(2006.12.3 三股町)
画像11 果実は下向きにぶら下がるので、種子は先端の白毛を下に納まっているが、すぐに重みで逆転する。 撮影:(2006.12.3  三股町) 画像12 長さ2cm強の種子は、2.5cmほどの長さの絹糸のような光沢のある冠毛状の長毛で、風に乗って飛ぶ。 撮影:(2006.12.3  三股町)
画像13  葉の大きさは変化が多く、大きな蔓では長さ7cmほどにもなり、光沢ある革質の濃緑色で上面の脈は見えない。
撮影:(2005.2.5 都農町)
画像14 葉の下面、脈が縁近くで急に曲がって隣の脈と繋がり、方形の中に大ぶりの線が入る独特の模様になる。
撮影:(2005.2.5 都農町)
画像15 日当たりの悪い杉山の林床、葉も小さく表面に白い斑が入ったものが多くなる。
撮影:(2006.12.16 宮崎市)
画像16 若い枝には柔らかい毛がまとわりついている。 対生する葉柄に毛は殆ど無い。
撮影:(2006.12.12 日南市)
画像17 垂れ下がった枝。古い枝は無毛で紫褐色、葉柄部分はリング状に膨れて目立つ。
撮影:(2006.12.16 国富町)
画像18 果実は普通対になって左右に長く伸びるが、途中で左右がくっ付いて丸くなった虫えいも、かなり見かける。 撮影:(2005.2.5 都農町)
画像19 蔓は付着根を出してよじ登ってゆく。
撮影:(2006.12.16 国富町)
画像20 登る必要のない横枝では、絡まりながら伸びてゆく。撮影:(2006.12.16 国富町)
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